血と踊る流動体

入江円

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第一章 戦争

One. wake-up

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雨はいい。命の源。等しく全てを癒す。
使い方さえ間違わなければ。

気まぐれだった
冒険者になったのは。何処にでも行けて、縛られない。詮索されない。馴れ合いも少ない。
目が覚めたら身体変身・強化魔法をかける。かけなければ動けない体も気に入っている。治せるのだが。
全身を覆うローブを目深にかぶり、顔はできるだけ隠す。変身魔法をかけているのだが。
解除しなければ解けないように念入りにかけた。

ギルドの掲示板を眺めていると傭兵じみた要請がいくつもあった。

看護・医師、魔術師求人、騎士団急募

私が滞在している国では隣国との戦争が激しさを増し、国境付近では人手が足りていない。
死傷者は両国ともに日々右肩上がりだ。
兄弟が戦を仕掛けずとも、人間達はこうして日々何処かで殺しあってくれる。私はそれに便乗するだけ。
共生をイメージして造られた私だが、ベースは人間だ。残虐性が無いわけではない。
生きるには、生きなければいけない
だから邪魔するものは殺さねば。
いつか誰か私を殺してくれるだろうか。

殺すのも殺されるのも楽しみに私は国境へ向かう群れに加わった。

焦げた匂い、血の香り、とても、とても。
それにつられてバンパイアがはびこる夜
私の兄弟達から派生した者共

可愛い夜だ

人間を殺すといい香りだが、バンパイア共には歯応えがある。どちらも捨てがたい。出来ればどちらも味わいたいが、文句は言わない。

今回の戦争は人間と一緒に行動したいから、私は能力を大幅に低下するよう封印し、弱体化した。
弱いバンパイアには私のことはばれないだろう。楽しみだ。


さあさあ、やってやるぜ。
取り敢えずは様子見で他の魔術師にあわせて掩護射撃をする。

前線に負傷者がたまってきた頃、召喚師が面白い魔物を出してきた。マンティコア?いいじゃないですか。召喚師裂かれちゃったけど。ふふ、脆い脆い
あらー、敵味方関係なしじゃないですか。
取り敢えず喚んでみた。みたいな?

頑張れ、味方。


魔物を囲むように魔法結界をはる。
空気を蹴って前線に向かい、前衛の皆さんに善意のこもった恵みの癒しを。
魔術・魔法を得意とする者は後方だなんて決めつけてくれるなよ?

蔦で胴体を抑え、大地で爪をつくり、八方から囲む。味わうように呑み込んで殺す。

みんなでボコボコにしてから殺した。

うーん、子供でよかった。大人だったら無理だったかな。

まだいる負傷者を治しながら後方に下がる。
使った魔力を補充したいけど、我慢我慢。自然治癒に任せる。

シャワーとかお風呂とか、浴びたいし浸かりたいけど、我慢我慢。

休憩所少し寒いけど、我慢我慢。

一眠りした後、正規隊員によばれて50人くらいが広いテントに集まった。

内容としてはバンパイア撃退のついでにはぐれた味方を救助してほしいそうだ。断ってもいいそうだが、やりますとも。

私ははぐれた味方をバンパイアから救助する仕事を喜んでかって出た。
死にたいと願う味方がいれば仕方がないから殺してあげよう。
バンパイアがでたら可愛がってあげよう。

救助隊は6人一組で、5組結成された。
20人くらい辞退したようだ。一人で散策する予定だったのに、団体行動とは残念だ。
途中はぐれたことにして一人で行動しようかな。


救助するのは日暮れから。その時間からは両国バンパイアに備えて忙しいのか攻撃してこない。
器用なのか阿保なのか。争うのは生き物の衝動なのか。

日中に寝て、夜に活動する。
バンパイアみたいな生活だが、救助活動隊なのだ。素質あるじゃん、人間。

多少弱体化したとはいえ、久しぶりの血の香りに気分がのっている私は昼間の戦争にも後方から加勢することにした。

観戦しているような気持ちで参戦する
魔法は全て得意だが、蔦の魔法を気に入っている。足止めして殺すのは味方に任せる、ふふん。すぐ死なれても困るので、蔦を切ると治癒魔法が少しかかるようにしてある。簡単に死ぬなよ。
長引かせてやるぜ。この戦争。

楽しんでいるうちに日が暮れて夕方になった。いくぜいくぜ。

前衛二人、魔術師二人、衛生兵二人。
用意周到だ。バンパイアが怖いなら人間同士団結して殺せばいいのに。

慎重に山の中を進む。ナビゲートは他の人に任せる。だって面倒臭いもん

今回の散策では洞穴の奥に必死に逃げたが発見時には既に事切れた人間と、息も絶え絶えだがまだ生きている人間がいた。
少し乾いているが全身血まみれでバンパイアがよってきそうな獲物だ。
魔女なら薬の材料にしそうだ。
獣なら食べるかな?
衛生兵がすぐ処置にかかる。
これだけ血が流れてたらな。発見が速かろうと無理だろう、と思ったが、どうやら他人の血のようだ。どれだけ殺したんだ。



「だ~れダッ」


後ろからわざわざ声をかけてきた
可愛いじゃないか

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