血と踊る流動体

入江円

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第二章 与えられた自由

Jurgen dhole

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あなたを求めて幾年も彷徨った。
束の間巡り会えたと思った瞬間、消えていくあなた。忘れたくないから、似顔絵や着ていたもの、背丈、香り、声、全てを、思い起こせる限り記憶して記した。
閉じ込めようとも、縋ろうとも、愛そうともしたけれどあなたはふっと散ってしまう。
なら、寄り添えば、あなたに寄り添えば私を側においてくれるだろうか。
拒みこそしないけれど、求めてくれないあなた。
いっそ、いっそ拒んでくれたら、はね除けてくれたら。あなたの感情が欲しい。



隊長と別れてウィリアムと装備を一通り見た後、隊長の力が一段階感知し辛くなった。何故だ。まだ何処にいるか分かる範囲だが、何故だ。力を抑えたのか。私は少し焦りを感じ、ウィリアムとは強引に別れた。
隊長の行く先を追う。闘技場で大量に血を貰ったとはいえ、安心はできない。またいなくなるのか。隊長の後を追って店に入った。
じっくりと本を読んでいる。

「隊長」

「ああ、ユルゲンか」

「何か、お探しですか」

「いや、偶然ここについてね」

「…そうですか」

まだ、逃げる気はないのだな。

「面白い本はありましたか」

読んでいた本を置いて話し始める。薬大百科事典を読んでいたのか。

「暇潰しにはなった。なぁ、ここらで大きい本屋を知らないか?」

「ご案内します」

隊長が、魔術書を書くのは知っているし、魔術書に日記をつけているのも知っている。でも、日記につける文字数なんてたかが知れている。

「どんな本をお探しですか」

何に興味がおありですか

「そうだな、魔術書を。最近の魔術書や昔のものもあれば見てみたいな」

あなたが見て感心するものなんて無いだろうに。

「先日あの少年に渡した魔術書は、隊長が書かれたんですよね」

「あぁ、長いこと旅をしてるからな」

知っている。

「他国で見聞した出来事や魔術の危険性を書いていたら、いつの間にかあの厚さになってしまってね。読んだのか?」

「はい」

「どうだった?現役の魔術師から見て」

とても、丁寧でした。魔術にのまれて過ちを犯さないように、心を砕いている様が。変わらない。

「素晴らしい、ものでした。…隊長はやはり、人が好きなのですね」

「そうなのだろうか」

「でなければナーラガスの時も生かしてはおかないでしょう。あなたは人を愛しておられる」

「闘技場で、殺そうとしたのにか?」

嘘をつけ。

「結果、殺さなかったでしょう。あなたの本気はあんなものでは済みません」

いつだって、無益な殺しはなさらない。私とは違う。

「着きました」

三階まで隊長を案内し、店を切り盛りするワーターに会った。
ワーターに目配せをし、私の図書館へと案内させる。少し、緊張した。驚いてくれるだろうか。

隊長が狼狽えたところを見ると、やはりこれら全て、書いたのは隊長だということが分かった。あなたのお顔が見たい。どの様に表情が変わるだろうか。
ローブを預かり、初めて私の事を紹介した。
でもやはり、ノモスを、俺を覚えてはいない様子だった。
隊長と俺との問答が続く。やっと、俺を見てくださる。俺を、思い出してください。
いつの間にか、外は暗くなっていた。時間は遅くなったり速くなったり、不思議な生き物だ。

「また、一緒に行きましょう」

やっとあなたと話ができる。まだまだ話したいことは一杯ある。それまではどうか、逃げないで。

私と隊長の帰宅が遅かったのでウィリアムがご飯を作ってくれていた。男の料理だな。嫌いじゃない。

それぞれの自由時間になると、私は足早に隊長と行った娼館に訪れ、朝まで隊長が抱いた女を指名した。
部屋で女と二人になった瞬間、首の傷を治して女に問う。
「あの方はお前をどんな風に抱いた?」

「…え?」

「質問に答えろ。早く」

「…ちんぽをしゃぶって、」

私はベルトを外して女に出す。

「しゃぶれ。」

女の頭を掴みぐぷぐぷと奥まで咥えさせる。
あの方と同じものを使っている。

「次は」

「ゲホッ、ッゲホッ」

「次はどうした」

「…ッは、四つん這いで後ろから…」

女をベッドにあがらせ、尻を向けさせ、逸物を突っ込む。ぐりぐりと根元まで咥えさせ、動かす。
あの方と同じ熱を受けている。

「手は、手はどうしていた」

「ッあ、む、胸を揉んで、下を弄って、首を舐め、ッア」

あの方と同じ体格で良かった。全てできる。

「…違う。」

「あっ、あっ、っえ?」

「声が違う」

首を水で多い、喉の一部を氷で搔き切る。
全てを治さないように、朝と同じ様に戻す。

「これで、一緒だ。」

あの方と同じ時代に生き、あの方がしたことを知れる。
私は今、幸せだ。

驚いてくれていたなぁ、隊長。



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