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パン屋のおばさんと再会1
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扉を開ければ友人のマルガリタの他に、伯爵邸で働いてくれていた使用人の方達がずらりと並んでいた。
出迎えてくれた人達を見詰めている私の瞳がだんだん滲んでいく。
「マルガリタ、みんな……っ!」
脳裏にリムス王国でみんなと過ごした日々が浮かび、私は足に力が入らなくなり、肢体が揺らいでしまったけれどもライが支えてくれた。
「やだ、泣かないでよ。せっかくの再会なんだから」
そう言いながらも、マルガリタの瞳にも涙が滲んでいた。
「……みんな、どうして」
「ライナス様からお手紙を頂いたのよ。伯爵邸の使用人達も今働いているお屋敷から休みを貰って集まったの。今日は、ティアのお祝いだから」
「ライが?」
私がライへと顔を向ければ、彼は微笑んだ。
「本当にありがとう」
「喜んで貰えて嬉しいよ。今度は、リストや伯爵達も一緒に。ティアの家族にも声を掛けたんだけれども、仕事で予定が空かないらしくて……今度は皆で来よう」
「うん」
お兄様達に早く知らせたい。
屋敷をライが購入していてくれた上に、みんながそれぞれの新しい屋敷で元気に過ごしていたってことを。
「ライナス様、ティアナ様。長旅、ご無事で何よりです」
凛とした通る声が聞こえ、私は声のした方向へ顔を向ければ、ファルマ城でお世話になっている侍女長のリズさんの姿があった。
彼女の後方にはファルマ城で馴染みのあるメイドや侍女などの使用人達の姿が。
「えっ!? リズさん達……?」
驚いている私を安心させるように彼女は微笑むと口を開く。
「驚かせてしまって申し訳ありません。実はライナス様の命でリムス王国に滞在中は、私達がティア様のお世話をさせて頂きます。さぁ、玄関ホールで立ち話よりも部屋の中へどうぞ。お茶の準備が整っておりますので、お客様との久しぶりの再会をゆっくりお楽しみ下さい」
「ありがとうございます」
リズさんに促されて、私達は部屋へと向かった。
+
+
+
――昨日は楽しかったなぁ。
私は分厚いカーテンを開けて、寝室から庭を眺めている。
懐かしい庭はあの頃と変らず。
場所は覚えてないけれども、庭のどこかにお兄様と埋めたタイムカプセルがあるはずだ。
「まさか、もう一度ここからの景色が見られるなんて」
空はまだ太陽が出始めているため、濃紺な空と温かなオレンジのグラデーションが綺麗。
「……ティア?」
後方からライの声が聞こえてきたので振り返れば、寝具の上でライが上半身を起こしている所だった。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、自然に起きた」
ライは寝具から降りると、私の元へ来て腕を伸ばして抱きしめた。
自分の体よりも大きな彼の存在は、鼓動が高まると同時に安らぎを覚える不思議な感覚がする。
「おはよう」
「おはよう。ライ、最近よく眠れるようになったね」
「ティアと一緒だからかも」
ライはお母様の件があってから、睡眠があまり取れない体質になっていた。
眠るとお母様の事件が鮮明に夢に出て幾度も彼を苦しめてしまっていたため、眠ることが怖くなった上に眠りも浅くなってしまったのだ。
最初は私と一緒に眠ってもライだけ夜中に起きていた状態だったが、今はゆっくりと休むことが出来るように変わった。
さきほどのように私だけ先に起きるというのも珍しくない。
「いよいよ今日だな。王女達の結婚式」
「そうだね。今日が勝負の日」
「傍で見守っているから」
「ライが一緒なら心強いよ」
私はライの体に腕を回した。
「そういえば、ティアが俺を連れて行きたい場所ってどこ? 朝食もそこで食べるって言っていたけど」
「パン屋さんなんだ。私がどん底にいた時に励まして頂いた上に、パンをいっぱい頂いたの。もし一緒に人生を共にしたいって男が現れたら、その人と一緒にパンを食べにおいでって言われたからライを連れて行きたいなぁって」
リムス王国に到着したら、パン屋のおばさんにお礼に行きたかった。
あの時、励ましてくれた優しい彼女に、二年間元気にやって来ましたという報告も兼ねて。
ちゃんと、お礼のエタセルのお土産も持ってきた。
「一生人生を共にしたいか……光栄なことだな。パンも楽しみにしているよ」
「すごく美味しいの。朝一だから焼きたて食べられるかも!」
「焼きたて良いな」
「なんか思い出したらお腹空いたかも」
「じゃあ、身支度して早速行こうか」
