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家事能力が高い国王様1
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不思議な神官様と出会った後。
私は商会に戻り、机の上に積まれた仕事を処理し、いつもよりも早めに仕事を切り上げてライとお兄様が待つ自宅へ。
オレンジ色に染まっている空の下を歩きながら家路につけば、最近やっと見慣れた自宅へと到着した。
いつもは静かに私の帰りを待ってくれている建物だけれども、留守番をしてくれている人がいるせいかちょっと違う。
家から伸びている煙突からは煙が立ち上り、窓を覆っているカーテンの隙間から明かりが零れている。
家に誰かが待っていてくれるのが久し振りだったため、ちょっと嬉しくなり私の足が勝手に速まってしまい、あっという間に玄関前に。
ライがペパーミントを植え替えてくれるって言っていたなぁと思い出し、右手にある家庭菜園コーナーへと顔を向ければ、植木鉢が二つ置かれペパーミントが植えられていた。
――わざわざ来てくれたのに、お手伝いばかりして貰っちゃったなぁ。
「ただいまー」
扉のドアノブに手をかけて引くと、「おかえり」という小さなライの声が届いてくる。
聞こえるか聞こえないかくらいに小さな声だったため、不思議に思ってしまったけど、すぐに理由がわかってしまう。
ソファで横になって眠っているお兄様に、ライがブランケットをかけようとしていた所だったから。
テーブルの上にはワインボトルが三本。それから空になった料理皿が乗せられている。
「珍しい。お兄様が酔っ払って眠ってしまっているなんて」
「いろいろあるからな。やっぱりエタセルとリムスでは環境が違うから」
「……そっか」
ライとお兄様は年が同じため、いろいろな相談ごとがあったのだろう。
お手紙のやりとりをしていたみたいだし。
仕事の愚痴一つ零さないお兄様だけれども、胸の中には色々とした葛藤もあったのかもしれない。
「ティア、お風呂沸いているよ」
「えっ、お風呂も沸かしてくれたの!? ありがとう」
「夕食も準備出来ているよ。お腹が空いているなら、食事を先にする?」
「お風呂に入ってからにしようかな。ゆっくり食べたいし、この時間からお風呂はかなり久しぶりだもん。いつも疲れて朝……じゃない! なんか、ごめんね。こっちが長旅で疲れたライを労わなければならないのに」
「気にしなくていいよ。家事は元々好きだし」
メイドや侍女など使用人が沢山いて彼らに身の回りの世話をして貰う立場だというのに、実は家事が好きって全く想像が出来ない。
廃太子時代に平民として暮らしていたと聞いたていたが、もしかしたらそれが関係するのかも。
「ラベンダーの精油を持ってきたから、アロマバスにしてみる? ラベンダーには鎮静効果があるからリラックスできるよ。ズレたバランスを戻してくれるから、安眠効果もあると言われているし。ちょうど牛乳を料理に使ったから残っているんだ」
「牛乳?」
「精油は水に溶けにくい。だから、牛乳や生クリーム等と混ぜるんだよ」
なるほど。確かに水と油では混ざらないけど、牛乳などを介して混ぜれば水に溶けやすくなる。
「ラベンダーの精油は、持参してきた救急箱に入れてあるよ。常備薬などが入っているから、必要な時は使って。二日酔いの薬は、早朝にリストが使いそうだけどな」
ライは苦笑いをしてお兄様へと視線を向けた後、奥にある棚へと向かう。
本が置かれている棚には、見覚えのないダークブラウンの箱が置いてあった。
きっとあれが持ってきてくれた救急箱なのだろう。
うちに救急箱がないから助かる。
「私の家、救急セットがなかったから助かるよ。でも、なんでラベンダーの精油が入っているの?」
「基本的に精油は直接肌に使用するのは刺激が強いから駄目なんだけど、ラベンダーの精油だけは別。ラベンダーは、やけどに使用できるんだ」
ライは箱を開けると青紫色の小瓶を取り出し、箱だけをテーブルへと置くと瓶を持ちキッチンへと向かう。
一度ライの姿が壁の裏に消えたかと思えば、彼は小型のブリキ缶を持って現れた。
「ティア、お風呂場に桶があったよな。使ってもいい?」
「勿論。あっ、持ってくるね」
私は一番部屋の奥にあるお風呂場に足を進めると扉を開けた。
そして浴槽の近くに置いてあった桶を手に取ると、ライが待っているリビングへと戻る。
私が桶をテーブルへと置けば、ライの手により牛乳が注がれていく。
次にライは精油の小瓶を手に取り蓋を開けて牛乳へとたらせば、甘いミルクの香りに交じり、ラベンダーの濃厚でどこかほっとさせる香りが鼻を掠めた。
「美味しそうだね」
「これは飲めないよ。お風呂あがりか寝る前に、ハーブと牛乳でハーブミルクティーを作ってあげる。はちみつ入りで」
「いいの!?」
こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。
お昼過ぎにライと出会ってからまだ数時間しか経ってないというのに、かなり手際が良い。
ライが家事の女神様に見えてしまう。
「あぁ、そうだ。ティアとリストにいくつかお土産を持って来たんだけど、お風呂に入るならこれを先に渡しておくよ」
ライは自分の荷物がある方へ向かうとリュックを開ける。
そして、中を漁り手にラッピングされた物を掴んだ。
「はい。ハーブで作った石鹸。ファルマでは石鹸も自分達が好きなハーブで作るんだ。お土産用の石鹸屋もあるんだよ」
「ありがとう」
私は受け取ると、鼻を近づけて香りを嗅ぐ。
