血と踊る流動体

入江円

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第一章 戦争

Seven. William donor

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翌朝、我々は拠点を出発した。砲台の音を聞きながら白く色付きつつある山を登る。山を目指しながら歩いている最中、

「隊長、テントは要らないと言っていましたが、どの様な拠点にされるおつもりですか?」

「うん、私は寒いのが嫌いでね、ぐっすり寝れるようにしたいんだ。だから洞穴を掘って暖かい寝床を造ろうと思ってる。」

「なんだか、遠足みたいですね。」

「ははっ。遠足になるといいなぁ。やることなんて、殺すことくらいだし。疲れがとれる場所にしよう。」

「楽しみです。」

「私はこの辺りに疎いから、拠点探しは二人に任せるよ。付いていくだけになるけど、そこからは任せてくれ。…いいキャンプにしよう。」

殺すことに躊躇いはないようだ。あまりに暢気で他国からのスパイとは思えないが、まだ一日目だ。気を引き締めていこう。



道の無い山道を進んで、回りを伺う。
ユルゲンと顔を見合わせて頷く。こいつもここがベストだと思っている。よし

「隊長、ここなんていかがでしょうか。」

「ここだね。わかった。では、君達とは一旦ここで別行動をしたい。今晩のご飯でも探してきて欲しい。ここの事は私に任せてくれ。日が傾いた頃には出来るだろう。それまで自由行動にする。下見なりなんなり、頼むよ。」

「わかりました。では、行ってきます。」

「はーい。」

本当に、ピクニック気分じゃないだろうな。

ユルゲンと二人で水場の散策と、獲物用の罠を張りに行く。

「…随分と暢気な隊長殿だな。」

「…彼はスパイに向いてないんじゃないか?」

「…さぁな。」

突然ユルゲンが止まった。

「何かあったか?」


「………」

彼の方を見ると、魔法を展開している。何かいるのか

パシュッ

「仕留めた。」

何を。

方向に進むと白兎が撃たれていた。
少し得意顔だ。

「やるじゃないか。お前のおかげで今晩はご馳走だな。」

「隊長殿に怒られなくて済みそうだ。」

「あの隊長殿、怒るのかな。」

「想像できないな。でも怒ると絶対恐いだろうな。」

「間違いない。」

少し歩くと池があった。青く澄んでいる。
水筒に水を汲んで一息つく。とても静かだ。
水面に視線を落としていると動く影があった。

「魚がいる。」

「食料には困らなさそうでなにより。」

釣竿を簡単に作って今度釣りにこよう。

「…落ち着くなぁ。」

「あん?」

「山の裏っ側じゃあんなに五月蝿いのにさ、ここは静かで。」

「ピクニックだからだろ。」

「本当にピクニックになっちゃいそうだ。」

周りの地形を確認して、俺達はアジトに戻ることにした。

「隊長のつくる拠点か…」

「寝れる穴さえ出来たら文句はない。」

「でも隊長張り切ってたし、どんなのになってるかな。」

「寒いのがお嫌いなんだろ?風呂でも作ってるんじゃないか?」

「流石に風呂は無いだろ~」

目印の巨木に辿り着いた。パッと見、ここに穴があるなんてわからない。カモフラージュしてあるのだろうか。

「隊長、只今戻りました。」

「あ、はいはい。おかえり。まってね、」

隊長が出てきた。

「血を少し貰えるかな。」

「血、ですか。」

「うん。結界を張ってね。木に吸わせないと入れない仕組みにしたんだ。」

木?

「水で薄めて増やすから、少しでいいんだ。」

「はぁ。」

隊長の持っていたカップに血を流す。

「はい。ちょっと待っててね。」

中に戻っていかれた。

俺達は顔を見合わせて隊長を待つ。

「はい、おまたせ。どうぞ入って。」

また見合わせて俺から入る。

嘘だろ

なんだこれ

「はい、おかえり。」

「ただいま…?」


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