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少しずつ絡むそれぞれの恋模様1
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商会の仕事が休みなため、私は自室にて椅子に座ってファルマに滞在している商会の社員から私宛に送られた手紙を読んでいた。
商会のロゴが入った便箋には、丁寧な字で文字が綴られている。
『ティアナ様からご依頼された調査結果についてご報告いたします。
公爵令嬢であるエスカ様はメディ様よりも一つ年上の十八歳。
華やかな見た目の通りまま、家の名を使って自由に気にくわない人たちを貶めているいじわるなご令嬢とのこと。
父親のグロム様はライナス様の父上であるハーフィル様の弟君です。
グロム様は領地管理の他に香辛料などの輸出入業の会社を設立しており、うちでも取引がありました。経営状況などは今お調べしております』
手紙の内容は私が知りたかったエスカ様について。
商会に来た新聞記者さんから彼女とメディの話を聞いた私は、エスカ様のことを調べることにした。
記者さんにある程度は聞いたが、もう少し詳しく知りたかったため、商会の人にお願いすることに。
商会は最大の輸出国であるファルマにも支店を持っており、そこに滞在している社員に調査のお願いをしていたのだ。
「しかし、まさかうちの顧客だとは。世間って狭いわ」
私は便箋を畳んで封筒に戻すと立ち上がり奥にある机の引き出しにしまう。
そして、今度は机の上に置いてある封筒へと手を伸ばす。
水色の封筒は封蝋が剥がされているため、ペーパーナイフを使わず簡単に開くことが出来た。
手紙の差出人はライからで、このあいだ神殿での星を見ることが出来なかったため、誕生日プレゼントが欲しいとのこと。
プレゼントは物ではなく、ライの生誕を祝うパーティーで私をエスコートさせて欲しい旨が記されている。
それから、メディがパーティーに参加するかどうかのお伺いも。
まだ彼女に聞いてないから出欠席はわからないけど、どちらにせよファルマにはライの誕生日を祝うために向かう予定だ。
――メディはパーティーに出るのかしら?
ぼんやりと考えていると、私室をノックする音が聞こえたので入室を促す返事をする。
すると、部屋と廊下を繋いでいる扉が開かれ、現れたのはエプロン姿のメディだった。
「ティア。ケーキを作ったの。一緒に食べない?」
「食べたい」
私が即答すれば、メディがふわりと微笑んだ。
「メディって料理だけじゃなくてお菓子も上手だよねー」
私は立ち上がる机の上に手紙を戻し、すぐに扉の付近にいる彼女の元へ。
そして足を廊下へと踏み出した彼女と共に先に進み一階へと降りれば、爽やかな柑橘系の香りが漂ってくる。
ちらりと視界に入って来たのは、テーブルの上に置いてあったホールケーキ。
ケーキは少し濃い目のイエローのクリームが塗られ、その上にはスライスされたレモンが。
「料理もお菓子作りも好きなの。色々考えて材料を混ぜるのが好きなのかもしれないわ。薬草もそうだし」
「確かに薬草も薬を調合するために量るもんね。私、料理もお菓子も苦手だから羨ましいよ。食事作りもすごく助かっているし」
うちの料理はメディが中心になってやってくれている。
私もお手伝いをするけど、私がメインで行っているのは掃除やごみ捨てなどだ。
「さっそく紅茶をいれてくるね」
「あっ、じゃあケーキを切り分けておくよ」
メディはお茶を入れるために台所へと向かい、一方の私はケーキを切り分けるためにテーブルへと向かった。
お茶の準備が出来た私達は、椅子に座ってさっそくケーキを食べることに。
私とメディの間に挟まれているテーブル上には、切り分けたケーキと湯気が立っている紅茶が。
「美味しそう!」
クリームに覆われたケーキをフォークで一口サイズに切れば、生地に細かく刻んだドライレモンが入っているのがわかった。
口の中へとフォークを招くとレモンのさっぱりとした酸っぱさに交じり蜂蜜のほのかな甘さが広がる。
ケーキはクリームで覆われているけど、こってりとしたものではなくあっさりとしているものなので口どけが軽めだ。
「あー、美味しい。ほんと、メディの作るものは全部美味しいーっ!」
「ティアは美味しそうに食べてくれるから嬉しい」
クスクスと笑っているメディは、目じりが下がって嬉しそうだ。
「だって美味しいんだもん」
「あのね、ティア。聞きたいことがあるんだけれども、良いかな……?」
「いいよ」
私は紅茶へと手を伸ばしながら答えれば、メディの表情が少し強張ったように感じる。
「ねぇ、ティア。今度ファルマでお兄様の誕生日パーティーが開かれるよね。その……誰にエスコートをして貰うか決まっているのかな?」
「ライから誘われているんだ。誕生日のお祝いにって」
私には婚約者などの決まったパートナーが居ないので、大抵はお兄様がエスコート役を務めてくれていた。
まぁ、エスター様と婚約していた時は彼だったが。
あの二人は元気かな? 私が心配しなくても元気だろうけれども。
「そっか、良かった……」
メディは安堵の表情を浮かべる。
「どうかしたの?」
「……うん。その、私もパーティーに参加しようかなって思っているの。まだ怖いし行きたくはないけど、このままじゃ駄目だから……レイにエスコート役をお願いして勇気を貰いたいなぁって」
「レイ?」
「うん」
メディは顔を真っ赤にして瞳を潤ませながら頷く。
さすがにこれは誰がどう見ても彼女の気持ちに気づくだろう。
――レイってルナ様のことをエスコートするのかな?
