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家事能力が高い国王様2

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「すごいね。ファルマではハーブが密接って言っていたけど、石鹸も家庭で作るなんて」
「すごいのかはわからないな。俺達はこれが子供の頃からずっと普通だったから。エタセルはハーブの生産地の一つだから、もしかしたらこっちにもハーブを使用した独自のものがあるんじゃないか? ハーブって使用方法が多岐にわたるから」
「え? ハーブってそんなに色々使えるの?」
「使えるよ。例えばソープワートは名前の通り洗浄に用いられるし、タンジーは防腐作用があるから死体保存に使っていた国もある」
 私にとってはハーブはお茶や料理という印象だった。
 香水の原料にもなるのは知っていたけど、他にも色々使われているのは知らない。


 エタセルにしかないハーブも沢山あるから、それを利用して……頭の中で何かがひらめきそうな予感がしたので、私は顎に手を添えてしばし思案する。


 エタセルはハーブが名産。なら、ハーブを利用して石鹸のように何か商品を作ってみてはどうだろうか。
 原材料は全てエタセル産の物で。


 ――香水とかかな? んー、でも香水は結構よく見かけよなぁ。


 薬草に詳しい人に話を聞きながらアイデアを出しあった方が良いのかもしれない。私だけではどうしても偏ってしまう。



「ティア?」
 急に私が黙ってしまったのか、ライが不思議そうにこちらを見詰めている。


「ねぇ、ライ。ファルマで薬草学に詳しい人っているかな? 商会でエタセルの推しになる新商品を作りたいの。軌道に乗れば、雇用も増えると思うし。心当たりがあるんだけど、神官様だから……」
「何人か知っているよ。いいよ、紹介してあげる」
「ありがとう」
 私は嬉しさのあまり腕を伸ばしてライへと抱きつけば、一瞬彼の体が強張った気がする。
 だが、すぐに緩んで私の体に彼の手がまわされた。


「新しいことに挑戦するたび、ティアはすごく生き生きするよな。そういう所、好きだよ」
「……えっ!?」
 顔を上げれば、ライの真剣な瞳と交わってしまい頬が熱くなるのを感じた。


 ――好きって性格的なことなのだろうか。それとも? 


 どっちだと思う? お兄様っ!? と、お兄様の方へ顔を向ければ、すやすやと眠っている。



 ライは揺れることなく真っ直ぐ私の方を見詰めていて、私が知っているライではないみたい。
 なんというか、男の人なんだなぁと過ぎる。いや、最初から男の人だったんだけど……


 お互いが密着しあいっている上にがらりと一変した空気に対して、私の心臓が今まで感じたことがないくらいに早鐘になってしまっている。
 血液の循環が良好になりすぎて、じわりと背中に汗が。



「んー……ティア」
 突然、割って入るように聞こえてきたお兄様の台詞に、私とライは慌てて身を離す。
 お兄様の様子を探るために体を向ければ、お兄様はすやすやと寝息を立てて眠っていた。



「ティア、無理しちゃだめだよ……」
「お兄様、なんかごめん」
 どうやら私は、お兄様の夢の中でも無茶しているようだ。


「ティア。さっきの話の続きだけれども、薬草学に詳しい人で一番推薦するのはメディだ」
 メディ様とはライの妹君だ。
 たしか、最年少で薬草師として最高位の称号を手に入れた治癒魔術師だと聞いている。
 今は部屋に引きこもって誰にも会わない生活をしていたはず。



「メディ様と直接お話をしてもいい? 勿論、絶対に無理はさせない。駄目ならすっぱり諦める」
「ティアならメディを救ってくれるかもしれないな。俺は王として即位し、自分のことで精いっぱいでメディが傷ついているのに気付けなかった。大切な妹なのに、救ってやることが出来ない」
 ライは眉を下げ、泣きそうな表情になってしまっている。
 きっと彼もメディ様の件を責めているのだろう。



 ライが妹のことを大切に思っているのは知っていた。
 お土産などを買ったりしていたから。
 だから、彼の気持ちが痛いほどわかってしまうので、私はかけてあげる言葉が見つからず。


 ただ静かに腕を伸ばして彼の手を握り締めれば、ライが私の二の腕を掴み、彼の方へ引き寄せると抱き締めた。


「暫くこうしていていいか……?」
「うん」
 私は子供をあやすように、彼の背中をトントンと撫でた。





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