【完結】最強の生産王は何がなんでもほのぼのしたいっっっ!

Erily

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3巻

3-3

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     ◇ ◇ ◇


 ある日、みんなでロードの言っていたビリティ国のラポールの町に向かった。
 町は賑わっていて、特にゴーレムバトル賭博場からは罵声ばせいと歓声が溢れている。ここはその名の通り、ゴーレムのバトルで賭け事をして楽しむ場所のようだ。
 俺達はそれぞれゴーレム券を買い、観客席に向かった。

「ワクワクしますわね!」
「この緊張感も賭博の醍醐味だいごみ!」

 リリーが楽しげに言えば、シャオは券を握りしめて張り切っている。

「私は第三試合ですな……」

 ビッケルがゴーレム券を見て確認する。まずは、ストーンゴーレムとクレイゴーレムの対決だ。
 俺はこの勝負には賭けていないが、エルメスとニーナがクレイゴーレムに賭けていた。
 バトルが始まると、ストーンゴーレムは石を、クレイゴーレムは土を自在に操り、勝負は互角に思われた。しかし一瞬のすきをついて、クレイゴーレムは大量の土をストーンゴーレムの頭上に作り出すと、ストーンゴーレムを押し潰した。結果、クレイゴーレムの勝ちだ。

「きゃー! 勝ったですです!」
「やっりー☆」

 エルメスがはしゃぎ、ニーナもガッツポーズする。

「配当いくらなんだ?」

 俺が尋ねると、シャオが答える。

「大体五倍ですぜ!」
「へー……そんなにもうかるのかぁ……」

 次はサンドゴーレムとラヴァゴーレムの対決だ。俺はラヴァゴーレムに賭けている。

「よっしゃ! 頑張れよ、ラヴァ!」

 ラヴァゴーレムは強靭きょうじんな腕を振り回して、サンドゴーレムに叩きつけるが、サンドゴーレムは砂で防御してそれを防ぐ。直後、サンドゴーレムは砂嵐を引き起こし、ラヴァゴーレムは砂が体に入り込んだのか、動かなくなった。勝負はサンドゴーレムの勝利に終わった。

「くっそー! ラヴァ負けちゃったよ」

 俺はゴーレム券を破り捨てる。
 そんなこんなで、最終的に全員で金貨八十枚を使い込み、最後に勝ったのはエルメスとロードだけだった。結局ギャンブルって損するんだよなぁ……ま、いっか。楽しかったから。
 途中で眠ってしまったビビアンとクレオをジライアとラボルドがおんぶして、俺達は辺境の屋敷に帰っていった。


     ◇ ◇ ◇


 その日はとても寒く、リビングから外を見ると一面雪景色となっていた。みんなはリビングに集まってきたものの、スケジュールボードそっちのけで、外を見ている。

「わぁ! 一面雪ですです~♡」

 エルメスが嬉しそうに言った。

「よし、みんな、今日は休みだ。着替えて、雪遊びしよう!」

 俺が言うと、みんなから歓声が上がった。
 それぞれ、防水防寒の洋服に着替えた俺達は、ソリやスコップを持って外に出た。
 冷たい空気がほおに当たり、息は白く、太陽の光が雪に反射してきらめいていた。

「クレオ、クレオ。雪だるまを作るのだ!」
「わかったぞ!」

 ビビアンがえらそうに指示を出すが、クレオは素直に従う。アイシス、ルイス、リリーはスーパーウルフの三郎さぶろうにソリを引かせて楽しんでいる。
 フレイディアは一瞬で雪山を作り出し、ロードとシャオがその中を掘って、かまくらを作った。
 サクやラボルド、エルメスは大きな地上絵を描いている。
 かまくらが五つほど出来上がった頃、俺達はその中で鍋焼きうどんを食べる事にした。
 シルビア達が熱々の鍋焼きうどんとあったかいお茶を次々と運んでくれる。
 かまくらの中は理由こそ知らないが、外よりも温かい。
 俺達は白い息を吐きながら、鍋焼きうどんで温まった。

