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その三十分前
しおりを挟む前の晩後輩に頼まれた実験結果の確認をしに大学へいかなくてはと、眠い目をこすりつつ目覚めの珈琲を沸かしているところだった。
普段来客などありはしない自宅アパートのインターホンが連打され、何事かと出てしまったのがそもそもの間違いだったのだ――。
「ちょっとユウキ!いつになったらあたしのこと迎えに来てくれるのよ?もうあたし待ちくたびれたんだから!」
いきなりやってきた上に、部屋に上がり込んで喚き散らしたミチルは激しく俺を混乱させた。
「は?何いってんだ?オマエいきなりやって来て訳わかんねえよ!てか、なんでこんなところにいるんだよ?!」
「いつまで学生やってんのかって聞いてんのよ?!」
「そんなことオマエには関係ないだろ!」
「あるわよ!そろそろうちの両親にもあってもらわなきゃ困るわよ!!」
俺は耳を疑った。まさか彼女のなかでまだ俺達は付き合っていることになっていたなんて思ってもみなかった。
大きくため息をはいて寝癖頭をかきむしる 。
「勘弁してくれよ…」
「あ!まさか他に女でもできたんじゃないでしょうね!?だったら許さないんだから!!」
ミチルは近くにあったクッションを投げつけ、それは見事に俺にヒットし足元に落ちた。
ミチルが卒業するまでの間、俺は他の恋路をさんざん邪魔され、結局誰とも付き合えなかった。 その後、何人かとは付き合ったが、ドク論も忙しかったので今はフリーだ。
しかし、もしこの世に女がコイツ一人だったとしても、俺は絶対に結婚なんてしたくないし、しないと言い切れる。
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