今回はレイだけでなく、ルナ様も招待を受けているため兄妹で参加する予定となっている。
ルナ様とレイがペアと決まっているならば、お兄様にルナ様のエスコート役をお願いしよう。
「私、ティアみたいになりたいの」
「私……? 嬉しいけどあまりオススメはしないかな。私、ライにも言われたけど即行動派だから。お兄様を心配のあまりラシットの件で気絶させちゃったし」
「ティアは強いからティアみたいになりたい。さっそく明日、レイにお願いしようって思っているんだ」
「そっか、頑張って!」
「うん、ありがとう」
はにかんだメディが可愛いと思った。
お願いするのだってきっと勇気がいるだろう。
「メディがパーティーに参加するのって、ライはもう知っているのかな?」
「ううん、まだ。お兄様には手紙でお知らせしようかなって。ドレスの相談もあるし……私、痩せたけれども前のドレスは着られないから」
メディは最初にエタセルに来た時よりもかなり痩せて来ていて、大分すっきりしているため以前の服もぶかぶかに。
適度な運動や食事などの他に、ストレスの元であったエスカ様達と距離を置いていることも影響しているのかもしれない。
「ドレスかぁ。ライは喜んで選びそうだね。メディの事が大好きだから」
「お兄様はティアのこともリスト様のことも大好きですよ」
「えっ!?」
大好きという言葉に、私は声が裏がってしまう。
過剰な反応をしてしまったため、メディが不思議そうな顔で私の方を見ている。
「もしかして、お兄様と何かありましたか?」
「えっと……その……」
メディはライの妹なので、ちょっと言いにくい。
お兄さんに告白されましたって。
商会のロゴが入った便箋には、丁寧な字で文字が綴られている。
『ティアナ様からご依頼された調査結果についてご報告いたします。
公爵令嬢であるエスカ様はメディ様よりも一つ年上の十八歳。
華やかな見た目の通りまま、家の名を使って自由に気にくわない人たちを貶めているいじわるなご令嬢とのこと。
父親のグロム様はライナス様の父上であるハーフィル様の弟君です。
グロム様は領地管理の他に香辛料などの輸出入業の会社を設立しており、うちでも取引がありました。経営状況などは今お調べしております』
手紙の内容は私が知りたかったエスカ様について。
商会に来た新聞記者さんから彼女とメディの話を聞いた私は、エスカ様のことを調べることにした。
記者さんにある程度は聞いたが、もう少し詳しく知りたかったため、商会の人にお願いすることに。
商会は最大の輸出国であるファルマにも支店を持っており、そこに滞在している社員に調査のお願いをしていたのだ。
「しかし、まさかうちの顧客だとは。世間って狭いわ」
私は便箋を畳んで封筒に戻すと立ち上がり奥にある机の引き出しにしまう。
そして、今度は机の上に置いてある封筒へと手を伸ばす。
水色の封筒は封蝋が剥がされているため、ペーパーナイフを使わず簡単に開くことが出来た。
手紙の差出人はライからで、このあいだ神殿での星を見ることが出来なかったため、誕生日プレゼントが欲しいとのこと。
プレゼントは物ではなく、ライの生誕を祝うパーティーで私をエスコートさせて欲しい旨が記されている。
それから、メディがパーティーに参加するかどうかのお伺いも。
まだ彼女に聞いてないから出欠席はわからないけど、どちらにせよファルマにはライの誕生日を祝うために向かう予定だ。
――メディはパーティーに出るのかしら?
