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昔
飼育
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生き物を育てた事もあった。
旅の帰り、金は余る程貯まっているので奴隷市場に顔を出してみる。
一人、生き生きしいのがいた。
檻に獣と一緒に入れられ、周囲から焚き付けられている。獣の餌として入れられ、見世物として置かれているんだろうか。胸まで噛み付かれているのに、よくもまぁ諦めないもんだ。
私は餌を買った。
言うことも聞かず、傷を負っているからと昼飯より安い値段で買うことができた。
首輪をつけられ、息もあがったりの血まみれちびすけが受け渡される。
歯を確かめようと手を伸ばすと、噛み付かれそうになった。こいつ、クソガキだな。
殴って鎖を引きずり、家に連れて帰った。
抵抗する気も出ないのか引き摺られるがままだったクソガキに今日採ってきた果実を食わせる。
水っぽいからすぐ飲み込んでくれた。
暫く放っておけば治るだろうから、鎖を外して気にせず傷が付いたまま風呂に連れ込む。
わしわしと全身を洗う。泡が赤いが気にしない。一緒に風呂に入り、傷が治ったのを確認して少年を起こす。
目が覚めた途端襲いかかる。ほんと、クソガキだな。
浴槽に全身を沈め、気絶させる。
全身を乾かして鎖をつけ直し、適当なところに繋いでおく。私は寝室兼書斎で本を書く。
チャリチャリと忙しなく音が鳴るので部屋を出て見ると、唸るクソガキがいた。
言葉も喋れないのか。常識が通じなさそうだ。
取り敢えず主従をしっかりさせよう。
私はクソガキに手を伸ばし、咬ませる。咬まれようが喉奥まで手を突っ込み吐き出させる。
咬まれた傷を目の前で治す。
それでも噛み付こうとするクソガキに何度も噛み付かせ、突っ込み、治す。
漸く観念したようだ。次は餌付けだな。
焼いた肉の乗った皿を目の前に持ち、奪おうとするクソガキの喉を押さえる。
「まだだ。」
クソガキが大人しくなるまで待つ。
「まだだ。」
それでも暴れる時は首を絞める。
「まだだ。」
漸く大人しくなったクソガキに皿を置く。
「よし。」
私を伺いながらそろそろと肉に手を伸ばし、勢いよく食べる。
がっつくクソガキの頭をわしわしと撫で、食べ終わるのを見守る。
そんな躾を何日も繰り返して、漸くまともになってきた。
外にもクソガキを連れて行けるまでになり、それまで私が書いた本を持たせ、一緒に出掛ける。
クソガキを抱えて馬に乗り、私の前に座らせる。将来生きていくのに困らないように本を広げさせ、一緒に発音する。
教育とは、忍耐だな。
一緒にいても逃げないくらいに成長したクソガキとダンジョンやらを巡り、教養をつけさせながら家を拠点に旅をする。
宿や野外を除き寝る時は別々。私は寝室を真っ暗な霧で覆い、女になって寝る。このところ、裸でベッドに寝ることの気持ちよさを知ってしまった。
「なぁ、いるのか?」
クソガキが入ってきた。さっさと寝ろ。
そろそろと足を踏み入れ、私の寝台にまで上がってきた。
「なぁ…」
私は身をよじって反対を向く。
もぞもぞとクソガキがシーツに入り込み、私に抱きつく。
「…!?…はっ?」
「なんだ。」
「…おんな?」
「お前の保護者を女と呼ぶな。」
「…は?」
「何の用だ。」
「いや…寂しくて…」
そうか。
私はそろそろとベッドから降り、教育によくないから服を着る。
寝台にあがり、クソガキを抱えて髪を撫でる。
「早く寝なさい。」
背中をトン、トンと叩いて眠る。
起きた時にはいなかった。
男になってから部屋を出てキッチンに行くとなにも言わないクソガキがご飯を作っていた。
「おはよう。」
「……」
椅子をひいて食卓につく。
「女なんて、聞いてない。」
