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VS公爵令嬢2-1
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エスカ様はライの言った通りパーティーに参加していたが、私の予想に反して特にあちらからの接触はなかった。
もしかしたら、大人しくしてくれるのかもしれない。
私をエスコートしてくれていたライは、本日の主役のため多くの人に囲まれている。
私は祖父や父達の知り合いの方や商会の取引国と挨拶をしていたら、いつの間にかライと離れてしまっている。
――メディとレイガルド様は?
挨拶をしながらメディのことを目視するため、レイ達がいた場所へと顔を向ければレイしか居ない。
二人は一緒にいたはずなのに、レイは他国の王達と談笑中だ。
もしかして、飲み物でも取りに行ったのかな?
メディがいないことに対して、私は訝しげに思い周辺を見回せば、目を引くラベンダー色の髪をした少女の姿を捉える。
取り巻きと思われる二人がバルコニーへと通じる窓を開け、メディ達を招き入れた。
――大人しくしているわけがないか。
私は「ちょっと飲み物を」としゃべっていた祖父の知人へ断りとをいれると、彼女達を追うために足を踏み出した。
窓辺に近づけば、後方から聞こえてくるパーティーの賑やかな音とは反対にトゲトゲしい声音がガラス越しに届く。
「ひきこもりがエタセルの王にエスコートされてお姫様気取りかしら? 随分と偉くなったものね。忌まわしい王妃の娘が」
「本当ですわね、エスカ様。そのドレスも全く似合ってないわ。ドレスと宝石の無駄。きっと家柄が出てしまうのね」
「でも、エタセルなんて田舎な国。メディ様にはふさわしいんじゃないかしら? ずっとあちらで暮らして戻って来なければ良いのに」
壁に隠れ窓をそっと覗くとメディの背が見え、彼女の前にはエスカ様達が立ち、罵声を浴びせている様子が映し出される。
どうやらエスカ様だけではなく、取り巻きの二人も彼女と同様な性格らしい。
「わ、私は……」
メディが勇気を出して声を震わせながら言葉を発しようとしているけど、続きは音となることはなかった。
無理もない。トラウマの禍根が目の前にいるのだから。
「しかし、王女と似ているなぁ。やっぱ」
私は呟きながら窓を開ければ、四人が弾かれたようにこちらを見た。
「御機嫌よう。エスカ様と取り巻きのご令嬢達」
私がメディと彼女達の間に割って入りメディを背に隠してエスカ様達と対峙すれば、彼女は猫のような瞳を鋭く細めた。
「……ティアさん」
「随分と意地汚いですわね。私、こういうのが大嫌いなんです。権力振りかざして相手を痛めつける人が。メディはファルマ王の妹君ですよ? 失礼な言い方を改めるべきですわ」
「ティア……」
私の腕へメディが触れたので、私は大丈夫と微笑み彼女の手に触れる。
「部外者が口を出して欲しくないわ。貴女も調子に乗っているわよね。別にみんな貴女に注目しているわけじゃなくて、貴女のドレスに注目しているだけよ。成金みたいに高価なドレスを見せびらかしちゃって。エタセルなんて田舎に追放されたくせに」
「そうよ! エスカ様のおっしゃる通りだわ。あんたなんて大した可愛くもないし。その宝石だって本物か怪しいし」
「田舎の娘が買えるか怪しいわ。偽物ね」
やっぱりドレスに食いついてきたか。
エスカ様の報告書で華やかと書かれていたから、ドレスや装飾品に関しては絶対注目するだろうと踏んでいた。
そのため、ライにファルマの最先端のドレスを教えて欲しいとお願いしておいたのだ。
「偽物の宝石かもしれないって、なんて面白い冗談なのかしら」
「はっ?」
「だって、本物の宝石か偽物の宝石かが見抜けないっておっしゃっているんだもの。誰がどう見てもこんなに高品質のものは本物に決まっているのに」
私が扇子を広げてクスクスと笑えば、「なんですって!」という激怒した声が聞こえてきた。
取り巻きのご令嬢の二人は、手にしている扇子を今にも叩き折りそうな勢いでキレている。
「たかが伯爵の娘が生意気なのよ。前から気に入らなかったわ。たかがハーブくらいでファルマの女神って新聞で取り上げられていたし。大したことしてないのに周りが持ちあげてしまったせいで勘違いしちゃったのかしら?」
エスカ様が眉をつり上げながら、私と同様に扇子で口元を覆って喉で笑う。
「由緒ある血筋を持つ私のお父様が、貧弱な田舎の商会と取引してあげているの。感謝して欲しいわ。お父様に言って、取引を今すぐやめてあげても良いのよ? たかがハーブをうちで買ってあげているのだから。貴女だって困るでしょう」
たかがハーブ。さっきから連呼しているけど、自分の置かれている状況を本当にわかっていない。
「全く困りません。お客様は神様ではないので。うちの取引でファルマ内の大口の顧客は国です。個人でもグロム様ではありません。取引履歴などを拝見いたしましたが、うちと手を切って後悔するのはそちらですよ。たかがハーブと言いましたが、あなたは価値がわかっていない。他国ではハーブで税を納められるくらいに高価なんですよ。それから、公爵家が契約を破棄することも出来るが、うちからも契約を破棄できることをお忘れ無く」
前回の襲来により、商会の従業員さん達からはグロム様との契約を打ち切りにして欲しいという話も出た。
侮辱された相手とは対等に仕事はできないと。
ただ、あの時はグロム様ではなくエスカ様が悪いので契約は続行することで話が纏まった。
次、何かあった場合はグロム様に通告すると結論づけて。
もしかしたら、大人しくしてくれるのかもしれない。
私をエスコートしてくれていたライは、本日の主役のため多くの人に囲まれている。
私は祖父や父達の知り合いの方や商会の取引国と挨拶をしていたら、いつの間にかライと離れてしまっている。
――メディとレイガルド様は?
