追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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VSルルディナ・ウェスター1

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 私とライはリムス城の大広間に来ていた。
 大広間には本日の主役であるルルディナ様とウェスター様をお祝いするために諸外国からやって来た要人達で賑わっている。
 私とライが会場に入れば波紋のようにざわめきが広がり、人々の視線が降り注ぐ。

 いつも私はお兄様やライにエスコートされてパーティーに参加しているが、こんなにも注目された事はない。
 お兄様もライも目立つのでざわめきは必ず起こるけどすぐに静まり返る。それなのに今日は何故? と首を傾げたけれども、彼らの視線がとある場所へ注がれている事を知ることに。

「……ん?」
 右肘を軽く曲げているライの腕に私は左手を添えるようにしてエスコートして貰っているのだが、みんなが注目しているのは私の左手。
 何があるんだろうと思ったが、視線を向けて納得。私の薬指にはライから貰った指輪が嵌められていたのだから。

「あぁ、指輪かぁ。ねぇ、ライ。指輪の事をもし聞かれたら答えても良い?」
「もし聞かれたらというか、絶対に聞かれるな」
「なんで?」
「ほら」
 ライが視線で指したのは壁際の方だった。
 そこには数多くの新聞記者が窺える。

 記者達が囲んでいるのは、もちろん本日の主役であるルルディナ様とウェスター様。
 二年ぶりに姿を見た二人は、記者を周りに侍らせてカメラのフラッシュの中にいた。
 さすがは目立つ事が大好きな二人。まさか、室内で記者達を侍らせていたなんて想像もしていなかった。

 二年という月日が経っても熱愛中だというのは、彼らの様子からすぐに理解できる。
 二人は顔を近づけて笑いあったり、ウェスター様がルルディナ様の耳元で何かを囁き、彼女が頬をそめたり……二年経過しても相変わらずの二人でなによりだ。

 私達は真っ直ぐルルディナ様達へと距離を近づけていけば、ざわめきが広がっていくので、彼らも気づきこちらに顔を向けてくる。
 私の姿を捉えると、二人は極限まで目を大きく見開く。
 二人だけじゃない。今までルルディナ様達を撮影していた新聞記者やカメラマンも驚いている。

 私達が二人の傍に立てば、「え、本当に来たの……?」というルルディナ様の呟きが聞こえた。
 招待状を直々に貰ったし、私もあの時行くと言ったから出席するに決まっているじゃないか。
 気を取り直して、私はにっこりと微笑み唇を開く。

「このたびはご結婚おめでとうございます。ルルディナ王女殿下。ウェスター様」
 二人にお祝いの言葉を伝えれば、ウェスター様が口に手を当てた。

「もしかして俺に未練があって会いに来たのか?」
「は? ねーよ」という台詞が口から出そうになったが、すぐにライがばっさりと否定の言葉を発する。

「それは無いな。ティアは俺と婚約予定だから。なぁ、ティア」
 ライが私に向かって微笑むと私の左手を取り、指輪の嵌められた薬指に口づけを落とす。
 まるで一枚の絵のように様になっているライの姿にみんなが見惚れてしまったせいで場が静寂に包まれてしまう。

「おい、何をぼーっとしてんだよ。早く撮れって! 明日の一面逃すことになるぞ」
「お、おう。そうだったな」
 記者は固まってしまっていたカメラマンを肘で軽くつついたのを合図に、他の記者達も我に返り自分の仕事をし始める。そのため、私達は複数のフラッシュに包まれてしまう。

 ま、眩しい……

 咄嗟に瞳を守るために瞼を伏せようとすれば、ライが私を胸に抱きフラッシュから守ってくれた。

「おめでとうございます」
「前からお二人の噂はありましたが、交際期間はどれくらいでしょうか?」
「きっかけはやはりハーブの問題でしょうか?」
「婚約日はもう決定されているのですか?」
 次から次に質問攻めにあっているので、どの質問から答えて良いかわからず。
 結果、ライがフォローしてくれ全部答えてくれた。

 二年前の自分では想像も出来ないくらいに幸せ。あの時の私は婚約破棄された上に、追放されてしまってどん底。
 何も出来なかった元貴族令嬢だけれども、二年が経過してここまできた。

「おめでとうございます」
 取材が一通り終わった後。周りにいた招待客である王族や貴族からも祝いの言葉を受け、私とライは顔を見合わせながら微笑む。
 お祝いの言葉がちょっとくすぐったいけど嬉しい。

 私とライを包んでくれる和やかな祝福ムードだったが、長くは続かなかった。
「主役は私達よっ!」という、ルルディナ様の怒号によって……

 弾かれたように彼女へと顔を向ければ、眉を吊り上げ不機嫌そうな表情を浮かべている。隣にいるウェスター様も同様。
 一瞬にして人々が私達の祝福に切り替わってしまったため、癇に障ったのかもしれない。
 周りの人達はルルディナ様の叫びを聞き、呆気に取られている。
 私は彼女の正体を知っていたけど、どうやら周りは知らなかったらしい。猫を被っていたのだろうか?

「今日は私達の結婚式! 私達が主役ですわ。それなのにどうしてティアナを取材していらっしゃるのかしら? みなさんもどうして祝福するの? 私、理解出来ないわ」
「そうだ。今日はルルディナ様と俺の記念すべき日なのに」
「そもそも私の結婚式によく来られたわね。私なら来られないわ。婚約だってあてつけじゃない。ウェスター様に心残りがあるのね」
「婚約破棄した時も未練がましかったもんな。そうまでして俺の気を惹きたかったのか」
 逆にこちらが聞きたい。なぜ私がウェスター様に未だに未練があると思ったのかを。
 微塵もない。あるわけがないに決まっている。
 そもそも、ウェスター様とライを比べられると思っているのだろうか。

「絶対にないと否定させて頂きます。私にとって不名誉なので」
「ふ、不名誉だと!?」
 ウェスター様は深く眉間に皺を寄せる。





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