社会人2●年 アラフォーの対処法

藍川 東

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③破れたストッキングを見つけた時の対処法(他人Ver.自分Ver.)

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 すべてのストッキングは消耗品であるー--

 そりゃそうだ。

 しかも此奴はただ消耗される他の衣服とは違い、新品だろうが使い古しだろうが、値段が高かろうが安かろうが、唐突にそれ以降の使用を許さない状態になる。

 破れ(or伝線)である。

 それが起こる危険性は日常生活で常に潜んでおり、とくに出勤前に履いたとき、そして、あとは家路につくだけという退社前に気が付いてしまうと、『絶望』の二文字が頭に浮かぶ。。
 まぁ、日々の絶望の波を会社人生の長さで乗りきっていく社会人2●年目のアラフォーとしては、出勤前の絶望は素早く対処できる絶望の一つにすぎない。
 その場で脱ぎ捨てる。のち、フローリング掃除用に床に放置。
 退社前の絶望については後述することにして、別Ver.への対処を述べさせていただこう。

 まず他の人のストッキングの破れ(or伝線)を見つけてしまった場合。
 それは大概、駅の階段、もしくはエスカレーターを上っているときに見つけてしまう。
 まぁ、それ以外で人の足をまじまじと見上げる機会はない。(ご趣味の方以外)
 目線の高さに他人の足。
 本当に無の境地で見ているで見ていると、ピッーと縦線が入ったおみ足があるのだ。
 目の前に。

 選択肢は二つある。
 その①『ストッキング、破れて(or伝線)してますよ』と見ず知らずの他人に後ろから話しかける。
  →自分の親切心は満たされる。しかし、『え、この人なに?』という不審者を見る視線は当然覚悟しなくてはならない。
 さらに分岐が二つある。
 a.『あ、どうも』とお礼めいたことをいいつつ、破れてる(or伝線している)場所を確かめようと立ち止まる彼女を、微妙な会釈をして追い抜かして歩み去る。
 b.一瞥されたのち、無視して歩み去られる。
 こちらがアラフォー女なので、
 c.駅員か巡回中の警察官に不審者として通報される。
にはならないだろうが、『私って親切な人っ』という気持ちを満たした代償としてはリスクが大きすぎる。
 ここは選択肢その②の
 『スル―』
が社会人として正しい選択ではないだろうか。
 きっとストッキングが破れ(or伝線)している彼女も、今はその事態に気づいていない。
 気づいていない、ということは彼女にとってその事象は『ない』ということだ。
 だから堂々と歩いていける。ここでストッキングの破れ(or伝線)に気づいてしまったが最後、今日の完璧なコーディネートがすべて無に帰す。そんな絶望を、見ず知らずの他人に与えてしまっていいものだろうか。
 否。
 そして私は自分の欲求を抑えることで、誰も傷つかない世界を維持する。

 自分Ver.に移る。
 後回しにしていた『退社前に自分のストッキングが破れて(or伝線して)いることに気づいてしまった』Ver.だ。
 まず、被害状況を確認する。
 それはスカート、もしくは靴で隠れる箇所か否か。
 残念ながら隠れない箇所の場合、一目見て目立つ場所か否かを確認する。すねやふくらはぎ、正面や外側はアウトだけれど、内側なら気づかれないかもしれない。さらに、かかとからアキレス腱にかけての部分は、伸びて薄くなるところなので、気づかれない可能性が高い。
 しかし、いままでのチェック項目をまったく無視した箇所が破れ(or伝線して)いた場合。
 私の選択肢は一つに絞られる。
 『ストキングが破れて(or伝線して)ますよ』なんて己の親切心を満足させるためだけに声をかけてくるような輩に出会わず帰宅できるよう、わき目も振らずに家の玄関を目指すのだ。
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