「うん!」
私とライは瞳同士を合わせると、微笑み合った。
出迎えてくれた人達を見詰めている私の瞳がだんだん滲んでいく。
「マルガリタ、みんな……っ!」
脳裏にリムス王国でみんなと過ごした日々が浮かび、私は足に力が入らなくなり、肢体が揺らいでしまったけれどもライが支えてくれた。
「やだ、泣かないでよ。せっかくの再会なんだから」
そう言いながらも、マルガリタの瞳にも涙が滲んでいた。
「……みんな、どうして」
「ライナス様からお手紙を頂いたのよ。伯爵邸の使用人達も今働いているお屋敷から休みを貰って集まったの。今日は、ティアのお祝いだから」
「ライが?」
私がライへと顔を向ければ、彼は微笑んだ。
「本当にありがとう」
「喜んで貰えて嬉しいよ。今度は、リストや伯爵達も一緒に。ティアの家族にも声を掛けたんだけれども、仕事で予定が空かないらしくて……今度は皆で来よう」
「うん」
お兄様達に早く知らせたい。
屋敷をライが購入していてくれた上に、みんながそれぞれの新しい屋敷で元気に過ごしていたってことを。
「ライナス様、ティアナ様。長旅、ご無事で何よりです」
凛とした通る声が聞こえ、私は声のした方向へ顔を向ければ、ファルマ城でお世話になっている侍女長のリズさんの姿があった。
彼女の後方にはファルマ城で馴染みのあるメイドや侍女などの使用人達の姿が。
「えっ!? リズさん達……?」
驚いている私を安心させるように彼女は微笑むと口を開く。
「驚かせてしまって申し訳ありません。実はライナス様の命でリムス王国に滞在中は、私達がティア様のお世話をさせて頂きます。さぁ、玄関ホールで立ち話よりも部屋の中へどうぞ。お茶の準備が整っておりますので、お客様との久しぶりの再会をゆっくりお楽しみ下さい」
「ありがとうございます」
リズさんに促されて、私達は部屋へと向かった。
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――昨日は楽しかったなぁ。
私は分厚いカーテンを開けて、寝室から庭を眺めている。
懐かしい庭はあの頃と変らず。
場所は覚えてないけれども、庭のどこかにお兄様と埋めたタイムカプセルがあるはずだ。
「まさか、もう一度ここからの景色が見られるなんて」
空はまだ太陽が出始めているため、濃紺な空と温かなオレンジのグラデーションが綺麗。
「……ティア?」
後方からライの声が聞こえてきたので振り返れば、寝具の上でライが上半身を起こしている所だった。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、自然に起きた」
ライは寝具から降りると、私の元へ来て腕を伸ばして抱きしめた。
自分の体よりも大きな彼の存在は、鼓動が高まると同時に安らぎを覚える不思議な感覚がする。
「おはよう」
「おはよう。ライ、最近よく眠れるようになったね」
「ティアと一緒だからかも」
ライはお母様の件があってから、睡眠があまり取れない体質になっていた。
眠るとお母様の事件が鮮明に夢に出て幾度も彼を苦しめてしまっていたため、眠ることが怖くなった上に眠りも浅くなってしまったのだ。
最初は私と一緒に眠ってもライだけ夜中に起きていた状態だったが、今はゆっくりと休むことが出来るように変わった。
さきほどのように私だけ先に起きるというのも珍しくない。
「いよいよ今日だな。王女達の結婚式」
「そうだね。今日が勝負の日」
「傍で見守っているから」
「ライが一緒なら心強いよ」
私はライの体に腕を回した。
「そういえば、ティアが俺を連れて行きたい場所ってどこ? 朝食もそこで食べるって言っていたけど」
「パン屋さんなんだ。私がどん底にいた時に励まして頂いた上に、パンをいっぱい頂いたの。もし一緒に人生を共にしたいって男が現れたら、その人と一緒にパンを食べにおいでって言われたからライを連れて行きたいなぁって」
リムス王国に到着したら、パン屋のおばさんにお礼に行きたかった。
あの時、励ましてくれた優しい彼女に、二年間元気にやって来ましたという報告も兼ねて。
ちゃんと、お礼のエタセルのお土産も持ってきた。
「一生人生を共にしたいか……光栄なことだな。パンも楽しみにしているよ」
「すごく美味しいの。朝一だから焼きたて食べられるかも!」
「焼きたて良いな」
「なんか思い出したらお腹空いたかも」
「じゃあ、身支度して早速行こうか」
「うん!」
私とライは瞳同士を合わせると、微笑み合った。
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