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始まりは突然に
しおりを挟む俺は伊藤ユウキ。
現在大学院で獣医学専攻、博士課程(ドクター)四年目の二十七歳―――男。
趣味はドライブと読書で、嫌いなものは頭の悪い女。
自分で言うのもなんだが、昔から頭も外見も人並み以上だったので 、それなりにモテた。
獣医学部に現役合格で入り、国家試験も一発合格。その後は博士課程に進み、最近では博士論文もかなりイイ感じにまとまってきて、この分なら間違いなく博士号も取れるだろうというところまできている。
そして春からは農林水産省に入省が決まっていて、まさに順風満帆というやつだ。
……それなのに、この状況はなんだ??
俺の足元には女が胸部と頭部から血を流して倒れている―――。
はっと我にかえり、慌てて女の脈を測るが拍動は感じられなかった。
―――これは…非常にまずい…。
◇
ことの発端はこの女が突如俺のアパートに現れたところから始まった。
不本意ながら女のことはよく知っていた。
名前は佐東ミチル。
ミチルは学部は違うものの、同じ大学の同級生だった。
当時ミチルは常に俺の彼女を気取り、周りを牽制しながらしつこく付きまとっていた。確かに軽率に手を出した自分も悪いが、お陰で学部生時代には他の女子と交流することもできず、面白くない日々を過ごす羽目になったのは苦い思い出だ。
獣医学部と違い、四年で卒業した彼女はその後東京のアパレル会社に就職したと聞いており、北国と東京に離れてしまえばもう会うこともないだろうと俺はほっとしていたのに…
それなのに、六年も経って今さらなぜ俺の前に現れたのか―――――?
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