「男とも言ってない。」
「……」
「女なんて、珍しいか?そこら辺にいるだろ?」
「裸の女は、初めてだ。」
「そうか。精通したら金を貯めて娼館に行くといい。優しくしてくれる。」
「やだよ、娼館なんて。」
「彼女達は職人だからな、普通の女じゃやってくれないことまでしてくれるし、教えてくれる。」
「…じゃあ、行った方がいいのか?」
「好きにしろ。」
朝からなんて会話だ。
一人で旅に出れるまでに成長したクソガキが帰ってきた気配がする。
書斎にこもっていると扉を開けられた。
「なぁ。」
「なんだ。」
「娼館に行ってきた。」
「そうか。優しかったか?」
「…うん。」
クソガキも成長したもんだ。
私は少し嬉しくなった。
日記の続きを書いているとまたクソガキが入ってきた。
「そろそろ、寝ないか?」
「先に寝てなさい。」
「わかった。」
大人しく扉を閉め帰っていく。暫し新しい魔方陣を考えたり、色々としているとまた入ってきた。
「なぁ、寝よう。」
「あと少し。先に寝てていいと言ったろ。」
「…もう2日経ったよ。」
「そうか。まだかかりそうだ。私の事は気にするな。」
「でも、寝てないだろ?」
「わかった、すぐ寝るから。」
傍に座り込んでぐずるクソガキに仕方なく付き合うことにした。
「風呂は沸いているか。」
「沸いてる。久し振りに一緒に入ってもいいか?」
「好きにしろ。」
男と一緒に風呂に入ってなにが楽しいのか。
「なぁ。」
クソガキが何か言いたそうに視線を流す。
「一緒に、寝てもいいか?」
「それは性的な意味か?」
「ばっ、ち、違うよ…」
少しつつけばくすぐったくなるような反応を見せる。
「どうだ、旅先でいい女はいたか?」
「別に…」
「もう一人で生きていけるだろ。私は必要なくなった。お前の人生を生きなさい。」
私の庇護下にいる必要も無いだろう。
なんとか、成長したな。これで愛想もよければ、満足なんだが。
保護者らしく服を着て一緒に寝た。
でかくなったもんだ。クソガキ。
最近はまっている魔方陣をキリのいいところで終わり、寝台に上がると、クソガキが入ってきた。暗闇の中を慣れたものですいすいと私の寝台へ足下から滑り込む。
私になにも言わず爪先から唇で触れ回り、腹まで上ってきた。うつ伏せに寝返る。
肩のすぐ横に手をつかれ、体を重ねて背中にキスをする。
痕もつけてないか?これ
私は育て方を間違えただろうか。
「なんの真似だ。」
獣か?
吸うのをやめ、耳元まで這い上がってきた。
「寂しいんだ。一緒に寝ても、いいだろ?」
「娼館に行ったらどうだ。」
「貴女がいいんだ。」
「育ての親だぞ?」
「貴女との、思い出が欲しい。」
思い出か。わりとあげたような気もするけどな。
「出ていくから。その前に貴女と寝たい。」
股を重ねて健気にツンツンとつつかれる。
首もとに顔をあて、息を吐き出す。
育てるのは、難しいな。
嫌だと言うのも違うと思うから、男になった。
「寝なさい。」
顔を埋めるのを止めて少し起き上がり、私の尻に擦り付けてねだる。
「女になれよ。」
こいつは…
ごろんと仰向けになり、クソガキと対面してもう一度言う。
「寝ろ。」
私は寝る。
目を閉じて寝息を立てているのに、キスをする。何度も軽いキスを。
ほんとにさぁ…
「性癖歪むぞ。止めておけ。」
「女になれよ。」
なるわけないだろ。
「させてくれるまで、離れない。」
そうかい。
「好きにしろ。」
私は構わず寝る。
クソガキは何度かキスをして、傍で寝た。
以来、クソガキは家にいるようになった。
少し鬱陶しく感じた私はクソガキが間抜けにも昼寝をしてる間に、久し振りに旅をしようと支度をして外に出た。
馬が二頭いる。
そうか、クソガキの馬か。一人で乗れるようにまでなったか。
逞しい馬を撫で、成長を噛み締める。
馬に手綱を付けてひき、街を出る。