薔薇のような華やかな香りと共に、どこかでフルーツの優しい甘さを感じた。
私は商会に戻り、机の上に積まれた仕事を処理し、いつもよりも早めに仕事を切り上げてライとお兄様が待つ自宅へ。
オレンジ色に染まっている空の下を歩きながら家路につけば、最近やっと見慣れた自宅へと到着した。
いつもは静かに私の帰りを待ってくれている建物だけれども、留守番をしてくれている人がいるせいかちょっと違う。
家から伸びている煙突からは煙が立ち上り、窓を覆っているカーテンの隙間から明かりが零れている。
家に誰かが待っていてくれるのが久し振りだったため、ちょっと嬉しくなり私の足が勝手に速まってしまい、あっという間に玄関前に。
ライがペパーミントを植え替えてくれるって言っていたなぁと思い出し、右手にある家庭菜園コーナーへと顔を向ければ、植木鉢が二つ置かれペパーミントが植えられていた。
――わざわざ来てくれたのに、お手伝いばかりして貰っちゃったなぁ。
「ただいまー」
扉のドアノブに手をかけて引くと、「おかえり」という小さなライの声が届いてくる。
聞こえるか聞こえないかくらいに小さな声だったため、不思議に思ってしまったけど、すぐに理由がわかってしまう。
ソファで横になって眠っているお兄様に、ライがブランケットをかけようとしていた所だったから。
テーブルの上にはワインボトルが三本。それから空になった料理皿が乗せられている。
「珍しい。お兄様が酔っ払って眠ってしまっているなんて」
「いろいろあるからな。やっぱりエタセルとリムスでは環境が違うから」
「……そっか」
ライとお兄様は年が同じため、いろいろな相談ごとがあったのだろう。
お手紙のやりとりをしていたみたいだし。
仕事の愚痴一つ零さないお兄様だけれども、胸の中には色々とした葛藤もあったのかもしれない。
「ティア、お風呂沸いているよ」
「えっ、お風呂も沸かしてくれたの!? ありがとう」
「夕食も準備出来ているよ。お腹が空いているなら、食事を先にする?」
「お風呂に入ってからにしようかな。ゆっくり食べたいし、この時間からお風呂はかなり久しぶりだもん。いつも疲れて朝……じゃない! なんか、ごめんね。こっちが長旅で疲れたライを労わなければならないのに」
「気にしなくていいよ。家事は元々好きだし」
メイドや侍女など使用人が沢山いて彼らに身の回りの世話をして貰う立場だというのに、実は家事が好きって全く想像が出来ない。
廃太子時代に平民として暮らしていたと聞いたていたが、もしかしたらそれが関係するのかも。
「ラベンダーの精油を持ってきたから、アロマバスにしてみる? ラベンダーには鎮静効果があるからリラックスできるよ。ズレたバランスを戻してくれるから、安眠効果もあると言われているし。ちょうど牛乳を料理に使ったから残っているんだ」
「牛乳?」
「精油は水に溶けにくい。だから、牛乳や生クリーム等と混ぜるんだよ」
なるほど。確かに水と油では混ざらないけど、牛乳などを介して混ぜれば水に溶けやすくなる。
「ラベンダーの精油は、持参してきた救急箱に入れてあるよ。常備薬などが入っているから、必要な時は使って。二日酔いの薬は、早朝にリストが使いそうだけどな」
ライは苦笑いをしてお兄様へと視線を向けた後、奥にある棚へと向かう。
本が置かれている棚には、見覚えのないダークブラウンの箱が置いてあった。
きっとあれが持ってきてくれた救急箱なのだろう。
うちに救急箱がないから助かる。
「私の家、救急セットがなかったから助かるよ。でも、なんでラベンダーの精油が入っているの?」
「基本的に精油は直接肌に使用するのは刺激が強いから駄目なんだけど、ラベンダーの精油だけは別。ラベンダーは、やけどに使用できるんだ」
ライは箱を開けると青紫色の小瓶を取り出し、箱だけをテーブルへと置くと瓶を持ちキッチンへと向かう。
一度ライの姿が壁の裏に消えたかと思えば、彼は小型のブリキ缶を持って現れた。
「ティア、お風呂場に桶があったよな。使ってもいい?」
「勿論。あっ、持ってくるね」
私は一番部屋の奥にあるお風呂場に足を進めると扉を開けた。
そして浴槽の近くに置いてあった桶を手に取ると、ライが待っているリビングへと戻る。
私が桶をテーブルへと置けば、ライの手により牛乳が注がれていく。
次にライは精油の小瓶を手に取り蓋を開けて牛乳へとたらせば、甘いミルクの香りに交じり、ラベンダーの濃厚でどこかほっとさせる香りが鼻を掠めた。
「美味しそうだね」
「これは飲めないよ。お風呂あがりか寝る前に、ハーブと牛乳でハーブミルクティーを作ってあげる。はちみつ入りで」
「いいの!?」
こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。
お昼過ぎにライと出会ってからまだ数時間しか経ってないというのに、かなり手際が良い。
ライが家事の女神様に見えてしまう。
「あぁ、そうだ。ティアとリストにいくつかお土産を持って来たんだけど、お風呂に入るならこれを先に渡しておくよ」
ライは自分の荷物がある方へ向かうとリュックを開ける。
そして、中を漁り手にラッピングされた物を掴んだ。
「はい。ハーブで作った石鹸。ファルマでは石鹸も自分達が好きなハーブで作るんだ。お土産用の石鹸屋もあるんだよ」
「ありがとう」
私は受け取ると、鼻を近づけて香りを嗅ぐ。
薔薇のような華やかな香りと共に、どこかでフルーツの優しい甘さを感じた。
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