「ルイス、俺のシイタケ取るなよ!」
「エイシャルさんが食べるのが遅いんですよ」

 そんな他愛たあいない会話をしながら、午後も雪で遊ぶ事に決めた。


「よっし! みんなぁ! 午後は魔法抜きの雪合戦やるぞー!」

 アイシスが宣言すると、みんな歓声を上げた。

「いいか、魔法は厳禁! 石も入れるなよ。顔や頭を狙うのもダメだ。楽しくやろうぜ! じゃあ、赤と白に分けるから……」

 というわけで、雪合戦が始まった。
 俺は雪玉を作る係だ。シルビアと一緒に雪玉を大量生産していく。防水防寒の手袋をはめているが、段々指の感触がなくなってきた。

「あっ、やられた……!」

 サクが討ち死にして倒れる。

「サクー!」

 ニーナが叫んでいると、背後からこっそり回ったビビアンが彼女に雪玉をぶつけた。

「あっ、ビビちゃんずるいっ……!」

 白熱した戦いが終わり、結局ジライアがリーダーの白組が勝った。とはいえ、みんな面白かったようで笑い合っている。
 最後にビビアンとクレオが木の枝を差したり、石で目を作ったりして、雪だるまを完成させた。
 リリーが手を叩いて二人を褒める。

「あら、ビビアン、クレオ、上手ですわねー!」
「本当だ、モデルはエイシャルさんかな?」

 サクが言って、みんなが笑う。

「おい、サク! あんまりだろ。俺はこんなにずんぐりむっくりじゃ……」
「ずんぐりむっくり……」

 俺の言葉にビビアンが傷ついた顔をした。俺は慌ててフォローする。

「いや、雪だるまは可愛いよ!」
「はいはい、そこまで。さぁ、みなさん、柚子ゆず風呂にしてありますから、順に入ってくださいな。ビビアンとクレオもね」

 リリーの言葉で楽しかった雪遊びも終わり、俺達は温かいお風呂にゆっくりとつかった。


     ◇ ◇ ◇


 その日はみんなでサイネル国にあるサイネポルトの温泉祭りに行く事になった。
 以前、ヘスティアが温泉を掘り起こし、復興を遂げた町だ。

「みなさん、バスタオルと石鹸せっけんは持ちまして?」

 リリーがビビアンのピンクのリュックにタオルとシャンプーを詰めながら、俺達に確認する。

「ネレ、入れた」

 いつも寡黙かもくなネレはなんだか嬉しそうだ。
 温泉が好きなのかな?

