失った物

ハーマ

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光と闇の影

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颯斗視点

明希「颯斗様……」

颯斗「耐えろ  当主の自我が戻らない限りはどうすることも出来ない」

蓮「ですが……」

颯斗「不用意に近くと四肢を失う……今は待て」

仁を心配する部下を落ち着かせ颯斗は別の場所へ行く

颯斗「……(繋がるか?)」

「恐らく繋がらないだろう」と思いながら颯斗はスマートフォンを持って電話帳を開く

???『……誰だ?』

颯斗「……御無沙汰しております兄上  御城  黒羽です」

???『黒羽か……よく番号知ってたな』

颯斗「越前家の部隊の情報収集を侮(あなど)らないで下さい……兄上なら知っているか?と思い電話させて頂きました」

電話の相手は仁と同じく「死んだ」とされていた実兄

???『何だ?俺の答えられる範囲で頼むぞ』

颯斗「発作時の若の対処法です」

電話の相手に「若」と言って通じるのは仁の兄と颯斗の兄のみ

???『桐谷の?……それは俺も詳しくは俺も知らない、だが桐谷の発作は今迄の罪の重さが原因だからな……本当かどうかは信憑性(しんぴょうせい)が無いが、「信用している者の血を浴びると一時的に正気に戻る」らしい』

颯斗「つまりそれを繰り返せばいずれ元に戻ると言うことですか?」

???『信憑性は無いがな  試してみないと分からないが……お前ならできるだろう?……武運を祈る』

そう言って通話は切れ颯斗は意を決して仁の元へ

颯斗「若」

仁「…………」

颯斗「っ!!」

颯斗  完全に正気を失っている……下手をしたら死にかねない

正気を失い颯斗に襲い掛かってきた仁に颯斗は咄嗟に刀でガードするが、普段以上に打撃が強くて後ろに倒れる

颯斗  打撃が重い……死ぬ気でやらないと俺が桐谷に殺される危険性があるな……

颯斗は極限状態に陥ると一人称が「私」ではなく「俺」に変わり仁を幼名で呼ぶ

颯斗「なっ!?」

初め倒れてから態勢を戻した瞬間に下から刃が来て咄嗟に避けたが、片腕の神経をやられたのか出血と共に力を入れても動かない

颯斗  大量の血を浴びないと戻らないなら先に言って欲しかったな……

長兄こそ全て知っている訳では無い

仁「……颯斗?」

仁が漸く正気に戻った時颯斗は片腕と片目を失い体中から血を流していた

仁「颯斗!?誰か来てくれ!!」

颯斗は仁が正気に戻ったと知った瞬間に失神し回復部隊の者の治療を受けながら、仁の発作が治るまで自らの血を仁に明け渡したと言う……

~数ヶ月後~

颯斗「…………」

数ヶ月後  仁が学園に戻り平和な日々が続く中、颯斗はその日の異変を察知し部下に「何か嫌な予感がするから備えておけ」と全体的に言ってあったのだが……

颯斗「!!全員頭を伏せろ!!」

颯斗の嫌な予感が的中し敵組織に攻められ部下に撤退を命じて背中を護りながら戦う

颯斗  嫌な予感が的中した……できれば何事も無かった方がこちらとしては有り難いのだが……

人生そんな甘くない

颯斗「…………」

全員「えっ」

極力戦わずに撤退していたがかなり追い込まれてしまい颯斗が、能力で透明な壁を作り自分だけ残って戦う

蓮「颯斗様!!」

颯斗「俺の家に行け!!あそこなら絶対にお前達を匿ってくれる!!銀には連絡を入れておいたから全員自分のバイクで竣希の案内で家に行け!!」

だが蓮とて大切な人でもある颯斗一人を残して行くわけにはいかず、壁に体当たりするが壁はびくともしない

颯斗「必ず生きてお前達の元に帰る  それまでは蓮が情報収集専門特殊戦闘部隊のリーダーだ
仁様を命賭して守り抜け」

頬に汗をかきながら笑いながら言ってそのまま叫びながら走って行く颯斗以外は、皆颯斗の家に行って暫く居候する、その頃颯斗はまだ家にある武器全てを使って戦いながら、体中から血を流して最後のひとりを倒すが、流石に血を流しずきて意識が朦朧としている状態で増援が来たのを知り
戦おうとして立ち上がったが血が足りなくて後ろに倒れかけ、後ろに人がいたらしく抱きとめられながら