挨拶をしながらメディのことを目視するため、レイ達がいた場所へと顔を向ければレイしか居ない。
二人は一緒にいたはずなのに、レイは他国の王達と談笑中だ。
もしかして、飲み物でも取りに行ったのかな?
メディがいないことに対して、私は訝しげに思い周辺を見回せば、目を引くラベンダー色の髪をした少女の姿を捉える。
取り巻きと思われる二人がバルコニーへと通じる窓を開け、メディ達を招き入れた。
――大人しくしているわけがないか。
私は「ちょっと飲み物を」としゃべっていた祖父の知人へ断りとをいれると、彼女達を追うために足を踏み出した。
窓辺に近づけば、後方から聞こえてくるパーティーの賑やかな音とは反対にトゲトゲしい声音がガラス越しに届く。
「ひきこもりがエタセルの王にエスコートされてお姫様気取りかしら? 随分と偉くなったものね。忌まわしい王妃の娘が」
「本当ですわね、エスカ様。そのドレスも全く似合ってないわ。ドレスと宝石の無駄。きっと家柄が出てしまうのね」
「でも、エタセルなんて田舎な国。メディ様にはふさわしいんじゃないかしら? ずっとあちらで暮らして戻って来なければ良いのに」
壁に隠れ窓をそっと覗くとメディの背が見え、彼女の前にはエスカ様達が立ち、罵声を浴びせている様子が映し出される。
どうやらエスカ様だけではなく、取り巻きの二人も彼女と同様な性格らしい。
「わ、私は……」
メディが勇気を出して声を震わせながら言葉を発しようとしているけど、続きは音となることはなかった。
無理もない。トラウマの禍根が目の前にいるのだから。
「しかし、王女と似ているなぁ。やっぱ」
私は呟きながら窓を開ければ、四人が弾かれたようにこちらを見た。
「御機嫌よう。エスカ様と取り巻きのご令嬢達」
私がメディと彼女達の間に割って入りメディを背に隠してエスカ様達と対峙すれば、彼女は猫のような瞳を鋭く細めた。
「……ティアさん」
「随分と意地汚いですわね。私、こういうのが大嫌いなんです。権力振りかざして相手を痛めつける人が。メディはファルマ王の妹君ですよ? 失礼な言い方を改めるべきですわ」
「ティア……」
私の腕へメディが触れたので、私は大丈夫と微笑み彼女の手に触れる。
「部外者が口を出して欲しくないわ。貴女も調子に乗っているわよね。別にみんな貴女に注目しているわけじゃなくて、貴女のドレスに注目しているだけよ。成金みたいに高価なドレスを見せびらかしちゃって。エタセルなんて田舎に追放されたくせに」
「そうよ! エスカ様のおっしゃる通りだわ。あんたなんて大した可愛くもないし。その宝石だって本物か怪しいし」
「田舎の娘が買えるか怪しいわ。偽物ね」
やっぱりドレスに食いついてきたか。
エスカ様の報告書で華やかと書かれていたから、ドレスや装飾品に関しては絶対注目するだろうと踏んでいた。
そのため、ライにファルマの最先端のドレスを教えて欲しいとお願いしておいたのだ。
「偽物の宝石かもしれないって、なんて面白い冗談なのかしら」
「はっ?」
「だって、本物の宝石か偽物の宝石かが見抜けないっておっしゃっているんだもの。誰がどう見てもこんなに高品質のものは本物に決まっているのに」
私が扇子を広げてクスクスと笑えば、「なんですって!」という激怒した声が聞こえてきた。
取り巻きのご令嬢の二人は、手にしている扇子を今にも叩き折りそうな勢いでキレている。
「たかが伯爵の娘が生意気なのよ。前から気に入らなかったわ。たかがハーブくらいでファルマの女神って新聞で取り上げられていたし。大したことしてないのに周りが持ちあげてしまったせいで勘違いしちゃったのかしら?」
エスカ様が眉をつり上げながら、私と同様に扇子で口元を覆って喉で笑う。
「由緒ある血筋を持つ私のお父様が、貧弱な田舎の商会と取引してあげているの。感謝して欲しいわ。お父様に言って、取引を今すぐやめてあげても良いのよ? たかがハーブをうちで買ってあげているのだから。貴女だって困るでしょう」
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前回の襲来により、商会の従業員さん達からはグロム様との契約を打ち切りにして欲しいという話も出た。
侮辱された相手とは対等に仕事はできないと。
ただ、あの時はグロム様ではなくエスカ様が悪いので契約は続行することで話が纏まった。
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