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芸術の国と製紙の国2
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「少しお伺いしたいのですが、絵を紙に印刷することって可能ですか? たとえば油絵とか」
「正直、油絵の見た目で印刷は難しいけど、似たような状態で構わないなら不可能ではないよ。かなりコストがかかるけど」
「見積もり出して貰えますか?」
「俺、製紙の国出身だけど業者ではないから概算でしか出せないよ。詳しく知りたかったら業者紹介するけど。もっと具体的に教えてくれない?」
「実は――」
私がさっき考えた案を話そうとした瞬間、「何をしているんだい?」という聞き慣れた声が聞こえてきた。
慌てて顔を上げれば、屈み込んでこちらを見ているライの姿が。
彼の傍では、おろおろと困惑気味な姫君の姿も。
ライは私達のすぐ傍にいるフーザー様へと視線を向けると口を開く。
「フーザー様がティアを?」
「そうだよー。君がそこの姫君と縁談があったから連れて来てあげたの。交際宣言でもすれば縁談来ないのにね。あっ、なんなら僕が宣言出してあげようか?」
「精霊界を巻き込むので結構です。それにこちらにもタイミングがありますから」
「申し訳ありません。それは私の父が無理矢理……」
チュール様がフーザー様とライの間に入って、眉を下げたまま腰を折る。
すると、メラブレ様が彼女の肩に手を回して宥めだした。
「すまない。僕にもっと力があれば」
「いいえ。私もお父様に伝える勇気があればいいのですが……両国の関係があまり……」
二人は手を取り合うと身を寄せる。
「もしかして、二人はつき合っていたのか?」
「そうみたい。二国間って仲が良くもないし悪くもないから、公に出来なかったんだって」
「確かに仲が良くも悪くもないな。でも、今は――」
ライはそう言うと、じっと私の方へ瞳を固定させる。
どうしたのだろうか? と首を傾げれば、ライは腕を伸ばして私を抱き締めた。
「ラ、ライっ!?」
「久しぶりのティアだ。元気にしていた?」
多忙過ぎて、私とメディはライに手紙の返事を出せていなかった。
そのため、彼はお兄様からの便りからでしか近況を知ることは出来ていなかったはずだ。
お兄様もライも頻繁に手紙を送れるわけではないし。
「ごめんね、手紙の返事出せなくて」
「いいよ、忙しいから返事を出せないって事前に教えて貰っていたから。食事と睡眠はちゃんと摂れている?」
「うん」
「メディも元気?」
「元気だよ。開発で忙しかったけど、少し落ち着くと思う。商品が完成したんだ」
「良かったな」
「うん。あのね、ライ。部屋を貸して貰っても良い? ちょっとメラブラ様達に聞いて欲しい話があるの」
「構わないよ。何か仕事で新しいアイデアでも浮かんだのか?」
「うん。ごめんね、せっかく来たのに仕事の話ばかりで」
「構わないよ。俺はそういうティアが好きだし、支えたいと思っているから」
ライは微笑むと腕を伸ばして私の頭を撫でた。
+
+
+
私達はライが用意してくれた部屋へ。
庭園がよく見える応接室には、メイドさんが持ってきてくれた紅茶やケーキが並べられている。
「実はもうすぐエタセルで保養施設がオープンすることになっているんです。化粧品なども販売することになっているのですが、ラッピングなどの紙類を発注したいんですよ」
「俺、さっきも言ったけど業者じゃないんだけが……業者紹介するぞ」
「ただのラッピング用紙じゃありません。芸術の国・レライとのコラボの紙です」
「どういうことでしょうか……?」
首を傾げている二人に対して、フーザー様とライが「ティア、おもしろいこと考えたね」と呟いた。
「芸術家の卵の中には、将来の大作家になる方も現れるでしょう。でも、今は卵なので支援してくれる方を探さなければならない。自由に他国に自作を推しに行ける人は少ないですよね?」
「えぇ」
「エタセルで開発した商品のラッピング用紙に芸術家の卵達がデザインした作品を印刷するんです。勿論、エタセル関係にして頂ければ嬉しいのですが……購入者には未来の大作家が手掛けたデザインかもしれないというワクワク感、そして作家にとっては色々な人に渡りますので宣伝になります。保養施設のターゲット層は広いので」
「まぁ! 素敵ですわ」
チュール様は目を輝かせながら手を叩いている。
「製紙の技術力を一番持っているのはコリナ。ですから、メラブレ様にもご協力をお願いしたいんです。両国で連絡を取りながら完成させて頂きたいなぁと」
「俺としては協力したい。これをきっかけにレライ国にコリナ国の事を知って貰えるからな。父上達に相談しなければならないため、一度国に持ち帰らせて貰っても構わないか?」
「勿論です」
「私の方はお父様にお伝えいたします。今、ファルマ城に滞在させていただいておりますので。わが国にもメリットがあるため、絶対に前向きなお返事が可能ですわ」
「ありがとうございます!」
二人から肯定的な意見が聞けて、私はほっと胸をなで下ろした。
「正直、油絵の見た目で印刷は難しいけど、似たような状態で構わないなら不可能ではないよ。かなりコストがかかるけど」
「見積もり出して貰えますか?」
「俺、製紙の国出身だけど業者ではないから概算でしか出せないよ。詳しく知りたかったら業者紹介するけど。もっと具体的に教えてくれない?」
「実は――」
私がさっき考えた案を話そうとした瞬間、「何をしているんだい?」という聞き慣れた声が聞こえてきた。
慌てて顔を上げれば、屈み込んでこちらを見ているライの姿が。
彼の傍では、おろおろと困惑気味な姫君の姿も。
ライは私達のすぐ傍にいるフーザー様へと視線を向けると口を開く。
「フーザー様がティアを?」
「そうだよー。君がそこの姫君と縁談があったから連れて来てあげたの。交際宣言でもすれば縁談来ないのにね。あっ、なんなら僕が宣言出してあげようか?」
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「申し訳ありません。それは私の父が無理矢理……」
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すると、メラブレ様が彼女の肩に手を回して宥めだした。
「すまない。僕にもっと力があれば」
「いいえ。私もお父様に伝える勇気があればいいのですが……両国の関係があまり……」
二人は手を取り合うと身を寄せる。
「もしかして、二人はつき合っていたのか?」
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「確かに仲が良くも悪くもないな。でも、今は――」
ライはそう言うと、じっと私の方へ瞳を固定させる。
どうしたのだろうか? と首を傾げれば、ライは腕を伸ばして私を抱き締めた。
「ラ、ライっ!?」
「久しぶりのティアだ。元気にしていた?」
多忙過ぎて、私とメディはライに手紙の返事を出せていなかった。
そのため、彼はお兄様からの便りからでしか近況を知ることは出来ていなかったはずだ。
お兄様もライも頻繁に手紙を送れるわけではないし。
「ごめんね、手紙の返事出せなくて」
「いいよ、忙しいから返事を出せないって事前に教えて貰っていたから。食事と睡眠はちゃんと摂れている?」
「うん」
「メディも元気?」
「元気だよ。開発で忙しかったけど、少し落ち着くと思う。商品が完成したんだ」
「良かったな」
「うん。あのね、ライ。部屋を貸して貰っても良い? ちょっとメラブラ様達に聞いて欲しい話があるの」
「構わないよ。何か仕事で新しいアイデアでも浮かんだのか?」
「うん。ごめんね、せっかく来たのに仕事の話ばかりで」
「構わないよ。俺はそういうティアが好きだし、支えたいと思っているから」
ライは微笑むと腕を伸ばして私の頭を撫でた。
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「どういうことでしょうか……?」
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「えぇ」
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