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ふっ、ついに私の実力を示す時がきたかっ……なんてね?

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 『魔法士であろう? なんとかせよ』

 ですよねー。
 私もいいたい。
 よく誤解されがちだけど、当然『魔法士』だからといって、万能じゃない。
 (だったらよかったんだけどねー)

 魔法士は、自分中の魔法を顕現させることができるけれど、それは人によってことなる。
 ひとりひとりが、それぞれ異なる唯一の魔力を持っている。
 ちなみに主人公のライバル(というかもうひとりの主人公なんだけど)は『水魔法』を使う。
 水魔法といってももピンキリなんで、水滴を作るレベルから、水神を現すレベルまであるけど、それでもすべて『水魔法』発展で、どんなに優れていても例えば土魔法のゴーレムは作れない。
 魔法士は自分の魔法を極めようと、研鑽を続けていくのだ……って建前なんだけど。

 私の魔法って……。
 ある意味とても私らしいっていうか……
 他力本願の極地というか……

 ま、言い渋っていても変わらないね。
 私の魔法は『拡大マグニフィクション
 魔法の解釈や威力を『拡大』できる。
 しかも、『拡大』した魔法を、私の意思の元に行使できる……

 っていうと、なんかスゴそうじゃない?
 うん。
 なんかスゴそうなんだけどさ、よく考えてみて欲しい。
 『拡大』なの。
 と、いうことは、『拡大』する『元』がなればどーにもならないのよ。
 1でもあれば拡大しているけど、0になにをかけても0のままってこと。
 1くらい出せるでしょ、というのは魔法士以外のご意見。
 魔法士の属性はひとつだけ。

