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幕間 ーーモブ達の本編ーー②

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 「そんなの決まっておるじゃろ。
  我は『チートキャラ』じゃからの。我が出ていては話がすぐ終わってしまう」
 …………へ?
 『チートキャラ』?
 なんか、この世界にはありえないメタ発言が聞こえたような……
 「ほれ、気になってきたであろう?
  なぜ我がこんな言葉を知っているのじゃろうと」
 あ、諦めてなかったんだ。
 あのまま有耶無耶になるかと思ってたんだけどなぁ。
 「『記憶持ち』だから?」
 「いや、我は『記憶持ち』ではない。
  じゃが、何人もの『記憶持ち』に会っているからの。それらの話から推察したまでじゃ。
  どうやら『記憶持ち』らにとっては、我らの世界は想像の世界、ということらしいの」
 よくご存知で~。
 それがわかってるなら、私から聞くことなんてないんじゃない?
 「いや。
  『記憶持ち』はあらゆるところから来るからの。お前に前に会った『記憶持ち』の世界では、鉄の塊が煙を上げながら馬より早く走る『鉄道』なるものがあるといっておったぞ。
  なぜ動くものなのに『道』なのじゃ?
  道自体が動くというのか?」
 あ~、日本人だったら大正ぐらいの人かなぁ。
 その時代に、ファンタジー小説ってあったのかなぁ?
 ご苦労されただろうなぁ。
 「あ~、そうだね。もし同じ国の人だったら、その方の次代から100年くらい後から来たと思う」
 「ほう。それは面白そうじゃの。
  話すがよい」
 人に話せっていった割には、その後はクリシャラの質問攻めだった。
 「魔力もなく人が空を飛べる? ならばなぜお主はあんなに恐れたというのじゃ?」
 「遠隔地からの音を伝える、というのはわかるが、画像を伝えるとはどうするのじゃ?」
 「電気? 雷であろ?
  なぜそれが万能のように使えるのじゃ?」
 …………スミマセン。
 わかりません。
 「では、お主がいる時代では、何故そのような機能となっているのか、をまったく理解していないものを使って生活している、というわけか」
 いや、なんと申しましょうか。
 なんだかやたら驚かれてるんだけど、そういうこと、なわけで。
 テレビなんて、どうやって写ってるかなんて知らないまま生きてきたしね。
 お役に立てず。
 なんだか申し訳な気持ちになったんだけど、これはこれで、クリシャ的には新しい知識としてオッケーらしい。
 「分業が細部にまで渡った結果、相互関与がなくともその性能を享受できる、ということであろ」
 なんだかかっこよくまとめていただいて、恐縮です。
 「まぁ、面白い話であった。
  故に、今度はお主の相談に乗ってやろうではないか」
 いえ、私は相談する気もないのに、なんで上から
来るかな。
 「お主の話からすると、魔王討伐隊は全員生きて戻ってくるのであろ?」
 小説通りに進めば、そう。
 「した場合、お主はどうするのじゃ?」
 「え? 当然、心安らかにモブとしての生活を送っていくけど?」
 当たり前じゃない。
 この小説に続編があるかどうか知らないけど、この世界では魔王討伐が一大イベント。
 その後は『みんな幸せに暮らしましたエヴァー・アフター』になるはず。
 「ほう。
  三択の中で、ひとつが英雄の妻。ふたつが王妃。まぁ、平凡な未来ではあるのか?」
 …………え、なにをおっしゃってるのでしょう?
 クリシャさん?
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