「まぁまぁ、もし忘れてたら買えばいいじゃないか」
「何言ってるのよ! タオル代だって馬鹿にならないのよ!」

 俺の言葉を聞いたシルビアに詰め寄られ、たじたじとなる。

「ご、ごめん……」

 彼女の迫力に気圧けおされながら、そう答えた。
 とりあえず、全員忘れ物はないという事で、サイネポルトに向かった。


 サイネポルトに着くと、色んな場所から湯煙ゆけむりが立っており、温泉が湧いている事がわかった。

「いやぁ、肩凝かたこりがひどくて! 温泉でいやしたいですなぁ!」

 ビッケルが肩を押さえて言う。

「あっちに筋肉痛の温泉あるぞい!」
「おぉ、ありがたい」

 ビッケルとヘスティアは肩凝り解消に向かったようだ。

「ジライアさん、僕と癒しの温泉に……♡」

 ルイスがジライアに腕を絡ませて言った。

「冗談じゃないぞ! ルイスは一人で入ってくれ!」

 ジライアはそう言って走って逃げていった。

「ネレ、足湯に入りたい」
「じゃあ、私もぉ~」

 ネレとダリアは足湯に向かう。

「ビビ、温泉卵たべるのだ!」
「オレさまも!」
「じゃ、俺はビビアンとクレオと一緒に温泉卵を食べに行くよ。ルイスも来い」

 俺はジライアを探そうとしているルイスの首根っこをつかまえる。

「あぁ~ん、エイシャルさんの無情~」
「じゃあ、私達は美肌の湯に入りましょうか」

 シルビアはそう言って、女性陣を連れて去っていった。

「どうして僕だけ温泉に入れないんですかっ!?」
「目的が違うからだろ……」

 不機嫌になるルイスに俺は呆れ果てる。

「まぁまぁ、ルイス、温泉レストランがあるぞ。なんでも頼んでいいから」

 俺はルイスをなだめて温泉レストランに入った。
 ビビアンとクレオは温泉卵のカルボナーラ、俺は温泉卵サラダを、ルイスは温泉饅頭まんじゅうを頼んだ。

「ビビ、クレオ、美味しいか?」

 俺はカルボナーラで口の周りを汚しているビビアンとクレオに尋ねた。

「ビビ、コレ好きー!」
「オレさまもー!」

 そうこうしているうちにみんな温泉から上がったらしく、温泉レストランに集合し始めた。

「ちょっと、エイシャル、私ってば美肌になったと思わない?」
「あ、あぁ、バッチリだよ!」

 サシャの肌の違いは全くわからなかったが、とりあえずそう答えておいた。

「温泉卵食べましょうよ」
「ネレ、温泉卵粥……」
「じゃあ、私は温泉卵入りミネストローネにしますわ」

 シルビア、ネレ、リリーが早速メニューを開いている。やはり温泉卵がお目当てのようだ。
 やがて全員が食べ終わり、俺達はお土産屋で温泉入浴剤や石鹸せっけん、美容オイルなどを買って帰った。
 さぁ、明日からまた仕事が始まるぞ。


     ◇ ◇ ◇


 次の日、相変わらずスケジュールボードをかけると、俺は畑でビッケルと一緒にナスやトマトを収穫していた。
 すると、ビビアンがこちらに駆けてきた。なんか、嫌な予感……

「お馬さんいるよー!」

 ゲッ! 最近は平穏な日々を送れていたのに……この辺境に馬がやって来る時は、だいたい誰かがろくでもない依頼を持ってくるんだ。
 俺は仕方なく戸口から出た。

「おぉ、制王様!」

 そこにいたのはガルディアの騎士長ラークさんだった。彼は俺に一礼した。

「ラークさんも大変ですね。毎回毎回……」
「はははっ! これも仕事のうちですから。ガルディア王が明日の正午にガルディア城に来てほしいそうです」
「……わかりましたよ、行きます」

 俺はそう答えて、畑に戻った。


 その翌日、水竜のウォルルに乗ってガルディア城に向かった。
 ガルディアの兵士達はウォルルを見慣れており、すぐに俺を王の間に通してくれた。王の間には既にガルディア王が待っていた。

「おぉ、制王様!」
「何かあったんですか、ガルディア王?」
「それが、大変な出来事が! 王妃が家出……いや、城出しろでしたのです……」

 城出? 変な言葉だな。確かにここから出るなら、城出か……
 いや、それよりも!

「ヘレナ王妃が家……じゃない、城出ですか?」
「そうです。遠くも近くも探してみましたが、一向に見つからず……王妃の実家もくまなく探しました」
「それは確かに大変ですが、そもそも、どうしてヘレナ王妃が城出したのですか?」

 俺が尋ねると、ガルディア王が笑い出す。

「いやぁ……ちょーっと、他の女性にうつつを抜かしたのがバレて……はっはっはっ!」
「それはガルディア王が悪いでしょう!」
「し、しかし、私はガルディア王ですぞ!? めかけの一人や二人……それをアイツはヒステリックに騒ぎ立てて……」

 このに及んで何を言っているんだ……ただ、百パーセント、ガルディア王の責任だとしても、王妃が行方不明というのはどうにかしないといけないな。

「夫婦ゲンカかぁ、要するに……」
「今度、ガルディア城で大規模な舞踏会もありますし、王妃なしでは……」

 あれ、待てよ? 人捜ひとさがしならば、フレイディアかヘスティアに匂いを辿らせれば、すぐに終わるんじゃね?

