223 / 280
最終章 白神編 薄氷の上
8
しおりを挟む
俺はその流れていく血の色を見て思考が停止した。
白い。
前に見た血は赤かったはず。だけど、今流れ出ているものは目を奪われるぐらいの白だ。椿を見るとすぐに俯いたが一瞬垣間見えたのは迷子になった子供のように歪んでいた顔だった。
「ああ、会長、そうだよ白いんだ。だって俺は&()'%"―――――白だからな」
皮肉気にいう言葉はどこか歪だ。だから白とは何なんだ。その答えの一部がそこにあった。
俺は、その言葉に理解ができない。だから聞く、それがどんなに目の前のこいつに酷なことなのか考えもせずに。
「お前は、何を言ってるんだ…………」
ぴくり、と椿の肩が跳ねた。そのままこいつは腕を見つめる。俺はその刺さったカッターも抜くこともできずに立ったままだった。くそっ…
「ははっ、びっくりだろう?こんな化け物みたいに血の色が白いなんて、ヘモグロビンは何処に行ったんだって感じだろう?」
早口で、妙に明るい声で話すさまは痛々しくて、壊れていた。
そして、カッターを抜くと、勢いを増して血が流れていき、腕の下に敷いてあるタオルに染みこむ。その様子に俺は思わず眉を顰める。
何度もやっているのだろう、手慣れた様子で包帯を巻きつけてバンドを着けた。そして、タオルをカバンに入れると立ち上がると
「それじゃあ俺はもう行くから。じゃあな」
と、俺の横を通るので、咄嗟に腕を掴んでしまう。
「なんだよ」
そう言うが、顔を背けてたままだ。どんな表情をしているのか気になった。
「逃げるな」
「っ…………うるさいっ!」
俺の手を振りほどいた椿は泣いていた。口を震えさせ、涙をこぼし、縋るように俺を見ていた。
「っ―――――――――」
「椿ッ!」
走っていく椿を追いかけたが、追いつけずに、見失ってしまった。
「椿…………」
立ち止まって廊下の奥を見つめる。色々聞きたいことがあったがあの様子では、準備が整っていない場合、すぐにあのように逃げられるだろう。
いらぬお節介だって、言われるかもしれない。本当は、ここまで関わることはせずに見ないふりするものだろう。だけど、
「俺だって、椿を助けたい」
好きになってしまってたから。
「はっ………はっ…………はっ…………!」
走りながら肩から落ちそうになるセーターの裾を握る。涙で前が滲んで見えない。
「はっ、にげ、るな…はっ、は…………なんて…わかんない…………は、あっ、くせにっ…………!」
ああ、誰か、俺を助けて下さい。
この寂寥に俺は目を閉じた。
白い。
前に見た血は赤かったはず。だけど、今流れ出ているものは目を奪われるぐらいの白だ。椿を見るとすぐに俯いたが一瞬垣間見えたのは迷子になった子供のように歪んでいた顔だった。
「ああ、会長、そうだよ白いんだ。だって俺は&()'%"―――――白だからな」
皮肉気にいう言葉はどこか歪だ。だから白とは何なんだ。その答えの一部がそこにあった。
俺は、その言葉に理解ができない。だから聞く、それがどんなに目の前のこいつに酷なことなのか考えもせずに。
「お前は、何を言ってるんだ…………」
ぴくり、と椿の肩が跳ねた。そのままこいつは腕を見つめる。俺はその刺さったカッターも抜くこともできずに立ったままだった。くそっ…
「ははっ、びっくりだろう?こんな化け物みたいに血の色が白いなんて、ヘモグロビンは何処に行ったんだって感じだろう?」
早口で、妙に明るい声で話すさまは痛々しくて、壊れていた。
そして、カッターを抜くと、勢いを増して血が流れていき、腕の下に敷いてあるタオルに染みこむ。その様子に俺は思わず眉を顰める。
何度もやっているのだろう、手慣れた様子で包帯を巻きつけてバンドを着けた。そして、タオルをカバンに入れると立ち上がると
「それじゃあ俺はもう行くから。じゃあな」
と、俺の横を通るので、咄嗟に腕を掴んでしまう。
「なんだよ」
そう言うが、顔を背けてたままだ。どんな表情をしているのか気になった。
「逃げるな」
「っ…………うるさいっ!」
俺の手を振りほどいた椿は泣いていた。口を震えさせ、涙をこぼし、縋るように俺を見ていた。
「っ―――――――――」
「椿ッ!」
走っていく椿を追いかけたが、追いつけずに、見失ってしまった。
「椿…………」
立ち止まって廊下の奥を見つめる。色々聞きたいことがあったがあの様子では、準備が整っていない場合、すぐにあのように逃げられるだろう。
いらぬお節介だって、言われるかもしれない。本当は、ここまで関わることはせずに見ないふりするものだろう。だけど、
「俺だって、椿を助けたい」
好きになってしまってたから。
「はっ………はっ…………はっ…………!」
走りながら肩から落ちそうになるセーターの裾を握る。涙で前が滲んで見えない。
「はっ、にげ、るな…はっ、は…………なんて…わかんない…………は、あっ、くせにっ…………!」
ああ、誰か、俺を助けて下さい。
この寂寥に俺は目を閉じた。
10
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
父が腐男子で困ってます!
あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。
趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。
いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。
しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。
どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。
宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。
友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。
そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。
宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。
腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。
俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜
ゆきぶた
BL
時をやり直したアイドルが、嫌われていた筈の弟やメンバーに溺愛される話。R15のエロなしアイドル×マネージャーのハーレム物。
※タイトル変更中
ー ー ー ー ー
あらすじ
子役時代に一世を風靡した風間直(かざまなお)は現在、人気アイドルグループに所属していた。
しかし身に覚えのないスキャンダルで落ちぶれていた直は、ある日事故でマンションの11階から落ちてしまう。
そして何故かアイドルグループに所属する直前まで時間が戻った直は、あんな人生はもう嫌だと芸能界をやめる事にしたのだった。
月日が経ち大学生になった直は突然弟に拉致られ、弟の所属するアイドルグループ(直が元いたグループ)のマネージャーにされてしまう。
そしてやり直す前の世界で嫌われていた直は、弟だけでなくメンバーにも何故か溺愛されるのだった。
しかしマネージャーとして芸能界に戻って来てしまった直は、スキャンダル地獄に再び陥らないかという不安があった。
そんな中、直を嵌めた人間がメンバーの中にいるかもしれない事を知ってしまい───。
ー ー ー ー ー
直のお相手になるアイドルグループには
クール、オレ様、ワンコ、根暗がいます。
ハーレムでイチャイチャ、チュッチュとほんのりとした謎を楽しんでもらえば良いと思ってます。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる