追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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幕間 その頃のあの人達は2(王女視点)

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 新聞なんて時々しか読むことが無かったのに、今は定期的に熟読してしまっている。
 原因はいわずもがなあの女だ。


「どういうことなのっ!?」
 私は手にしている新聞をテーブルの上へと投げ捨てれば、並べられていた複数の新聞が衝撃で床へと落ちていく。
 どれも一面は先日開催されたファルマ王・ライナス様の生誕を祝したパーティーの件。
 ライナス様が祝福に駆けつけた民に城のバルコニーから手を振っているのだが、その隣にティアナの姿があった。

 二人ともパーティー前ということもあってか正装しているのだが、問題はティアナの格好だ。

『ティアナ様がお召しになっているドレスは、ライナス様からのプレゼントとのこと。ティアナ様はパーティーに参加したご令嬢達の視線を釘づけにし、ティアナ様の美しさを引き立たせているドレスや装飾品からライナス様からの寵愛が深いことが窺える』
 記事にはこう書かれていた。


「まさか本当に二人は付き合っているのっ!?」
「落ち着いて、僕の愛しき人」
 私の隣に座っている婚約者・ウェスター様は、私を宥めるように肩を優しく撫でてくれる。
 彼の声は世界中で一番落ち着くし、彼の存在は世界中で一番愛しい。


 大好きな人が隣にいて満たしてくれる。
 私の幸せを誰にも壊させたりはしない。特に私とウェスター様の愛の時間を奪ったティアナには。
 あの女さえ居なければ、私とウェスター様はもっと早く結ばれたのに!

「でも、ウェスター様。ライナス様は、ファルマのパーティーでティアナをエスコートしたのよ。大国の王がティアナなんて相手にしないと思ったのに」
「相手が見つからなくてティアナが頼んだのだろう。リストがルナ様のエスコート、レイガルド様がメディ様のエスコート……ほら、ティアナが余った」
「まぁ! 可哀想。私は色々な殿方に誘われるのに」
「誘われているのかい?」
 唇を尖らせて不機嫌になったウェスター様に対して、私は笑みが込み上げてくる。
 世界中で最も愛していると常日頃から言っているのに、焼きもちを焼いてくれるのが嬉しいのだ。


「勿論、ちゃんとお断りはしております。私に触れて良い殿方はウェスター様だけですもの」
 私は手を伸ばして彼の頬に触れ、口づけを落とす。


「とても光栄だ」
 彼は微笑むと私を強く抱きしめた。


「エタセルはハーブ以外何も特産が無い貧しい国だ。唯一の生命線であるハーブに頼るといっても限界がある。所詮、その程度なんだよ。ティアもリストも。誰も僕達を脅かすことなんて出来ない」
「えぇ、そうですわね」
「ティアの事に時間を割くならば、俺のことだけ考えて欲しいな」
「勿論、ずっと考えておりますわ。実は、私とウェスター様の結婚式について考えていることがあるんです……特別に私達の結婚を祝した記念品を作り、民に振る舞いたいんです」
「素晴らしい。花壇の時もそうだが、君はどうしてそんなに素敵な発想が出来るんだい? ますます惚れ直したよ」
「まぁ! 嬉しい」
 私を抱き締めてくれている強くて逞しい彼に身を預け、私はゆっくりと瞳を閉じる。
 
 たかがハーブくらいじゃ私には絶対に勝てない。
 私は化粧品の開発に携わっていて売り上げも右肩上がりで資金も潤っている。


 私に強く啖呵切ったくせに、はたして私のようなことがティアナは出来るのかしら?
 まぁ、あんな田舎エタセルでは出来ることなんてほとんどないだろうけど。








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