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お茶会1
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私達のお茶会が行われたのは、エタセル内でも絶景スポットとして知られているミアリー山脈が窺える部屋だった。
城の三階部分にあるこの部屋は、窓が大きく切り抜かれているため、王都の街並みと合わさって一つの絵画のようだ。
私の前にある純白のクロスがかけられた大きな円卓には、紅茶とケーキがセッティングされている。
ケーキはクリームがたっぷりかけられたもので、スライスされたピンク色の果肉で作られた花が飾られていた。
お茶は私の大好きな苺の香りが漂って来ているので、ストロベリーティーだろう。
いつもならばさっそく頂くところだが、今の私は大好きな紅茶に手を伸ばせずにいた。
なぜならば、空気が張りつめてしまっているからだ。
テーブル席には、私とメディ、そしてルナ様が座っているのだが、ただ静寂が包み込んでくれているのみ。
――気まずい。本当に気まずい。
メディは視線を彷徨わせているし、ルナ様に至っては思いつめた表情をしている。
しかも、メイドや侍女は人払いを済ませている。
何か内密の話があるということを言われなくても容易に察せてしまう空気だ。
お兄様がこの場にいたらきっと胃を痛めていたかもしれない。
「お、美味しそうなケーキですね。頂きても構いませんか? 紅茶も冷めてしまいますし」
このまま静寂が続く事を耐えられなくなってしまった私が口を開く。
「すみません、そうですわよね。どうぞ」
ルナ様は弾かれたように私へと視線を向けると微笑んだ。
「いただきます」
私はなんとか笑顔を張り付けフォークを手に持ち、ケーキを切り分けて口に入れようとした時だった。
ルナ様の口から出た台詞に思わず息を飲んでしまったのは。
「メディ様。突然の不躾な質問を致しますが、よろしいでしょうか?」
「はい」
メディは紅茶を飲もうとしていた手を止め、ルナ様へと顔を向ける。
――え、まさかコルタのことを聞くんじゃないですよねっ!?
「コルタのことをどう思いますか?」
予想が的中してしまった。こういう予感は的中して欲しくない。
気のせいだろうか。口内にある柔らかなケーキの甘みが一切感じず、ただの固形物と化してしまっている。
「コルタですか……? とても頼りになる友人です」
「私とお兄様には両親がいません。ずっと前に天へ。それ以来、父の友人であったコルタの両親であるおじ様とおば様が私達兄妹を引き取って下さったんです。それ以来、私達は本当の家族のように過ごしてきました。でも、私は彼を家族として思えませんでした。私はずっと前から男性としてコルタのことが好きなんです」
ルナ様の告白にメディが大きく目を見開くと同時に、私は胃を押さえてしまう。
お兄様の気持ちがわかる。これは当事者外でも胃が痛くなる。
「コルタは私のことを妹のようにしか思っていません。それに、私はエタセルのために他国へ嫁がなければならない。ティア様とメディ様もお判りでしょう?」
王族や貴族は国や民を支える礎にならなければならないため、政略結婚が通常だ。
恋愛結婚もあるが、お互いメリットがある国だったり、大国だったり……それなりに理由がある。
正直、エタセルは国としてはまだ弱い。数年前まで名前を知らなかった人が多かったくらいだ。
エタセルの名が広がったのは、ハーブ問題の時だろう。
それも、ファルマが表立って取引の支援をしてくれ、ファルマという大国の信頼度の高さにより他国も続々と契約してくれた。
「エタセルはいま立ち直っています。きっと、ルナ様も……」
「ティア様が作って下さった商会により、エタセルの税収はよりよくなりましがいきなりファルマのような大国にはなれません」
確かにルナ様の言う通りだ。
だが、私はみんなが幸せになる形を望みたい。
「私にいくつか縁談が来ているんです。中でも特に熱心に申し出をして下さっているのが、キャンベリア国の第二王子・ロア様ですわ」
「キャンベリア……」
キャンベリアはファルマのような大国中の大国ではないが、大国の部類に入る国だ。海に面した国土を持ち貿易国として有名で、異国情緒あふれる国であると同時に海軍に関しては強国として名高い。
――確かに良い縁談だわ。でも、私はルナ様が幸せになる選択を取って欲しい。
「お兄様は本当は王になんてなりたくなかったんです。色々なものを捨て諦めなければならないから。だから、お兄様がエタセルの王になる時、私はお兄様を支えると誓いました。自分の恋も諦めてお兄様や国の為に尽くすと。でも、何度も諦めようと思ったのに、コルタへの想いを捨てきれないんです」
