Lara

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彼を取り戻すために

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一番初めの記憶は赤かった。

挿し貫く柔らかい感触、飛び散る暖かい血潮、その血液が地面に滴り落ちると共に地面から芽が出てきて伸び紅い花を咲かせる。

赤く塗れた純白の刀を抜くとばさりと舞う花弁。

その行為にただやらなければいけないという強迫観念ともう疲れた、何もやりたくない見たくない感じたくないという無力感が胸の内でぐるぐると衝突しながら渦巻いていた。

「私はね、空虚なんだよ。ただ求められて、存在させられて、ひたすらに役目を果たしていくんだ」

手のひらを見る。この手は白いけれども、驚くほどにたくさんの人々を浄化し、その度に赤く塗らして…………結局は花に変えてしまった。

目の前の彼らはただじっと私を……いや、不要と捨ててしまった記憶の中にある自分を見ている。ああ、そんなにも彼は慕われていたのか、自分のことだったはずなのに嫉妬してしまう。

彼もその関りを欲して、手を伸ばし、最後には切り捨ててしまったのだろう。
自分のものではない寂寥感が一目彼らを見た時から生まれてくる。

世界は

残酷だ

「私はもう、君たちの言う椿ではない」

ああ、とても辛い。

どうして

どうして私なんだ

私以外にもいっぱいいるではないか

なんで

こんなめにあわなければいけないの…………?

「私は『白神』、この世の全てを浄化し、白く染め上げよと望まれるべくして生まれたもの」

憎い

全てが憎い

私に願いを押し付けた者も

そんな願いを抱かせるまでした世界も

そんな世界でこの世に溢れる悲しみと苦痛を知らずして笑っている人も

それらを全て切り捨てなければならない私も

全ての苦しみを残して消え去ってしまった『彼』も

「さあ切られよ、全てはの望むままに」

憎い

憎い

憎い

ああ、





「白刀」

長年連れ添った美しすぎて、醜いくらいに白い刀を顕現して握る。
それは手によく馴染んで、だからこそ憎たらしかった。

切り捨てよ

世に蔓延る害悪を己を留める感情を不要な感傷記憶

おのが道にあるのは自己の役目のみ。その純潔なる白を乗せ、不浄なる世に巣食う害獣を切るのみ。

刀を地面に刺して世界を構築する。
ここは自らの神域であるが、最低限のものだ。浄化する時はおのれの役割を最大効率で果たせるようにいくつか神域の格をこの部屋でのみ上げている。

だが、今回ばかりは多大な力を使ってでも最も強い神域を作りたかった。

「「「「「ッ―――!?」」」」」

彼らも一瞬にして作り変えられた世界に驚いたようだ。思わず頬が緩む。

白い地面はそのままで部屋の括りはなくなり、空には美しい星空が広がり宙にいくつかの惑星が浮かんでいる。煌々とついていた明かりはささやかながらに輝く星の明かりに変わり、私たちに薄く影を落としている。

遠くでは星が堕ち、巨大な樹の影が映し出されていた。

始まりの記憶の時の一回だけこの世界を構築したのを覚えている。反対に言えばその時以外では構築しなかったのだが…………

悲しいほどにその時よりも白い星が増えていた。あの星一つ一つに魂が乗っていると知っている私からすればそれほど命を儚く感じることはない。

目の前の彼が愛した彼らもあの光の一部になるのだろうか。

「では、浄化を白の祝福を始めようかやろうとしようか

私は今笑えているだろうか






ねえ










わたしをたすけてころして







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