白と黒

更科灰音

文字の大きさ
上 下
2 / 73

第2話:転生

しおりを挟む
朝、目を覚ます。いつもと同じ天井。俺が一人暮らししているマンションの部屋。
ベッドの脇に置いてあるメガネを取って装着する。つもりだった。
メガネが無い。寝てる間に落としたか?床にも転がっていない。
それどころか眼鏡をかけていないのに物がよく見える。
メガネを掛けたまま眠ってしまった?そんなことはない。
とりあえず顔を洗ってコーヒーでも飲もう。頭をシャッキリとさせたい。

ベッドから起き上がりすぐに気付いた。視界がいつもと違う。
上を見ると天井が高く見える。
家具の配置も昨日までと変わらないはずだが視点が低い。
違う景色に見える。なんだ?部屋が大きくなった?
違う。自分が縮んだんだ。そんなバカな?
自分の身体を見る。手足が小さいというか細いというか。
この視界にはちょうど釣り合いが取れているサイズ。

昨日までの俺は身長は172センチだった。
それが今は高さ110センチの本棚の天板がギリギリ見える程度。
だとすると120センチそこそこだろう。
それに肌の色が白い。色白とかそういうレベルじゃない。病的に白い。
昨日まではごくごく一般的な日本人の色だった。

とにかく確認だ。
この部屋には鏡がない。まずは洗面所だ。
ドアのノブが高い。電気のスイッチも。
洗面所で鏡を見る。誰だこれ?俺なわけだが。でも、誰だこれ?
白髪というか銀髪というか?プラチナブロンド?
昨日までは黒髪だった髪を染めたこともない。
それに目の色が赤。欧米人的な青い目でも緑の目でもない。
本当に赤。ルビーのような色。
どこの国どんな人種でもこんな色の目はしてないのでは?
それに髪の色だってこれは普通じゃない。
茶髪とか金髪くらいならわかる。銀色ってあり得るのか?
コスプレ用のズラかと思ったが取れない。地毛だ。
元が黒髪で、こんなにキレイに染まるもんか?
一本引っ張って抜いてみた。痛かった。根元から同じ色。
染めてるわけではなさそうだ。
それよりも顔。自分が若返ったわけではなさそうだ。
全くの別人の顔。本当に誰なんだよこれ?
ただ、どこかで見たことある気がするな・・・
アニメかゲームのキャラか?ちょっとすぐには出てこないな・・・

少なくとも俺じゃない。俺は32歳のオッサンだった。
しかも彼女いない歴イコール年齢のいわゆる魔法使い。
まあ、この場合の魔法使いとは実際に魔法が使えるわけではない。
もてない男の比喩表現的なものだ。魔法が本当に使えるのなら苦労はしない。
ここはゲームの中でも異世界でもない・・・よな?この姿だと否定できん・・・

それなのに鏡に映ってるのは本当に魔法が使えそうなアニメやゲームのキャラクター。
むしろこんな姿のやつ、どこの国にもいないと思うが。まさにお人形。
いわゆるイケメンとは違って中性的な顔立ちだが、この顔ならモテるだろう。
とはいっても見た目まだまだお子様だ。せいぜい10歳になったかどうか程度だろう。
将来はかなり期待できそうだ。芸能事務所にスカウトとかされてもおかしくないレベルだと思う。
ベタだがほっぺたをつねってみる。痛い。夢じゃない。
そもそも考えれば、さっき髪の毛を抜いた時も痛かった。まったく無意味な行動だった。

とすると、確認しなきゃいけないのはこの身体は俺のものなのか?ということ。
実は他の誰かと精神だけ入れ替わっているのかもしれない。
だとすれば俺の身体にこの身体の持ち主の精神が入っているはず。
お子様がいきなりオッサンになってものすごいショックを受けているだろう。

持ち物を確認しよう。財布だ。運転免許の写真。
どういうことだ?免許の写真は確かにこの顔だ。
しかも名前も橋本真一。俺の名前だ。
どう見ても橋本でも真一でもないだろう。もっとカタカナ風な名前の顔だ。
年齢も32歳。イヤイヤイヤ、どう見ても小学生だろ?

そういえば今日は何月何日だ?会社は?
俺の記憶では今日は11月1日。昨日はハロウィンで渋谷で騒ぎがあった。
テレビをつける。時間は7時5分。いつも見ているニュース番組を確認。
日付は問題ない。ニュースでもハロウィンのことを言ってる。
この辺は俺の記憶と差異はない。先日起きた事件の続報とか特に違和感は感じない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...