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更科灰音

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第18話:利害の一致

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-side:吉野川-
そういえば、お嬢様は自分は以前はむさいおっさんだったと言っていました。
「おっさん?先輩が?こんなに可愛いのに?」
お嬢様にそっくりなリーゼロッテ、そしてお嬢様のSNSアカウントもリーゼロッテ・・・
これって偶然なのでしょうか?
「私の記憶では私が入社した時点で先輩はこの姿だった。むしろずっと変化していない・・・」
でも、見た感じでは小学生くらいですよね?
「そう言われてみると、なんか不思議ね。でも可愛いわよ?」
それには全く異論はありません。カワイイは正義です。

で、現在もお嬢様はそのゲームの世界の夢にうなされていると・・・
そして、私はシャーリーにそっくり。シャーリーは万能メイド。
おそらくは偶然じゃなくて、なんらかの理由があって今現在に至ってるんだろう。
だとすると、シャーリーが求められている。
「シャーリー、りんごが食べたいんだよ・・・」
りんご?買い置きはなかったはず。
「リーゼちゃんはりんごが好きなのよ。お菓子を作るときもりんご味だったわ!」
今すぐりんごを買ってきます!

-side:安藤-
メイドちゃんはりんごを買いに行っちゃったし、ここはグレイスとして添い寝が必要なシーンね!
これはやましい心ではなくて医療行為の一環なのよ。必要な行為なのよ!

ヌギヌギ、ゴソゴソ・・・

お邪魔します・・・
「グレイスぅ・・・」
いきなり先輩が抱きついてきた。いや、先輩というよりもリーゼちゃんが?
まあ、それは些細な違いであって、私に取ってみればどうでもいいことだ。
どっちにしてもカワイイことには変わりがないわけだし!
考えてみると、最近の先輩の言葉遣いや行動は以前とは少し違う気がした。
なんていうか、見た目のリーゼちゃんに寄ってきている感じ?

「戻りました」
メイドの子が帰ってきた。大量のりんごと共に・・・
「あなたはなぜベッドの中に居るのですか?」
もちろんグレイスとしてリーゼちゃんに添い寝をするためよ。
こんなにうなされているんだから、ぎゅっと抱きしめてあげることが必要だよね?
私はグレイス、私はグレイス、私はグレイス・・・
「緊急事態なので大目に見ましょう」
メイドちゃんが怖い目で睨んでる。

「りんごは普通に剥けば良いのでしょうか?」
確か剥かないで、4つに切って食べていたはずよ。
すぐにりんごを持ってきてくれた。
「お嬢様、りんごです」
朦朧としている先輩、いやリーゼちゃんの口元にりんごを近づけると、手に取って食べ始めた。
そして、食べ終わると再び眠りにつく。

ねえ、どう思う?私が知ってる先輩とはだいぶ違うんだけど?中身が完全にリーゼちゃんよ?
「私はリーゼロッテにあったことが無いので何とも言えませんが・・・」
まあ、そうよね?
「問題なのはお嬢様の体調です。この熱は普通の病気ではない気がします」
うーん、リーゼちゃんが原因なのかな?
「おそらく、この身体に二人の意識が入っているのがまずいのではないでしょうか?」
だとするとリーゼちゃんを先輩の身体から追い出せば・・・
「そんなことが可能なのでしょうか?そしてその結果お嬢様はどうなるのでしょうか?」
リーゼちゃんの成分が無くなると元の状態に戻るんじゃないかな?
「お嬢様がむさいオッサンになるということでしょうか・・・」
うっ、それは嫌だわ。せっかくこんなにかわいいのに。
「そういった意味では元に戻らない方が良いのでは?」
そうよ!メイドちゃんの言う通り!このままリーゼちゃんとして定着すればいいのよ!
「どうやら利害が一致したようですね。もともとお嬢様に入っていたオッサンには気の毒ですが・・・」
あとはどうにかして、先輩とリーゼちゃんを融合するなりなんなり・・・
「逆に、その先輩を追い出すとか・・・」
それはダメよ、私が仕事で困るもん。先輩の仕事の知識は必要なのよ!
「それでは、やはり融合の方向で検討しましょう」
そうねなるべくリーゼちゃん成分を多めにして・・・
「カワイイは正義ですからね!」

でも、具体的に何をすればいいのかな?
まずは熱を下げる?バファリンでいいと思う?
「いえ、ここは伝統的な方法である、『人肌で温める』では無いでしょうか!?」
そう言いながら、メイドちゃんは服を脱ぎ始めている。もしや、裸で添い寝!?
確かに、その方法は有効かも知れない。リーゼちゃんはよく色々な娘と添い寝してたから。
「なんですと!?」
正確に言うと、リーゼちゃんのベッドにこっそりと忍び込む娘が多かったんだけどね。
「しかし、お嬢様の汗まみれになるのは問題無いのですが、お嬢様が不快そうな顔をしていますね」
汗は拭いてあげないと悪化しそうだし、お風呂に入る?
「シーツも交換しましょう」

堅パンと塩スープって手に入るかしら?
「調理師の免許はあるのでレシピさえわかれば出来るかもしれません」
とにかく硬いパンなのよ。それと塩味のスープなんだけど・・・
「偉く質素な食事ですね・・・」
一番安い食事ね。最初はお金がなくてそれしか食べられなかったみたいなの。
でも、お金に余裕が出来てからも気に入ってよく食べてたわ。
「ドイツパンのようなものでしょうか?」
じゃがいもや雑穀を混ぜたパンで・・・当時の資料がどこかに無いかな?
「大丈夫です、大体わかりました。塩スープの詳細は?」
うーん、クズ肉やクズ野菜で出汁をとって塩で味付けとかだったような?
世界観的には中世ヨーロッパというか王道RPG的な感じの世界よ。
「なるほど、剣と魔法の世界ですね?」
そうそう、そんな感じ。

「では、食事の準備をしますので、安藤さんはお嬢様の入浴をお願いします」
なんか物凄く悔しそうな顔をしてるけど、私じゃ食事の用意が出来ないしね。
「くれぐれも変なことはしないでくださいね?」
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