何の気なしに旅に出たから、取り敢えず数日程馬の歩くままに進ませよう。
いつの間にか、前通った時は建っていなかった店や、知らない道ができていたりと時の流れを感じさせる。
野宿も、久し振りだ。
馬を休ませ、火を起こして仰向けに満天の空を眺める。心も頭も空にして目を閉じる。
久し振りに出た外は、懐かしく新鮮だった。
満足して家に帰ると、酒の匂いがした。
ふらふらとクソガキが出迎える。
私をじっと見て、泣き出した。
めそめそと泣くなよ、一丁前の男が。
「いなくなるなよ。」
突っ立って私に訴えかける。
「俺の保護者なんだろ?」
奴隷として買ったんだよなぁ。
「なぁ、なんか言えよ。」
うーん。
「女になって一発やったらでていくんだな?」
「いやだ、出ていかない。」
「そう言わずに、な、やりゃいいんだろ?」
「いやだ。」
泣きじゃくってどうしようもないクソガキを置いといて、旅装束を解く。
ついでに風呂のしたくもするか。
後をついてくるクソガキ。うーん。
「一緒に、入るか?」
「入る。」
そうか。
男同士で風呂に浸かる。生き返るなぁ。
目を閉じてリラックスしていると視線を感じたのでクソガキを見る。
「なんだ。」
「俺は邪魔か?」
「邪魔ではない。」
「なんで昔みたいに構ってくれない。」
昔…
「お前を初めて買った時、覚えてるか?」
「何を。」
「獣に噛み付かれて重症だったのに、買った私を噛み殺そうと必死だったな。」
クソガキの胸についた傷跡を眺める。
「どこまで覚えている?買ってすぐ、お前をこの水槽に沈めて気絶させたこともある。」
懐かしい。ついこの間の出来事だな。
「躾と称し、餓えたお前の首を絞めたこともある。」
だから。
「まだ、足りないか?」
「それは、違う。」
「いいや、事実だ。私は嘘を言っていない。」
「別の事実もある。」
別の事実、か。
「俺を生かして、育ててくれた。」
生き物は食わせときゃ生きるんだよ。
「何も知らない俺に生きる術を教えてくれた。」
暇だからな。生かすついでだ。
「俺は、強くなった。」
前からだろ。噛み付こうとするんだから。
「なんで、逃げる。」
「いいじゃないか。」
私は興味本位で育てただけだ。
「お前は一人で生きていけるんだ。わざわざ縛られたいのか?」
自立しろ。だから。
「俺は、一緒にいたいだけなんだ。」
「前はヤらせたら出て行くっていったじゃないか。」
「繋がりが欲しかった。」
繋がりだと?なんだ、それ。
「いつも、俺を見てるようで見ていない。俺は、見て欲しいんだ。貴女から、愛が欲しい。愛して欲しい。」
愛、ねぇ…
「愛って、なんだ?」
「わからない。でも、愛が欲しい。」
「わからないものはあげられない。」
「なら、俺の愛をあげる。だから、行かないで欲しい。」
ううむ。
「私には、無理だ。」
「なんで。」
「わかってるだろ。」
会話は終わった。
風呂をあがり、着替えて寝台に寝転がる。
おそらく、今夜だろうな。
真暗霧は今日は必要ないだろう。
女になってその時を待つ。
入ってきた。
隠そうともせず剣を片手にのろのろと寝台に上がる。
「大きくなったな。ノモス。」
「貴女を、殺したくない。」
笑った。よかった、気付いていたか。
胸元をはだけ、クソガキの手を取り、傷痕を触らせる。
「お前はどこにつける?」
「いやだ…」
「大丈夫だ。ほら。」
「やりたくない…」
おいおい、しっかりしろよ。
「やだ…」
「お前の為だ。な?」
そうだな、首にしよう。
鞘を抜いて握らせ、私の首にあてがう。
「一瞬だ。」
「なんで、」
「うん?」
「なんで逃げなかったんだ…」
んん。やめろよ。ほら、あれだ。
「愛してるよ。」
「今更、言うなよ…」
「殺ったか。」
「…ああ。」
「よし、よくやった。あとは任せろ。」
雑に扱われたかと思うと、水底に捨てられた。