???「血の海になっているが増援が来る前に一人でやったにしては無理のし過ぎだな」

とか言っておりそのまま敵に襲われそうになったが

???「雑魚は引っ込んでな」

という一言で瞬時にその場を血の海へと変貌し颯斗は薄れゆく意識の中で

颯斗「……神……希兄……さ……ん……?」

颯斗  聞き覚えのある声……この声は……

???「……遅くなったな……黒羽」

颯斗の兄  神希の物だった……そして颯斗はその言葉に安心しそのまま意識をなくす

~暫く経ち~

颯斗「…………」

戦闘から数日後漸く目が覚めた颯斗は見覚えの無い場所にいる事を知り起き上がろうとするが……

神希「黒羽  無理はするな」

颯斗「兄上……」

神希「颯斗  「兄上」じゃなくて「兄さん」で良い
大丈夫か?結構怪我が酷くて心配してたんだ」

颯斗「ここは……」

神希がいる事で安心した颯斗は起き上がろうとするのを止め、神希に「ここはどこか」を聞く

神希「俺ともう1人の家だ  昔の使われなくなった屋敷を買い取って改造してあるから、基本的には武器庫みたいな感じだな……壁の裏に武器をしまってあるからいつでも取り出し可能」

颯斗「もう1人?」

神希「仁の兄貴だ  「死んだ」とされていた越前家の長兄……あいつももうすぐ帰ってくる」

そう言うと近くにあった扉が開き黒髪の両目を閉じている青年が、仁を横抱きで抱きしめながら入ってくる

???「してやられた……」

神希「生きてるよな?」

???「なんとかな  だがかなり危ない状態にいる」

神希「呼吸が浅い……しかも全ての傷が深いせいで血が止まりきっていない」

颯斗  若!!

颯斗「!?」

神希「颯斗!?おい!?颯斗!!」

不意に起きてすぐにも関わらず酷い睡魔に襲われた颯斗は、回復して開き上がっていたからかベッドから崩れ落ち神希が駆け寄るが、その時にはもう意識そのものはなくなっていた……

神希視点

???「お前の弟大丈夫か?」

神希「息はしてるから生きてるけど……いきなりだな……」

???「……俺の弟もお前の弟もどちらにせよ対極って事だろ……俺とお前は上手い具合いに調和したが似た者同士だと上手く調和できない」

神希「貶(けな)してるのか?」

神希の言葉に???は「違う」と言う

???「俺とお前は影同士だったから良かっただけで正直な所、弟同士は光と闇の対極(ついきょく)だ  つまり交われないのを無理に交わろうとすると引力が加わり離れてしまう
それでいて颯斗君と仁は当主同士……元々御城家と越前家は「味方」ではなく「敵」同士だった……それを覆したのは先々代であり、「最強のリーダー」と呼ばれた御城家20代当主  御城  翼と越前家25代当主  越前  煌の2人……敵対しながらも惹かれ合い恋に落ちた……いつかは戦い合いどちらかが死ななければならない運命にあっても、2人はその時が来るまで愛し合い、そして戦い合った……九州の南端の丘にある桜……あの桜は先々代……戦闘に勝利した越前家当主である煌様が己の命で造り上げた華……命の大切さと煌様の翼様への愛の強さがあの桜を生かし煌様は待ち続ける、最愛の人である翼様を…………仁と颯斗君は煌様と翼様の血を引いている……だから惹かれ合うんだ」

神希「…………」

???「「……Love does not change as he does not meet ...... twice and him both lost ……limb lost even if body(例え体を失っても……四肢を失っても……2度と彼に会えないのだとしても……愛情は変わらない)
I dead becomes a cherry tree……until both can live……again ……wait him(俺は桜となり死んだ彼を待とう……もう1度……共に生きられるまで……)」……先々代が最後に残した言葉だ……先々代は桜となり今でも待っているんだよ……翼様が帰ってくるその日を……」

もう知ることの出来ない先々代の想い……大切な人を亡くして永久に生きる代わりに人の姿を無くしたまだ22歳の青年……

時を巡り受け継がれる血……全ての業を背負いし青年が、己の選ぶ道を己で決める日はもうすぐやってくる……
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