 ということで、他力本願します。はい。

 「レリア殿下。不敬を承知でお伺いいたしますが、殿下の魔法属性は……」
 王族なんで、魔法量は多いはず。
 あとは、この場の役に立つものだといいんだけど。
 「わらわの魔法か? わらわの魔法は『守護』じゃ」
 おぉっ、使えそう。
 「剣や槍はいうに及ばず、毒や呪い、魔法も無力化されるのじゃ」
 ますますいいじゃないっ。
 期待に満ちた私の目を感じたのか、レリア王女は得意げに胸を反らせた。
 「素晴らしいです、殿下。では……」
 「守護範囲は、正しく王族なのじゃ。
 父王陛下、兄上、わらわを守護するのじゃ」
 ……さすが王族様。
 見事なまでの自己保存欲求と悪気のなさ。
 このメンタルも、王族の条件なのかしら?
 でもま、なんとかしましょう。
 この場はサブキャラのレリア王女のストーリー進行中らしくて、瓦礫も落ちてこないし魔物の襲撃もないけど、結構近くから魔物に襲われているらしい悲鳴や、城壁が崩れる音がしてくる。
 治癒士ヒーラーを求める声も聞こえてくる。
 主人公たちのメインストーリーだと、背景なことなんだけど、モブ的には現実に痛かったり辛かったりするのですよ。
 「殿下。誠に恐れことながら、殿下の魔法を発動いただけますでしょうか?」
 「かまわぬが、お主を『守護』することはできぬぞ」
 おや、ちょっと後ろめたそう。
 こういうちょっとしたエピソードが、王族キャラなのに許されちゃうとこなんだろうあなぁ。
 ま、今は後々。
 「恐れながら殿下、魔法の発動をお願い申し上げます。頂いた魔法を、私が拡大マグニフィクションし、王宮の人々に『守護』を与えます」
 レリア王女は、目を丸くして私を見上げた。
 「そなた、そのようなことができるのか? 王宮にいる者どもすべてに『守護』を与えるなど」
 いや、ぶっちゃげ避けられるならやりたくないですよ。モブに反するし。
 でも、メインストーリーの背景とはいえ、助けを求める声があって、『ギリギリいっぱいレッドラインの線上乗ってますっ』ってなるけど、なんとかできそうだったら、ま、やるしかないよね。
 きっと小説の中でも、語られなかっただけで、多くのモブい『英雄』がいたと思う。
 「なんとかいたしましょう。私も『魔法士』でございますゆえ」
 「……そなた、死ぬ気か? そなたがいなくなったら、困るではないかっ」
 レリア王女が強めな視線で見てくる。
 サブキャラといっても王族は、王族。
 目力強い。
 いやぁ、モブの私はわからないけれど、レリア王女はちょいちょいギャグ場面で重宝されてたんで、生き残るはず。
 「無為に死ぬ気はございません。
 レリア王女殿下の貴い御身は、我が身が魔力に擦り切れ、魂核のみとなり果てようと、必ずお守り申し上げます」
 そう。魔力を限界超えて使い続けると、簡単にいうと生身が保てなくなる、らしい。
 その前に気絶したりして、意識が保てなくなるだろうから、そこまでにはならないだろうけど。
 うん。なかなかモブく卑屈っぽい発言でたじゃない、私。
 「そこまで申すのなら、好きにするがよい。
 ただし、死ぬことは許さぬぞ」
 見上げてくるレリア王女の目が、心なしか潤んでいる。
 おぉっ。
 なんだかメインキャラっぽい展開じゃないですかっ。
 ま、レリア王女とのつながりもこの場限りだろうから、ちょっと乗ってみちゃおうかな?
 「殿下のご下命とありましたら、非才の我が身が及ぶ限り」
 私はとりあえず笑ってみせると、レリア王女の手を強く握った。
 拡大マグニフィクションするのに、特に条件はないんだけど、身体接触をして発動する人が私に、心身とも寄せてきてくれている方が、やりやすいにはやりやすい。
 なんだかレリア王女が、可憐な少女っぽく見上げてきてるんだけど、もしかして恋とか始まっちゃう?(笑)なんて。
 美少女とモブ女との組み合わせの需要がないし(笑)。
 こんなくだらないこと思い浮かべるくらい、緊張してるんだな、私。
 でもま、緊張しようがしまいが、私の魔力が急に増えるわけないし、できることしかできないのがモブなので。
 私は私にでえきる範囲で、できることをする。
 王女の魔法が、繋いだ手から伝わってくる。
 さすが王族。
 質も量も素晴らしい。
 イメージとしては、光り輝く宝玉。
 効果は『守護』
 範囲は『直系王族』
 私はその宝玉を揺らして、ぶらして、広げていく。

 効果は『守護』
 『守護』とは?
   『守ること』
 『守ること』とは?
   『その身を健やかに保つこと』
 『その身を健やかに保つこと』とは?
   『その心身が侵されていないこと』
 『その心身が侵されていないこと』とは?
   『我が身が物や敵から害されることがないこと』
   『我が心が悲しみに押しつぶされるようなことがないこと』
 これで、瓦礫とかの物理的なものからの怪我や、魔物らからの攻撃に耐性ができるはず。
 そして、『心』も守護対象になるので、友人知人、周りの人間が害されるのを見て心を痛めることがない=互いに見える範囲でお互いが補完し合うってこと。

 効果は『直系王族』
 『王族』とは?
   『王宮に住まう者』
 『王宮に住まう者』とは?
   『王族に使える国民』

 ん。効果範囲は短くてすんだ。
 ってか、広げていくと『国民すべて』になりそうなんだけど、そんなことしたら本当に私、消滅の危機になっちゃう。
 とりあえず、メインストーリーでは、奇襲が成功したくせに魔王はいったん引いていくので、それまで王宮内の人的被害が少しでも少なくなればオッケ!ってことで。

 んでは、モブらしく地味に。
 空に魔法陣が出るわけでもはなく、派手に呪文を叫んだり、杖を振り回すこともなく。
 ただ自分の中の魔力を発動するだけ。

 ーーー拡大マグニフィクション
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