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彼を取り戻すために
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しおりを挟むそれからは慌ただしく時が過ぎた。学園の生徒たちの協力もとり、各家と連携をとった。国を脅s…………国とも話をして外国とも連携。あの厄介な教団を抑え込めるならと(裏では貸し借りの取引もあっただろう)喜んで手を貸してくれるようになった。
神龍の方でもそれぞれのこの世ならざる者と対話し、協力を取り付けたらしい。他の者たちも危機感を抱いていたらしい。二つ返事で了承したそうだ。
「それで、椿のいる場所が判明したんですって?」
「ああ、人の動きが活発なところでな。逆に違う場所に隠されたとしたらわからんが」
「椿がー…」
「ここに…」
「っ………」
学園と同じように山の奥深くにある。そこにも教団の拠点があるそうだ。
大樹たちも俺と同様に開いた地図のその場所を睨みつける。
その時風が吹き荒れて目を閉じた。
『なに、もう行くのか?我の準備は既にできておるぞ?』
現れたのは美しい角と尾を持った男。美しすぎる美貌を持った彼は人ではなかった。
「だが……」
『早く行かねば彼奴の意識は染め上げられるぞ?』
「っ………そう、だな」
俺は立ち上がって宣言する。
「もう十分に準備はできた。神龍もいる。なら行けるだろう、他の家も大丈夫だと連絡が来ている。行くぞ!」
待ってろよ、椿。
それぞれ車に乗り込み山の中にあるという教団の拠点へと向かう。
今回の要は俺たちだ。それこそ御曹司たる俺たちにやらせずに大人…………軍人とかにやらせたらいいと言われたが、それは神龍自身が否定した。
彼の者を取り戻せるのは深く繋がりのある者たちのみ。それ以外の者が行っても、地に沈むことだろう。と
神龍が言うには自衛隊を使うのなら後がない手負いの獣に成り下がる狂信者共に当てればいいとのこと。
俺たちのことは神龍が守るのだから自分たちの本領を発揮させろと大人たちに言っていたらしい。父が眉を下げて苦笑していたのがとても印象的だった。神龍を信仰し、深く関わってきたからこそだろうと思った。
教団の拠点までには道はない。隠されているからだ。なので車が通ることもできずに俺たちは徒歩で向かうことになる。
「来たか」
「やっほ~」
「遅いじゃない」
「………待ってた」
車を降りると風紀委員一同が待っていた。何故こんなところに
疑問が顔に出ていたのか夏屋川がふんと鼻を鳴らした。相変わらず小憎らしい男だ。
「俺の家は日本有数の警備会社だ。何故関わらんと思った」
「もー、永遠きゅん、素直に力になりたかったって言えばいいじゃ~ん」
「は?何を言っているんだ?」
「あ、これマジで自覚してないパターンだ……」
確かにやつの家は警備会社だ。だからそれもあり風紀に入っているちうのもあるだろう。そして神龍で言う手負いの獣と成り下がった狂信者共を討ち漏らして市街に降りていったら大変だ。自棄になってテロでも何でも起こされてしまったら面倒なことになる。
信者共を危険人物だからと国も監視していたようだが流石に全部を把握できていると言われたら国のやつらは全員苦い顔をするだろう。
だが、やらないよりはましだ。
「…………わかった、頼んだぞ」
「…………まさか、お前が……大丈夫なのか?変なものでも食ってないだろうな?」
「おい!」
「あはは~流石に永遠きゅんも素直に頼まれるとは思ってなかっただろうね~」
こいつら…………人が下手に出て頼んでやってると言うのに…………
「もういい、行くぞ」
「…………龍、気をつけろよ」
「っ!?………ああ」
「ネコちゃんからの助言だよ~!…………彼の全てを受け止めてやれ。だ、そうで~す」
「お、おう?…………わかった」
にんまりと茜部が笑う。無理して笑っているのだろう、それはいつもより歪だった。
「椿……またいっぱい話そーね」
にこにこと笑う彼の足元には二つ尾が生えている猫が擦り寄っていたそうな。
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