血と踊る流動体

入江円

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バンパイアと接触を試みた事もあった。


闇社会や階級で感じた上下関係から、距離を置こうと気の向くまま辿り着いた村がどうにも暗い。

訳を聞くとバンパイアが次々と村を潰し、とうとうこの村にも来る寸前だったらしい。

大した額の用意もできない、行く宛もない程の森奥で暮らしている彼等はここでバンパイアと心中を図るつもりだったらしい。
ここにいても死ぬだけだ、と村から追い出された。


長らく安全な場所で生きてきた私はバンパイアと関わってみたくて彼等と接触を試みたくなった。

バンパイアは夜活動する。
それまでは影に潜り、日をやり過ごす。

村から離れた場所で私は彼等にわかるよう印を付けて待つ。きっと彼等は来るだろう。

予想は的中し、彼等と出会えた。

「同胞か。」

「貴方も、我等と共にイクか。」

「毎夜途切れぬ宴を。」

「我等の血の夜に。」

「ほら、会場はすぐソコだ。」

行こう。彼等と共に。

我等は次々と家を襲う。どの家も空だ。村人は一番大きな家で我等が来るその時を待っているのだろう。

そう焦ることもない、と普段入れない家をのんびり荒らす。どうせもう生活しまい。

ゆっくり人の家でお茶を淹れていると激しい爆発音と振動が伝わってきた。

淹れたお茶を飲みながら方角を見ると見事に大きな家が無くなっていた。傍にあった家も半分壊れている。

バンパイアはどれ程生き残ったか。

三体は無事なようだ。

「木っ端微塵だな。」

「人間も、なかなかやりおる。」

「イきていたか。」

「お前達は爆発に巻き込まれなかったのか。」

「先を急いだ二体がヤられた。」

「我々は大分楽しんだからな。」

「今日は彼等の番だったが、ツイてなかったようだ。」

彼等は成ってから長いのだろうか。余裕があるように見える。

「消えた二人は成ってから浅いのか。」

「最近合流したな。何時だったか」

「我等に時など無意味。」

「アるのは衝動のみ。」


「帰ろう」

「帰ろう」

「一緒にいてもいいか。」

「勿論。」

「我等は同胞。」

「共に在るモノ」

そう言うと獣よりも早く駆ける。
着いた洞窟を進み魔獣を狩りながら下へ下へと下る。

なんと見事な魔力だろうか。なんと、鉱石の明るいことか。

「素晴らしいな。」

「だろう。ここが我々の家だ。」

「魔力は尽きない。」

「人間を狩らずとも、消滅することはない。」

「ここにいる筈の洞窟の主はどうした。」

「我々が狩った。」

「なかなかしぶとくて、数体消えた。」

「印を刻んだから、生まれることもないだろう。」

それでも人間を襲うのは、我々の性、か。

「他にも、こんな場所がまだあるのか。」

「ここだけだ。」

「我々がここから動かないのは、その為だ。」

「村は今回で終わりではないのか。」

「また眠って人間が村を作るのを待つ。」

「時間など無限に在る。」

「ここには人間も来れまい。」

「何故個体で村を襲わない?」

「分かち合う為。」

「不変なのは我々だけ。」

「寂しいのサ。」

素直に明かすものだ。何処にいても意思有る限り感情とは離れがたいのか。

我々は眠り、また起きる。

誰かが目を覚ますと、気配を感じて浮上する。

「よく寝たな。」

「狩りの時間か。」

洞窟から這い上がり青々しい空気を吸う。
どれ程寝たか分からないが、なにも変わっていないように見える。

彼等に続いて森を駆ける。

明かりの灯っている村が見えた。

狩りの時間だ。

彼等は待ちきれないのか次々と思うように狩りを始めた。私は彼らの通った路を歩く。なかなか、部位があちこちに散らばっていて物取りの線は流石に無いと見たものは思うだろう。

じわじわと追い詰めて一人ずつ屠る奴もいれば、
死体を集めてその中で寝転がり、はしゃいでいる奴もいる。
動物園から逃げ出した獣だろうか。

もし彼らが人間的な意思を持っていたならば、どうなるのだろう。

私は付き合いきれなくて先に洞窟へ帰って寝た。

また今夜も村を襲いに行くらしい。
私は最近留守番している。どうも狩る気がしないのだ。

彼等が帰ってきたが、一人足りない。

「一人はどうした。」

「殺された。」

「凄腕がいた。」

人間もとうとう対策をしてきたか。

「でもおかしい。」

「あいつも同胞の筈だ。」

私以外にも人間と過ごす者がいたか。

気になったので次の狩りは一緒に行くことにした。

森を駆け、村に行く途中に彼と出会った。

「…今夜も殺すのか。」

「何故性に抗う?」

「我等の務め、分からぬでもないだろう?」

なかなか、本当にバンパイアだ。よく渇望に堪えているものだ。

手に爪のような武器をはめ、前にいた二体のバンパイアと交戦する。私は見物させてもらう。


「残るは貴様だ。」

まぁ、いいだろう。
早いがまだまだ、強いがまだまだ、若いな。

体をボキボキ折って膝を付かせた。言い訳じみてはいるが、言わせて貰おう。

「私は村を襲っていない。」

「…なんだと?」

「わかるだろう、新しい血の匂いが私からしないことくらい。」

「…何故、奴らといた。」

「気分だな。バンパイアとは、どんなものか知りたくて。」

「…村を襲ってないなら見逃してやる。」

「どっちの台詞だ?それは。」

「…黙れ。しかし、俺以外にも堪える奴がいるとはな。」

お前とはまた違うような気もするが、黙っていよう。

「我等の時は長い。また、何処かで会うかもしれんな。」

「この辺りで動いていたバンパイアは我々のみだからな。お前が全て消した。」

「お前はどうする?この地に残るのか?」

「また旅に出る。世界は広いからな。」

「そうか。貴殿が人を殺さないことを祈る。」

…まぁ、うん。

我々はいつか再開を口に別れた。

旅はしてみるものだな。また面白いものに出会った。




洞窟は他の者に見付けられるのはシャクなので入り口は隠す。

また、いつか来よう。


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