追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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ティアのことが好きだよ1

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「あの……レイ?」
 レイガルド様が私を抱き締めたまま離してくれなかったため、私は彼に声を掛たんだけれども全く反応がない。
 その間にも、「リスト様、しっかりして下さい!」とお兄様を呼ぶ声がいくつも届いてきて私の不安を煽っていく。

 お兄様が気絶した時に周りの人が咄嗟に支えてくれたみたいだから、頭を打つことはなかったと思うがやはり心配で仕方がない。
 お兄様が倒れた原因は私がラシットに噛まれてしまったせいだし。


「おい、レイ。ティアナの傷を見るから離せ」
 私達のすぐ傍から掛けられた声に対して、私とレイがほぼ同時に右手に顔を向ければコルタの姿があった。
 彼の隣には救急箱を抱えたメディの姿がある。

 ――メディ!

 コルタ達の登場でレイが私を強く抱き締めていた力が弱まったため、私は彼の腕の中からすぐに逃れる。
 メディがレイのことを気になっていたから、その事が頭に過ぎったのだ。


「まだ俺達にはやらなければならない事が山ほどあるんだ。行くぞ」
「……そうだな」
 コルタに肩を叩かれたレイは、メディの方を見ると「ティアの治療を頼みます」と言い残してコルタと共に去って行く。
 メディは今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、レイの背中を追っている。


 彼女の表情を見て、私が唇を開こうとすれば「ライナス様。リスト様は大丈夫なんでしょうか?」という声が聞こえ、私は意識をそちらに向けた。
 担架に乗せられているお兄様の周りを不安げな表情を浮かべている村人が囲んでいる。村人に交じりながら、白衣を身に纏っているライの姿が。


「お兄様」
 お兄様の睫毛は伏せられたままだ。
 私がお兄様の元へと向かおうと足を踏み出せば、がしっと手を掴まれてしまう。


「ティアはまず自分のことを。傷の洗浄と消毒をしましょう。大丈夫ですわ。リスト様なら、お兄様が付いておりますので」
「でも……」
「ティアも怪我人なんですよ? 傷口が化膿してしまったり、感染症を引き起こす可能性もあります。ですから、今は薬師である私の指示に従って下さい」
 確かにメディの言うとおり傷の手当てをして貰った方が良いかもしれない。

 お兄様が目覚めた時に、傷口に血が固まっていたらお兄様がまた倒れてしまうかもしれないし。
 それに、張り付いた血もちょっと気持ち悪いので洗い流したい。

「わかった。傷の手当てお願いしていい?」
「勿論ですわ」
 メディに促され、私は集会所の中へと向かった。












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