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嵐の前は、静かなのです①
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声、出なくなりまして…………
本人よりも、周りが大変だった。
サルファス王子とレリア王女は御典医(王族専用のお医者様)を呼んじゃうし。
いや、呼ばれて来てみたらモブを診察しろって、お医者様困惑してたんじゃない?
イスリオは、騎士さんに兵舎にポーション取りに行かせちゃうし。
でも、ポーションて怪我と毒には効くけど他は効かないし。
ナジャ君とアクシオ君を始めとするメインキャラ魔法士たちは、団員の中から『治癒』系の魔法士集めてきて、バシバシかけようとするし。
されども、魔法も万能じゃないわけで。
あちこちグリグリ弄り回されたり測られたり祈られたりしたけど、みんな結果は一緒。
身体的機能に問題はなし。
ってことで、心理的な問題なわけで。
要は、びっくりしすぎて声が引っ込んじゃったんだよーって感じかな?
もともと、高い所はどっちかっていうと苦手だったし。
結構単純なことなんだけど、みなさんには伝わらなくて。
そうか。こういう時話せないっていうのは不便なのね。
だって、用意してもらった小さな黒板(っていっていいのかな?書いては消せるヤツ)に、
『いやぁー。びっくりだよねー。あはははは』
って書くのってむなしくない?
特に笑い声なんて、二文字くらい書いただけで挫けそう。
ということで、しばらく対外的にはサイレントモブだなぁ、なんてのんきに構えていた私と違って、クリシャはフルボッコにされてた。
外見が子供だからか、暴力的なことななかったけど、言葉のトゲが鋭いのなんの。
トゲ、といってもバラのトゲみたいにイテッって感じじゃなくて、前の記憶的にいっちゃうとウニのトゲ的な?
突き刺さっちゃうぞっ、下手すると突き抜けちゃうぞっ、って感じ?
あれなら、デコピンぐらいの身体的暴力の方がダメージ小さいかも。
反撃すると思いきや、クリシャはいわれるがままになってて、それが意外だった。
ときおり、ちらっと私の方を見上げてくるけど、視線上にみんなが立ち塞がって合わせないようにしている。
こっちの世界にも『正座』ってあったのね。
私としては声が出ないだけだから、サイレントモブとしてとりあえず過ごしていくつもり。
他に不自由ってないし。
『我がアンの夢に入って、心の重しを取り除くという手もあるかも、じゃが…………』
控えめにいってくるクリシャの申し出に、表現は違えどみんな、
『あ゛あ゛ん?』
って返した。
完全箱入りのレリア王女や、お育ちのいいメインキャラ魔法士の貴族のお嬢様方。
ラクロアさんと侍女さん達までなさっていたので、もしや全人類標準装備?
みなさん、なにもそこまでって感じで怒り顔なんだけど、サルファス王子だけが満面の笑みだった。
それなのに、一番怖かった。
その瞳の奥は、どの深淵につながっていらっしゃるのでございましょう?
とりあえずどうしたのかというと、用意してもらったのは短い棒と、木のカード。
木の棒はね、そこら辺叩く用。
音を出して振り向いてもらったりするため。
カードは、定型文言をいくつも用意。
『おはよう』とか『ありがとう』とか、『なにかお手伝いできることありませんか?』とか。
『お腹すきました』『のど乾きました』も用意してくれたんだけど、そんな使用頻度高いかな? これ。
あと、さっき用意してもらった小さな黒板とチョークをぶら下げてれば、意志疎通はできそう。
もちろん込み入った話はやりにくいだろうけど、モブには求められてないから大丈夫。
魔法も、発現に呪文とかいらないし。
あ、結構生きていけちゃう?
ということで、しばらく様子を見よう、というメインキャラのみなさま方のご意見により、それぞれの業務(?)に戻っていった。
だって、メインストーリーとしては、魔王討伐にもうすぐ行くスケジュールだし。
モブの一身上の健康状態になんか、関わり合ってる場合じゃないでしょ。
とはいっても、モブの平穏な地味背景生活を脅かすのは、メインキャラなわけで。
「アンタ。なにほけほけしてんだよ」
えっと。
君、自分からモブに話しかけるキャラじゃないはずだよ? アクシオ君。
本人よりも、周りが大変だった。
サルファス王子とレリア王女は御典医(王族専用のお医者様)を呼んじゃうし。
いや、呼ばれて来てみたらモブを診察しろって、お医者様困惑してたんじゃない?