ルナ様は瞳を潤ませ、唇を噛みしめた。
「メディ様がお兄様へ想いを寄せているのは重々承知しております。ですが、コルタのことを考えて頂けませんか?」
「どうして私に……」
メディが驚きと不安が混じった瞳でルナ様を見れば、彼女は弱々しく微笑んだ。
何も言わずただ、静かに。
そんな彼女を見てメディは察したのか、頬を桃色へと染め上げていく。
「終止符を打たなければならないんです。お兄様は失ったものが多い。お兄様にだけ犠牲を払わせられません。私も共に。その誓いはまだ胸にある」
「わ、私なんかを好きにならないと思います。こんな私では……」
メディが不安げな瞳で私を見て、目をこれ以上ないくらいに大きく見開く。
きっと私が思いっきり顔に出てしまっていたせいだろう。
ごめん、コルタ。私はこの状況でポーカーフェイスを保てない。
「ティア、知っていたの……?」
「ごめん、メディ。あまり本人以外が言うべきではないと思って」
「コルタが……」
メディの顔はどんどん赤くなり、俯いてしまう。
城の三階部分にあるこの部屋は、窓が大きく切り抜かれているため、王都の街並みと合わさって一つの絵画のようだ。
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いつもならばさっそく頂くところだが、今の私は大好きな紅茶に手を伸ばせずにいた。
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――気まずい。本当に気まずい。
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しかも、メイドや侍女は人払いを済ませている。
何か内密の話があるということを言われなくても容易に察せてしまう空気だ。
お兄様がこの場にいたらきっと胃を痛めていたかもしれない。
「お、美味しそうなケーキですね。頂きても構いませんか? 紅茶も冷めてしまいますし」
このまま静寂が続く事を耐えられなくなってしまった私が口を開く。
「すみません、そうですわよね。どうぞ」
ルナ様は弾かれたように私へと視線を向けると微笑んだ。
「いただきます」
私はなんとか笑顔を張り付けフォークを手に持ち、ケーキを切り分けて口に入れようとした時だった。
ルナ様の口から出た台詞に思わず息を飲んでしまったのは。
「メディ様。突然の不躾な質問を致しますが、よろしいでしょうか?」
「はい」
メディは紅茶を飲もうとしていた手を止め、ルナ様へと顔を向ける。
――え、まさかコルタのことを聞くんじゃないですよねっ!?
「コルタのことをどう思いますか?」
予想が的中してしまった。こういう予感は的中して欲しくない。
気のせいだろうか。口内にある柔らかなケーキの甘みが一切感じず、ただの固形物と化してしまっている。
「コルタですか……? とても頼りになる友人です」
「私とお兄様には両親がいません。ずっと前に天へ。それ以来、父の友人であったコルタの両親であるおじ様とおば様が私達兄妹を引き取って下さったんです。それ以来、私達は本当の家族のように過ごしてきました。でも、私は彼を家族として思えませんでした。私はずっと前から男性としてコルタのことが好きなんです」
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お兄様の気持ちがわかる。これは当事者外でも胃が痛くなる。
「コルタは私のことを妹のようにしか思っていません。それに、私はエタセルのために他国へ嫁がなければならない。ティア様とメディ様もお判りでしょう?」
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確かにルナ様の言う通りだ。
だが、私はみんなが幸せになる形を望みたい。
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ルナ様は瞳を潤ませ、唇を噛みしめた。
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「わ、私なんかを好きにならないと思います。こんな私では……」
メディが不安げな瞳で私を見て、目をこれ以上ないくらいに大きく見開く。
きっと私が思いっきり顔に出てしまっていたせいだろう。
ごめん、コルタ。私はこの状況でポーカーフェイスを保てない。
「ティア、知っていたの……?」
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