死ぬわけ無かろう。私だぞ。
じゃぶじゃぶと陸に上がり、首を触る。
次は何になろうかなぁ。
旅の帰り、金は余る程貯まっているので奴隷市場に顔を出してみる。
一人、生き生きしいのがいた。
檻に獣と一緒に入れられ、周囲から焚き付けられている。獣の餌として入れられ、見世物として置かれているんだろうか。胸まで噛み付かれているのに、よくもまぁ諦めないもんだ。
私は餌を買った。
言うことも聞かず、傷を負っているからと昼飯より安い値段で買うことができた。
首輪をつけられ、息もあがったりの血まみれちびすけが受け渡される。
歯を確かめようと手を伸ばすと、噛み付かれそうになった。こいつ、クソガキだな。
殴って鎖を引きずり、家に連れて帰った。
抵抗する気も出ないのか引き摺られるがままだったクソガキに今日採ってきた果実を食わせる。
水っぽいからすぐ飲み込んでくれた。
暫く放っておけば治るだろうから、鎖を外して気にせず傷が付いたまま風呂に連れ込む。
わしわしと全身を洗う。泡が赤いが気にしない。一緒に風呂に入り、傷が治ったのを確認して少年を起こす。
目が覚めた途端襲いかかる。ほんと、クソガキだな。
浴槽に全身を沈め、気絶させる。
全身を乾かして鎖をつけ直し、適当なところに繋いでおく。私は寝室兼書斎で本を書く。
チャリチャリと忙しなく音が鳴るので部屋を出て見ると、唸るクソガキがいた。
言葉も喋れないのか。常識が通じなさそうだ。
取り敢えず主従をしっかりさせよう。
私はクソガキに手を伸ばし、咬ませる。咬まれようが喉奥まで手を突っ込み吐き出させる。
咬まれた傷を目の前で治す。
それでも噛み付こうとするクソガキに何度も噛み付かせ、突っ込み、治す。
漸く観念したようだ。次は餌付けだな。
焼いた肉の乗った皿を目の前に持ち、奪おうとするクソガキの喉を押さえる。
「まだだ。」
クソガキが大人しくなるまで待つ。
「まだだ。」
それでも暴れる時は首を絞める。
「まだだ。」
漸く大人しくなったクソガキに皿を置く。
「よし。」
私を伺いながらそろそろと肉に手を伸ばし、勢いよく食べる。
がっつくクソガキの頭をわしわしと撫で、食べ終わるのを見守る。
そんな躾を何日も繰り返して、漸くまともになってきた。
外にもクソガキを連れて行けるまでになり、それまで私が書いた本を持たせ、一緒に出掛ける。
クソガキを抱えて馬に乗り、私の前に座らせる。将来生きていくのに困らないように本を広げさせ、一緒に発音する。
教育とは、忍耐だな。
一緒にいても逃げないくらいに成長したクソガキとダンジョンやらを巡り、教養をつけさせながら家を拠点に旅をする。
宿や野外を除き寝る時は別々。私は寝室を真っ暗な霧で覆い、女になって寝る。このところ、裸でベッドに寝ることの気持ちよさを知ってしまった。
「なぁ、いるのか?」
クソガキが入ってきた。さっさと寝ろ。
そろそろと足を踏み入れ、私の寝台にまで上がってきた。
「なぁ…」
私は身をよじって反対を向く。
もぞもぞとクソガキがシーツに入り込み、私に抱きつく。
「…!?…はっ?」
「なんだ。」
「…おんな?」
「お前の保護者を女と呼ぶな。」
「…は?」
「何の用だ。」
「いや…寂しくて…」
そうか。
私はそろそろとベッドから降り、教育によくないから服を着る。
寝台にあがり、クソガキを抱えて髪を撫でる。
「早く寝なさい。」
背中をトン、トンと叩いて眠る。
起きた時にはいなかった。
男になってから部屋を出てキッチンに行くとなにも言わないクソガキがご飯を作っていた。
「おはよう。」
「……」
椅子をひいて食卓につく。
「女なんて、聞いてない。」
「男とも言ってない。」
「……」
「女なんて、珍しいか?そこら辺にいるだろ?」
「裸の女は、初めてだ。」
「そうか。精通したら金を貯めて娼館に行くといい。優しくしてくれる。」
