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更科灰音

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第32話:引っ越し完了

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「真白様、家具のお届けに参りました」
今日は桜井さんじゃない。配送業者と思われる人数人だった。
桜井さんはあくまでも販売担当であって、配送や設置などを行う人じゃない。
業者が次から次へと家具を部屋の中に入れ、梱包を解き、組み立て、設置していく。
さすがに手慣れているのか2時間ほどですべての家具を設置して帰って行った。

自分たちで組み立てや設置を行ったら数日かかったかもしれない。
ようやくベッドで寝られるうれしさか、佳乃がベッドで転がっている。
佳乃はこの数日こたつで寝ていた。あたしは花子とベッドで寝ていた。
どうしても一番身体の大きい佳乃があぶれる形になってしまったからだ。
でも、今度のベッドは大きい。何ならもう一人増えても余裕なほどだ。
増える予定も増やす予定もないけど・・・

「お嬢様、今日からこちらに住むのですか?」
家具はそろった。必要な家電もある。電気ガス水道も使える。
ネットも使えるから仕事も出来る。炊事洗濯も可能。
今の家からこっちに持ってくる日用品もほとんど到着している。
夕飯で使う食器、お風呂で使うタオルやシャンプーなど、パジャマに明日着る服。
思いつく限り必要なものはある。あたしは大丈夫だ。

「佳乃と花子の制服とか勉強道具は?」
自分が直接使わないけど生活に必要なもの。
それらがそろっていれば問題ない。むしろ、無いのであれば今から取りに行けば良い。
向こうの部屋は今月いっぱいは契約しているわけだし、焦ることは無い。

「マスター。教科書が無い」
やはり忘れ物があったか。
「他にもあるかもしれないから一度向こうに戻りましょ」
タクシーに乗って元のマンションへ移動する。
花子の教科書と勉強道具をまとめた箱を探す。

「お嬢様、冷蔵庫の中身はどうしましょう?」
引っ越す予定があったからあまり中身は入っていないはず。
見れば調味料とか漬物やチーズなどが少々。無駄にはしたくない。
米びつの中にお米も残っている。
「これで何か出来る?」
さすがに佳乃でもこれだけの材料じゃ無理かな?
「そうですね。お米は全部炊いておにぎりにしてしまいましょう」
そう言うとさっさとお米をといでご飯を炊く。
炊飯器は新しく大きいのを買ったからここにあるのは処分する予定だった。
お湯を沸かして卵はゆで卵に、他の食材もおにぎりの具材として使う様だ。
炊き上がったらおにぎりを握る。手伝おうと思ったけど、足手まといにしかならない。
握っている間に次のお米が炊飯器にはセットされている。

仕方が無いので、花子と二人で不用品の整理を行う。
基本的に業者に頼んで買い取りと廃棄をして貰う。
なので、要るものと要らないものの山に分けるという作業を延々行った。
大きい家具は運べないのでメモ用紙に「要る」「要らない」と書いてテープで貼る。
最後に佳乃が炊飯器を要らないものの山に追加した。結局お米は3回炊いた。

冷蔵庫の中身はほとんど空になった。結果、20個ほどのおにぎりができあがった。
どうするのよコレ。あたしは頑張っても2個しか食べられない。花子だってせいぜい3個だろう。
すると15個残るわけだけど。ちらっと佳乃の顔を見る。涼しい顔をしている。
何も問題ありませんとそう顔に書いてある。

新居に持っていく荷物をまとめてタクシーを呼ぶ。
ようやく新居での生活が始められる。
佳乃は早速お風呂掃除を始めるし、花子も自分の部屋の整理を始めた。
あたしは仕事用のPCやみんなのスマホをひたすらWi-Fiに登録する。
そんな作業はすぐに終わってしまったので、やることが無くなった。
ベッドに横になってゴロゴロする。一人だと広すぎる。
お風呂掃除を終えた佳乃が呼びに来た。
晩ご飯の時間だ。今日の晩ご飯は大量のおにぎり。
掘りごたつの中心に大皿を置いて、そこにおにぎりが山積みになっている。
一つ手に取って食べてみる。中身はおかかだった。

「メイド、ツナマヨはどれ?」
花子はツナマヨが食べたいみたい。
「さあ?見た目では判別が出来ません・・・」
明らかに違うものはわかる。昆布の佃煮のヤツ。黒いのが見えている。
「メイドは技術は凄いけど、たまに使えない・・・」
おにぎりだけじゃなくて、ゆで卵も大量にある。
ゆで卵を食べようとして気付いた。
「佳乃、塩はどこにあるの?」
ゆで卵に振りかけて食べたい。
「すぐに探します!」
冷蔵庫や調味料入れを探すが見つからない。
「そう言えば、おにぎりを握るときに使い切ったんでした・・・」
なんと、塩が無いのは残念。
「醤油と酒とみりんはあるので、すぐに煮卵にします!」
煮卵って結構時間かかるよね?
うーん、ちょっとコンビニで買ってこようかな?
そういえばマンションの1階がスーパーだったはず!まだやってるよね?
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