イスリオは、騎士さんに兵舎にポーション取りに行かせちゃうし。
でも、ポーションて怪我と毒には効くけど他は効かないし。
ナジャ君とアクシオ君を始めとするメインキャラ魔法士たちは、団員の中から『治癒』系の魔法士集めてきて、バシバシかけようとするし。
されども、魔法も万能じゃないわけで。
あちこちグリグリ弄り回されたり測られたり祈られたりしたけど、みんな結果は一緒。
身体的機能に問題はなし。
ってことで、心理的な問題なわけで。
要は、びっくりしすぎて声が引っ込んじゃったんだよーって感じかな?
もともと、高い所はどっちかっていうと苦手だったし。
結構単純なことなんだけど、みなさんには伝わらなくて。
そうか。こういう時話せないっていうのは不便なのね。
だって、用意してもらった小さな黒板(っていっていいのかな?書いては消せるヤツ)に、
『いやぁー。びっくりだよねー。あはははは』
って書くのってむなしくない?
特に笑い声なんて、二文字くらい書いただけで挫けそう。
ということで、しばらく対外的にはサイレントモブだなぁ、なんてのんきに構えていた私と違って、クリシャはフルボッコにされてた。
外見が子供だからか、暴力的なことななかったけど、言葉のトゲが鋭いのなんの。
トゲ、といってもバラのトゲみたいにイテッって感じじゃなくて、前の記憶的にいっちゃうとウニのトゲ的な?
突き刺さっちゃうぞっ、下手すると突き抜けちゃうぞっ、って感じ?
あれなら、デコピンぐらいの身体的暴力の方がダメージ小さいかも。
反撃すると思いきや、クリシャはいわれるがままになってて、それが意外だった。
ときおり、ちらっと私の方を見上げてくるけど、視線上にみんなが立ち塞がって合わせないようにしている。
こっちの世界にも『正座』ってあったのね。
私としては声が出ないだけだから、サイレントモブとしてとりあえず過ごしていくつもり。
他に不自由ってないし。
『我がアンの夢に入って、心の重しを取り除くという手もあるかも、じゃが…………』
控えめにいってくるクリシャの申し出に、表現は違えどみんな、
『あ゛あ゛ん?』
って返した。
完全箱入りのレリア王女や、お育ちのいいメインキャラ魔法士の貴族のお嬢様方。
ラクロアさんと侍女さん達までなさっていたので、もしや全人類標準装備?
みなさん、なにもそこまでって感じで怒り顔なんだけど、サルファス王子だけが満面の笑みだった。
それなのに、一番怖かった。
その瞳の奥は、どの深淵につながっていらっしゃるのでございましょう?
とりあえずどうしたのかというと、用意してもらったのは短い棒と、木のカード。
木の棒はね、そこら辺叩く用。
音を出して振り向いてもらったりするため。
カードは、定型文言をいくつも用意。
『おはよう』とか『ありがとう』とか、『なにかお手伝いできることありませんか?』とか。
『お腹すきました』『のど乾きました』も用意してくれたんだけど、そんな使用頻度高いかな? これ。
あと、さっき用意してもらった小さな黒板とチョークをぶら下げてれば、意志疎通はできそう。
もちろん込み入った話はやりにくいだろうけど、モブには求められてないから大丈夫。
魔法も、発現に呪文とかいらないし。
あ、結構生きていけちゃう?
ということで、しばらく様子を見よう、というメインキャラのみなさま方のご意見により、それぞれの業務(?)に戻っていった。
だって、メインストーリーとしては、魔王討伐にもうすぐ行くスケジュールだし。
モブの一身上の健康状態になんか、関わり合ってる場合じゃないでしょ。
とはいっても、モブの平穏な地味背景生活を脅かすのは、メインキャラなわけで。
「アンタ。なにほけほけしてんだよ」
えっと。
君、自分からモブに話しかけるキャラじゃないはずだよ? アクシオ君。
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