血と踊る流動体

入江円

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第二章 与えられた自由

Twenty-two. Colosseum

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畑を耕し終え、晩飯を食べ終わる頃にはすっかり日が暮れて、星が出ていた。


寝転んで空を見上げる。 

国など、一夜で滅ぼせる。私はそれを望まない。
いっそ宙に漂うことができればどんなに幸せか。
埋めることのできない虚しさが穴を空ける。
殺して貰うにはいい夜だ。
誰か。 

「ウィリアム、ユルゲン。私と一戦交えてくれないか。」


闘技場に問答無用で押し入る。 

「好きに始めてくれ。いつでもいい。」 

はやく。楽にしてくれ。 

「来ないのか。」 

では私からだ。 

ウィリアムの首を掴み投げる。 

「はやくしろ。」 

ユルゲンの腹を殴り蹴る。 

「遅いぞ。」 

血を与えたというのに、まだ弱いか。
まだか。 

二人に血を飲ませる。 

「もう一度だ。立て。」 

私を慰めてくれ。 

「このローブが邪魔か。なら脱ごう。」 

「この暗さで見えないか。なら変えよう。」 

我々に一番近い客席を炎の玉でぐるりと囲む。 

「先の戦で生き残ったお前達は、こんなものか。」 

ここは戦場だ。早く。 

「私は敵だ。」


やっと切り替わったのか、殺気が出てきた。 

氷で剣を作り、討ち合う。 

氷はすぐに壊れ、そのまま放り投げる。 

狙って水の斬撃が飛んでくる。 

凍らせて返す。 

横脇から全身でぶつかり、飛ばされる。 

馬乗りになり、何度も殴られる。 

水が顔を覆う。 

胸ぐらを掴み、逆に馬乗りになる。 

殴る、殴る。 

後ろから首を絞められる。 

立ち上がって腹を蹴飛ばす。 

絞めている腕を剥がし、腹を殴る。 

腕を掴み、背負い投げる。 

水を凍らせ、顔から除く。 

一点集中で剣を構えて突進してくる。 

胸に受け、足を払って投げ飛ばす。 

胸と剣の貫いたところを氷で固められる。 

顔を水で覆い返す。 

炎で氷を溶かし、剣を抜く。 

もう一度氷で胸を固め、止血する。 

氷で棒を作り、剣を投げ返す。 

首、トン。 

躱して腕、トン。 

横から振るわれ、後ろに飛ぶ。 

そろそろ水を解く。 

横から腹めがけて切りかかるーー 

頭に打ち込むーー


「そこまでだ。」 

ナイスタイミング 

警ら隊だろうか。 

「仲間割れか?」 

「いや。」 

「ここは戦場か?」 

「いや。」 

「我々は市民の安全を守らなければいけない。お引き取り願おう。」 

「我々は、市民か。」 

「帝都に暮らしている限りは、そうだ。」 

「そうか。夜分遅くまで見廻り、感謝する。」 

ローブを拾い、火を消す。
真暗な闘技場から出ていく。 

まだまだ。


寂しさを紛らわす事ができて気が済んだ。 

「ありがとう。」



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