「わかりました。王妃を捜索そうさくしてみますよ」

 俺がそう言うと、ガルディア王は俺の手を取ってぶんぶんと振った。

「おぉー! ありがたやー! ありがたやー!」


 その日、俺はダンジョンから帰ってきたフレイディアを呼び止めた。

「あぁ、フレイディア! ちょっと話があんだ」
『何?』
「実は……」

 俺はフレイディアに事情を説明してから頼む。

「……というわけなんだ。王妃の服とかから匂いを辿れるよな?」
『できる……けど、しない』
「えぇ!? なんでだよ!?」
『ムカつく……』
「は?」

 俺はポカンとしていると、今度はヘスティアが帰ってきた。

『どうしたんだ、主人?』
「あぁ、ヘスティアでもいいや!」
『ヘスティアール、漫画本貸すから、エイシャルに協力しちゃだめ』
『漫画本!? うむ……すまんな、主人よ』

 ヘスティアはフレイディアに買収されてしまったようだ。

「なんでそんなに協力するのを嫌がるんだよ?」
『浮気したガルディア王が悪いから』

 フレイディアはそう言い残すと、ヘスティアを連れて去っていった。
 いや、まぁ、確かにガルディア王が悪いんだけど……困ったな。


 やがて夕食の時間になり、俺はみんなに事の次第を話した。

「エイシャル、私を明日ガルディア城に連れていって」

 珍しくサシャがそう言った。

「え? それは別に構わないけど……」
「私に良い考えがあるの」


     ◇ ◇ ◇


 次の日、俺とサシャが馬車でガルディア城に到着すると、すぐに王の間に通された。

「おぉ、制王様! と、お仲間の方ですかな? 私がガルディアの国王でございます。よろしく……」
「ガルディア王、まずは正座して!」

 サシャはもの凄い剣幕けんまくでそう言った。

「は……? あのぅ……私を助けに来てくださったのでは……?」
「いいから、さっさと正座する!」

 再びサシャが言った。俺は慌てて口をはさむ。

「おいサシャ、一応一国の王だぞ?」
「関係ないわよ! いい? ガルディア王? 商人の出だったヘレナ王妃とあなたは大恋愛して駆け落ち同然で結婚したと有名だわ。そうよね?」

 サシャの問いに、ガルディア王が頷く。

「は、はい……確かにそうですが……それが?」 
「サイネル国に負けて支持率が急落した時も支えていたのはヘレナ王妃だった、そうでしょ? どんな時もヘレナ王妃はあなたに寄り添い、支えてきた。そうね?」
「は……い……」
「あなたが流行はやり病にかかった時に、うつる事もかえりみずに看病したのは、誰だったのかしら?」
「そ、それは……」

 なおもサシャは言う。

「ヘレナ王妃がいる場所はね、きっとガルディア王、あなたにしかわからないわよ。それだけ言いに来たの。帰るわよ、エイシャル!」
「え? でも……」

 俺はそう言うが、サシャに無理やり引っ張られてひとまず帰った。


 数日後、戸口に手紙がはさんであった。
 ガルディア王の印が押してある。

『制王様へ。制王様、そして何よりサシャ様、ありがとうございました。サシャ様の言葉、胸に刺さりました。私が王妃の献身や気持ちを無視して、妾の一人くらいとおごっていた事、心から反省してこの文を書いている次第でございます。王妃と初めて出会ったのは、野の花の咲き誇る川辺でした。私は狩りの休憩、彼女は川辺に遊びに来ている所でした。彼女の美しきダークブラウンの髪と琥珀こはくの瞳に一目で恋に落ち、反対を押し切り駆け落ち同然で結婚しました。それから、もう十五年の月日が経ちます。どんな時も私を支えてくれた王妃に、私は顔向けできない事をしてしまった。そして、私は王妃を迎えにあの川辺に向かったのです。制王様、サシャ様には感謝してもしきれません。しかし、あまり長くなってもご迷惑でしょう。この辺で最後とさせていただきます』

 俺はその手紙を読み、すぐにサシャに渡した。

「サシャへの手紙だよ」
「ありがと、エイシャル」

 サシャはそう言って手紙を受け取って読んだ後、軽快な足取りでギルド部屋に向かっていった。


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