追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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エスカ様ですか…?2

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 ライとお別れをした後、私は仕事のために真っ直ぐ商会へと向かった。
 時々、お兄様に「ティアって、商会はお手伝いって話じゃないっけ?」と尋ねられるくらいに、私は経営の根本を担い始めている。
 私としては成果が目に見えるのが楽しいから、全く問題はない。

 ありがたいことに商会も大きくなり、人員も増員したり支店を増やしたりと大忙しだ。
 けれども、それでエタセルの土台が強固されるかと問われれば、ちょっと話が違ってくる。


「んー……国の許可は下りたんだよなぁ。後はみんなと話し合いかな」
 私は手にしている書類を眺めながら呟く。


 書面に記載されているのは、神殿裏の調査許可証。
 神殿周りも神殿も国が管理をしているのだが、ハーブが生えているため採取に訪れる民がいる。
 エタセルの民ということで国は自由にさせているんだけど、神殿裏はまた話が別だ。

 元々、禁足地というだけあって、とてもデリケートな問題。
 そのため、一応管理者である国に尋ねてみたのだ。


「神殿と温泉、それから湖。絶好の癒し空間なのよね。エタセルのために使えると思うんだけれども……ライに相談したかったんだけどなぁ」
 手紙で相談しようと思っていたらライがエタセルに立ち寄ってくれたんだけど、ラシットの問題があって話が出来なかった。
 そのため、私は一人で答えが出ず悶々としている。


 メディが来てくれたので、ハーブを絡めた国おこしをしたい。
 エタセルでしか味わえないものや買えないという付加価値が付けられるものを見つけなければ!


「まぁ、それがすんなり答えが出ないから難しいんだけど」
 私が溜息を零し出せば、部屋をノックする音が届いたため書類を机の上に置き「どうぞ」と入室を促す返事をした。
 すると、「失礼します」と入ってきたのは、事務員のミールさん。


「ティアナ様。地元の新聞社の方がいらっしゃっています。ラシットの騒動について記事にしたいため、お話を伺いたいそうですよ」
「どうして私なのかしら? 私はラシットを捕まえただけなのに」
「ティアナ様が捕まえてくれたお蔭で被害が食い止められたんですよ。しかも、ワクチンを持っていたから救われた命もあるんです。みんな、ティアナ様には感謝でいっぱいなんですよ。ハーブのこともそうですし、ティアナ様がいらして下さったお蔭で色々エタセルは良い方向に変わっています」
「私一人では出来ないことだったし、みんながいたからこそだと思いますよ」
「ティアナ様の力が大きいですよ。みんな、ティアナ様には王妃になって欲しいって言っているんです」
 王妃という言葉に、私はライの顔が浮かんだ。


 ライのことをちゃんと考えないと……まさか、ライが私のことを好きでいてくれたなんて気づかなかった。
 いつも甘えて頼りになる存在だ。それはお兄様も同様だろう。
 ライにお手紙で色々相談しているし。


 こうして改めて考えてみると、兄妹揃ってライにはお世話になっている。


「ティアナ様……?」
 ミールさんが不思議そうな顔をして首を傾げている。


「あっ、ごめんなさい。少しぼーっとしていました」
「お疲れですよね。今日、お見送りでしたし。取材はお断りしますか?」
「受けます。地元の新聞社の方ですし、わざわざ来て貰ったので。応接室に案内して貰っていいですか?」
「畏まりました」
 ミールさんは一礼を取ると部屋を出た。



 私は机の上にある書類を片付けると、執務室を出て応接室へと向かう。
 応接室の扉をノックし、入室すれば腕に腕章を付けたベレー帽をかぶった人とカメラを首から下げている人の姿が目に入る。
 二人共、ソファに座り私を視界に捉えると立ち上がった。


「ティアナ様。お時間頂きありがとうございます」
「いいえ、どうぞお掛けになって下さい」
「失礼します」
 椅子に座ったのを確認すると、私も反対側に腰を落とす。

「ラシットの騒動について関係者に取材をお願いしているんです。それで、ティアナ様にもお伺い出来ればなぁと。ファルマの王・ライナス様の妹君であるメディ様も治療にあたって下さったと聞いたのですが、メディ様もご一緒にお話をお伺いすることは可能ですか?」
 メディに聞いてみないことにはまだ何とも言えない。

「あの……メディ様は人が苦手ですか?」
「メディと面識が?」
「いいえ。俺達、新聞記者達の間ではエスカ様達とメディ様の件は有名ですから」
「エスカ様ですか……?」
「えぇ。実はメディ様が公爵令嬢のエスカ様達にいびられていたんです。エスカ様はライナス様達の従妹にあたる方ですね」
「従妹……」
「えぇ、そうですよ。ファルマではライナス様の婚約者候補ですね。もし、婚約者になったら、メディ様はお可哀想ですよ。自分をいびった相手が義理の姉になる可能性があるんですから」
 婚約者になる可能性は少ないと思う。
 ライがそんなことを許すはずがないというのが一番の理由で。

 ライの生誕を祝うパーティーにエスカ様は参加するだろうから、その前に敵を知るというわけではないが相手の事を知りたい。
 メディはパーティーに参加するかはまだわからないけど、ライの誕生日をお祝いするために一緒にファルマに向かうのは決まっている。
 せっかく、メディも良い方向に流れが来ているのに邪魔されるわけにはいかないのだ。

「エスカ様のこと詳しくご存じですか? もし良かったら、私に教えて頂きたいのですけれども――」





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