追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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俺の腕に閉じこめて、誰にも見せたくないな2

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 ――何事もないのが一番なんだけど。


 そう思っていると部屋をノックする音が届き、私が返事を促せばコルタと同様に扉を開いてライが現れた。
 ライも正装をしているのだが、やっぱり高貴なオーラがある。
 私は高価なドレスを纏って動きが固いけど、ライは普段着のように落ち着いていた。


「……」
 ライは目を大きく見開くとそのまま動かなくなってしまう。
 彼の視線の先には、私がいる。


「ライ?」
 私が首を傾げて彼に手を伸ばしかければ、ライが私の事を抱きしめた。


「えっ!?」
「びっくりした。あまりにも綺麗だったから。俺の腕に閉じこめて、誰にも見せたくないな」
 ライは私を抱きしめながら熱を含んだ声音で告げれば、甘い台詞が私の耳朶に届き体温が一気に上昇していく。
 マラソン後のように鼓動が早くなり、私は顔が熱くなっていた。

「わ、私じゃなくてライに貰ったドレスが綺麗なんだよ」
 平常心を装いたかったが、取り繕うことも出来ず台詞がどもってしまっている。


「ドレスありがとう」
「どういたしまして。気に入ってくれたかな?」
「うん。飾ってずっと見ておきたいくらいに素敵なドレスだわ。戦闘力が高くなりそう」
「待って。本当に待って。最後おかしいよ、ティア! さっきも戦闘服って言っていたし。せっかく良い雰囲気なのに物騒だよ」
 お兄様の叫びにライが私から身を離した。


「ティア、リストの前で戦闘服発言しちゃったのか?」
「しちゃった」
「ライも聞いた事があるのかい? なら、ツッコんでよ」
「ツッコミ……こういうティアも好きだし。ティアのことも最初と性格変わったと思うけど、リストも大分変ったよな」
「僕も思ってなかったよ。ツッコまずにはいられないんだ。僕の後を着いてきていた可愛いティアが! うん、まぁティアが元気なら良いけど。それより、ライ。もしかして時間かい?」
「あぁ、そうなんだ。迎えに来た。さぁ、行こうか」
「うん」
 私が頷くとライが微笑んだ。














 さすがは大国ファルマ。城の大広間もリムスやエタセルとは比較できないくらいに広々としていた。
 白を基調とした壁は金と銀の細工の装飾が施され、天井から太陽のように明るく私達を照らしてくれているシャンデリアはファルマの国花を模している。


 会場ではグラス片手に談笑したり、食事を楽しんでいる人々の姿も窺え、招待客も東大陸などの他大陸からも多く訪れているようだ。


「ライナス様のお相手はやはりティアナ様だ」
「だから、俺のエスコート役は断られたのか……リスト様から妹にはもうエスコート役が決まっていると返事が来たが……」
「親密だと噂はあったけど、そうなのかしら? 悔しいけどお似合いだけど」
「絵になる二人よね。あのドレスも贈り物よ、きっと。ドレスの質からわかるわ。寵愛の深さが」
 会場のあちらこちらから耳に入ってくる言葉に対して、私は目立つのはライが隣にいるからだろうなぁと思った。


 私の隣にいるライは一切気にせず、レイにエスコートされているメディと話をしている。
 メディのドレスは、彼女の髪の色と合う深い海色のドレス。
 腰から下の生地には蔓と花を宝石で模しており、薬草学が好きな彼女のイメージ通りだ。
 メディのドレスもライからの贈物。


「メディ様もご回復されたようだな」
「えぇ、本当に良かったわ。彼女の薬草学の才はとても素晴らしいものです。わが国でも誇るべきものですもの」
「今、ティアナ様と共にエタセルに滞在しているとか?」
「そうなのか。初めて聞いたよ。だから、レイガルド様がエスコート役なんだな」
「そういえば、リスト様がレイガルド様の妹君のエスコートをしていたが、お二人はそういう仲なのだろうか」
「リスト様って誰とも噂にならなかったよな。俺は謎の人って印象なんだが」
 メディ達についての話が聞こえてくるが、肯定的な意見ばかりでほっとする。
 ちょっと気になったのは、後半聞こえてきたお兄様が謎な人という台詞。

 お兄様、謎の人と思われているのか。


 ――静かだけれども、エスカ様はいらっしゃるかしら?


 私は会場内を見回して探すと一定方向から鋭い視線を感じた。
 そちらへ顔を向ければ、すぐに探し人を発見。


 おもしろくないと前面に押し出しているエスカ様が私を見ていたため、ばっちり瞳同士が絡み合った。










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