「やだよ、娼館なんて。」
「彼女達は職人だからな、普通の女じゃやってくれないことまでしてくれるし、教えてくれる。」
「…じゃあ、行った方がいいのか?」
「好きにしろ。」
朝からなんて会話だ。
一人で旅に出れるまでに成長したクソガキが帰ってきた気配がする。
書斎にこもっていると扉を開けられた。
「なぁ。」
「なんだ。」
「娼館に行ってきた。」
「そうか。優しかったか?」
「…うん。」
クソガキも成長したもんだ。
私は少し嬉しくなった。
日記の続きを書いているとまたクソガキが入ってきた。
「そろそろ、寝ないか?」
「先に寝てなさい。」
「わかった。」
大人しく扉を閉め帰っていく。暫し新しい魔方陣を考えたり、色々としているとまた入ってきた。
「なぁ、寝よう。」
「あと少し。先に寝てていいと言ったろ。」
「…もう2日経ったよ。」
「そうか。まだかかりそうだ。私の事は気にするな。」
「でも、寝てないだろ?」
「わかった、すぐ寝るから。」
傍に座り込んでぐずるクソガキに仕方なく付き合うことにした。
「風呂は沸いているか。」
「沸いてる。久し振りに一緒に入ってもいいか?」
「好きにしろ。」
男と一緒に風呂に入ってなにが楽しいのか。
「なぁ。」
クソガキが何か言いたそうに視線を流す。
「一緒に、寝てもいいか?」
「それは性的な意味か?」
「ばっ、ち、違うよ…」
少しつつけばくすぐったくなるような反応を見せる。
「どうだ、旅先でいい女はいたか?」
「別に…」
「もう一人で生きていけるだろ。私は必要なくなった。お前の人生を生きなさい。」
私の庇護下にいる必要も無いだろう。
なんとか、成長したな。これで愛想もよければ、満足なんだが。
保護者らしく服を着て一緒に寝た。
でかくなったもんだ。クソガキ。
最近はまっている魔方陣をキリのいいところで終わり、寝台に上がると、クソガキが入ってきた。暗闇の中を慣れたものですいすいと私の寝台へ足下から滑り込む。
私になにも言わず爪先から唇で触れ回り、腹まで上ってきた。うつ伏せに寝返る。
肩のすぐ横に手をつかれ、体を重ねて背中にキスをする。
痕もつけてないか?これ
私は育て方を間違えただろうか。
「なんの真似だ。」
獣か?
吸うのをやめ、耳元まで這い上がってきた。
「寂しいんだ。一緒に寝ても、いいだろ?」
「娼館に行ったらどうだ。」
「貴女がいいんだ。」
「育ての親だぞ?」
「貴女との、思い出が欲しい。」
思い出か。わりとあげたような気もするけどな。
「出ていくから。その前に貴女と寝たい。」
股を重ねて健気にツンツンとつつかれる。
首もとに顔をあて、息を吐き出す。
育てるのは、難しいな。
嫌だと言うのも違うと思うから、男になった。
「寝なさい。」
顔を埋めるのを止めて少し起き上がり、私の尻に擦り付けてねだる。
「女になれよ。」
こいつは…
ごろんと仰向けになり、クソガキと対面してもう一度言う。
「寝ろ。」
私は寝る。
目を閉じて寝息を立てているのに、キスをする。何度も軽いキスを。
ほんとにさぁ…
「性癖歪むぞ。止めておけ。」
「女になれよ。」
なるわけないだろ。
「させてくれるまで、離れない。」
そうかい。
「好きにしろ。」
私は構わず寝る。
クソガキは何度かキスをして、傍で寝た。
以来、クソガキは家にいるようになった。
少し鬱陶しく感じた私はクソガキが間抜けにも昼寝をしてる間に、久し振りに旅をしようと支度をして外に出た。
馬が二頭いる。
そうか、クソガキの馬か。一人で乗れるようにまでなったか。
逞しい馬を撫で、成長を噛み締める。
馬に手綱を付けてひき、街を出る。
何の気なしに旅に出たから、取り敢えず数日程馬の歩くままに進ませよう。
いつの間にか、前通った時は建っていなかった店や、知らない道ができていたりと時の流れを感じさせる。