ぼんやりと考えていると、私室をノックする音が聞こえたので入室を促す返事をする。
すると、部屋と廊下を繋いでいる扉が開かれ、現れたのはエプロン姿のメディだった。
「ティア。ケーキを作ったの。一緒に食べない?」
「食べたい」
私が即答すれば、メディがふわりと微笑んだ。
「メディって料理だけじゃなくてお菓子も上手だよねー」
私は立ち上がる机の上に手紙を戻し、すぐに扉の付近にいる彼女の元へ。
そして足を廊下へと踏み出した彼女と共に先に進み一階へと降りれば、爽やかな柑橘系の香りが漂ってくる。
ちらりと視界に入って来たのは、テーブルの上に置いてあったホールケーキ。
ケーキは少し濃い目のイエローのクリームが塗られ、その上にはスライスされたレモンが。
「料理もお菓子作りも好きなの。色々考えて材料を混ぜるのが好きなのかもしれないわ。薬草もそうだし」
「確かに薬草も薬を調合するために量るもんね。私、料理もお菓子も苦手だから羨ましいよ。食事作りもすごく助かっているし」
うちの料理はメディが中心になってやってくれている。
私もお手伝いをするけど、私がメインで行っているのは掃除やごみ捨てなどだ。
「さっそく紅茶をいれてくるね」
「あっ、じゃあケーキを切り分けておくよ」
メディはお茶を入れるために台所へと向かい、一方の私はケーキを切り分けるためにテーブルへと向かった。
お茶の準備が出来た私達は、椅子に座ってさっそくケーキを食べることに。
私とメディの間に挟まれているテーブル上には、切り分けたケーキと湯気が立っている紅茶が。
「美味しそう!」
クリームに覆われたケーキをフォークで一口サイズに切れば、生地に細かく刻んだドライレモンが入っているのがわかった。
口の中へとフォークを招くとレモンのさっぱりとした酸っぱさに交じり蜂蜜のほのかな甘さが広がる。
ケーキはクリームで覆われているけど、こってりとしたものではなくあっさりとしているものなので口どけが軽めだ。
「あー、美味しい。ほんと、メディの作るものは全部美味しいーっ!」
「ティアは美味しそうに食べてくれるから嬉しい」
クスクスと笑っているメディは、目じりが下がって嬉しそうだ。
「だって美味しいんだもん」
「あのね、ティア。聞きたいことがあるんだけれども、良いかな……?」
「いいよ」
私は紅茶へと手を伸ばしながら答えれば、メディの表情が少し強張ったように感じる。
「ねぇ、ティア。今度ファルマでお兄様の誕生日パーティーが開かれるよね。その……誰にエスコートをして貰うか決まっているのかな?」
「ライから誘われているんだ。誕生日のお祝いにって」
私には婚約者などの決まったパートナーが居ないので、大抵はお兄様がエスコート役を務めてくれていた。
まぁ、エスター様と婚約していた時は彼だったが。
あの二人は元気かな? 私が心配しなくても元気だろうけれども。
「そっか、良かった……」
メディは安堵の表情を浮かべる。
「どうかしたの?」
「……うん。その、私もパーティーに参加しようかなって思っているの。まだ怖いし行きたくはないけど、このままじゃ駄目だから……レイにエスコート役をお願いして勇気を貰いたいなぁって」
「レイ?」
「うん」
メディは顔を真っ赤にして瞳を潤ませながら頷く。
さすがにこれは誰がどう見ても彼女の気持ちに気づくだろう。
――レイってルナ様のことをエスコートするのかな?
今回はレイだけでなく、ルナ様も招待を受けているため兄妹で参加する予定となっている。
ルナ様とレイがペアと決まっているならば、お兄様にルナ様のエスコート役をお願いしよう。
「私、ティアみたいになりたいの」
「私……? 嬉しいけどあまりオススメはしないかな。私、ライにも言われたけど即行動派だから。お兄様を心配のあまりラシットの件で気絶させちゃったし」
「ティアは強いからティアみたいになりたい。さっそく明日、レイにお願いしようって思っているんだ」
「そっか、頑張って!」
「うん、ありがとう」
はにかんだメディが可愛いと思った。
お願いするのだってきっと勇気がいるだろう。
「メディがパーティーに参加するのって、ライはもう知っているのかな?」
「ううん、まだ。お兄様には手紙でお知らせしようかなって。ドレスの相談もあるし……私、痩せたけれども前のドレスは着られないから」
メディは最初にエタセルに来た時よりもかなり痩せて来ていて、大分すっきりしているため以前の服もぶかぶかに。
適度な運動や食事などの他に、ストレスの元であったエスカ様達と距離を置いていることも影響しているのかもしれない。
「ドレスかぁ。ライは喜んで選びそうだね。メディの事が大好きだから」
「お兄様はティアのこともリスト様のことも大好きですよ」
「えっ!?」
大好きという言葉に、私は声が裏がってしまう。
過剰な反応をしてしまったため、メディが不思議そうな顔で私の方を見ている。
「もしかして、お兄様と何かありましたか?」
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