野宿も、久し振りだ。
馬を休ませ、火を起こして仰向けに満天の空を眺める。心も頭も空にして目を閉じる。
久し振りに出た外は、懐かしく新鮮だった。
満足して家に帰ると、酒の匂いがした。
ふらふらとクソガキが出迎える。
私をじっと見て、泣き出した。
めそめそと泣くなよ、一丁前の男が。
「いなくなるなよ。」
突っ立って私に訴えかける。
「俺の保護者なんだろ?」
奴隷として買ったんだよなぁ。
「なぁ、なんか言えよ。」
うーん。
「女になって一発やったらでていくんだな?」
「いやだ、出ていかない。」
「そう言わずに、な、やりゃいいんだろ?」
「いやだ。」
泣きじゃくってどうしようもないクソガキを置いといて、旅装束を解く。
ついでに風呂のしたくもするか。
後をついてくるクソガキ。うーん。
「一緒に、入るか?」
「入る。」
そうか。
男同士で風呂に浸かる。生き返るなぁ。
目を閉じてリラックスしていると視線を感じたのでクソガキを見る。
「なんだ。」
「俺は邪魔か?」
「邪魔ではない。」
「なんで昔みたいに構ってくれない。」
昔…
「お前を初めて買った時、覚えてるか?」
「何を。」
「獣に噛み付かれて重症だったのに、買った私を噛み殺そうと必死だったな。」
クソガキの胸についた傷跡を眺める。
「どこまで覚えている?買ってすぐ、お前をこの水槽に沈めて気絶させたこともある。」
懐かしい。ついこの間の出来事だな。
「躾と称し、餓えたお前の首を絞めたこともある。」
だから。
「まだ、足りないか?」
「それは、違う。」
「いいや、事実だ。私は嘘を言っていない。」
「別の事実もある。」
別の事実、か。
「俺を生かして、育ててくれた。」
生き物は食わせときゃ生きるんだよ。
「何も知らない俺に生きる術を教えてくれた。」
暇だからな。生かすついでだ。
「俺は、強くなった。」
前からだろ。噛み付こうとするんだから。
「なんで、逃げる。」
「いいじゃないか。」
私は興味本位で育てただけだ。
「お前は一人で生きていけるんだ。わざわざ縛られたいのか?」
自立しろ。だから。
「俺は、一緒にいたいだけなんだ。」
「前はヤらせたら出て行くっていったじゃないか。」
「繋がりが欲しかった。」
繋がりだと?なんだ、それ。
「いつも、俺を見てるようで見ていない。俺は、見て欲しいんだ。貴女から、愛が欲しい。愛して欲しい。」
愛、ねぇ…
「愛って、なんだ?」
「わからない。でも、愛が欲しい。」
「わからないものはあげられない。」
「なら、俺の愛をあげる。だから、行かないで欲しい。」
ううむ。
「私には、無理だ。」
「なんで。」
「わかってるだろ。」
会話は終わった。
風呂をあがり、着替えて寝台に寝転がる。
おそらく、今夜だろうな。
真暗霧は今日は必要ないだろう。
女になってその時を待つ。
入ってきた。
隠そうともせず剣を片手にのろのろと寝台に上がる。
「大きくなったな。ノモス。」
「貴女を、殺したくない。」
笑った。よかった、気付いていたか。
胸元をはだけ、クソガキの手を取り、傷痕を触らせる。
「お前はどこにつける?」
「いやだ…」
「大丈夫だ。ほら。」
「やりたくない…」
おいおい、しっかりしろよ。
「やだ…」
「お前の為だ。な?」
そうだな、首にしよう。
鞘を抜いて握らせ、私の首にあてがう。
「一瞬だ。」
「なんで、」
「うん?」
「なんで逃げなかったんだ…」
んん。やめろよ。ほら、あれだ。
「愛してるよ。」
「今更、言うなよ…」
「殺ったか。」
「…ああ。」
「よし、よくやった。あとは任せろ。」
雑に扱われたかと思うと、水底に捨てられた。
死ぬわけ無かろう。私だぞ。
じゃぶじゃぶと陸に上がり、首を触る。
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