Lara

文字の大きさ
上 下
222 / 280
最終章 白神編 薄氷の上

しおりを挟む
「っ、っ…………!!」

目が覚めると、まだ少し、こう、気持ち良くなって射精感と共に崩れ落ちた。え、まじ?

「ぁ、ああ゛…………喉は、治って来たかな、まだ少し違和感があるが」

んんっ、とりあえずこの快感も収まれ。望んでもいない力だったが、使って体の調子を戻す。寝る前もすぐにこれを使えばよかったんじゃないか…………?

まあ、それは気にしてもしょうがない。とりあえず今は…………五時か。なら時間は大丈夫だな、というか寝すぎじゃねぇか?十二時間以上寝てるぞ?

立ち上がろうと動いたら下着の中が気持ち悪かった。そういえば、昨日のあれから洗ってねぇんだよな…………着替えるか。どのみち今の時間じゃ町に降りても意味ねぇし。

人格が交ざりあって快感を感じたのは何故か、前に一か月間別人格を育てて、受け入れてと遊ん…………実験したときに考えた。

当っているかはわからない。ただの人間の人格についてもわからないことばかりなのに、この力とかが絡まっている時点でわかったらやばい。

だからこれは推測だ。

人間の精神構造は俺にはもうわからないが、今の俺は人格とが大いに関わっている。力が人格に影響し、歪ませているのだ。力を持つ者のあるべき形へと、嫌でも、変えられていく。

そして、力は身体とも密接に関わっている。

急速に人格が交ざりあうのは本来在り得ないこと。人格に深くかかわっていた力は人格を歪ませるが、時に歪ませられることがある。というか、歪みを伝えるというかな。

それが身体に伝わって快感に成り代わったという感じだろう。なんでそこで快楽なんだって思うけど、この力が十分に流れるようになってから痛みが感じねぇんだよな。おかげで手首を包丁で中までぶっ刺しても痛くねぇし。まあ、それでもやめねぇけど。落ち着くし。

それで、どこぞの道から仕入れた情報だが、人格とかそういうの交ざるとすっげぇ痛ぇんだと。そりゃあもう、廃人になりかけるほどの痛みが。

俺の場合、それがカットされたから痛み以下のものを受け入れてああなったんじゃねぇか?

それなら痛いままでよかったんだが。廃人云々言うより精神はとっくに壊れてるしな。力が関わっている分余計たちが悪い。

「はぁ…………とりあえず、あのことはもう思い出さないでおこう。それがいい」

きっと今の俺は死んだ魚の目をしているだろう。

俺はあの後何もすることがないし、BL小説とかも読む気になれなかったからそのまま仕事をやりに生徒会室に来ていた。そして今日の分は終わらせて、持参していたカッターで腕をザクザクと切り裂いているところだった。

痛くもなんともねぇからなこれ。どうにかして実感できるようにならねぇかな、どうにもすっきりできずに胸の内に澱んだものが沈殿していく。

さて、そろそろやめて、どこかへ行くか。まだ早い時間だけどあいつらのことだしいつ来るかわからねぇから―――

ガチャ

―――あー、タヒね。

「…………っ、椿……って、またやってんのか!…白い?」

なんでこう、ここぞとばかりにやってくるのかねぇ。

腕にぶっ刺さってるカッターを見て怒鳴った会長だったが流れ出る血の色を見て戸惑う。…………もう既に俺の血の色は白くなっていたからだ。何故か肌の色は変わってねぇんだけどな。不思議と。

でも、また会長に見つかったな。あの頃は立派に情緒がぐちゃぐちゃになってたっけ、ははは、今の俺は全く崩れてないけどな。元から壊れている状態だし、全然やべぇとか、見つかってしまった、とかの感情を感じねぇ。

ああ、冷たく感じたのは身体だけじゃねぇな。心も冷えてるわ。

「ああ、会長、そうだよ白いんだ。だって俺は&()'%"閲 eきmAせ―――――白だからな」
「お前は、何を言ってるんだ…………」

目線を腕にぶっ刺さったままのカッターに固定する。どうしてだろう、彼を見ることができない。

「ははっ、びっくりだろう?こんな化け物みたいに血の色が白いなんて、ヘモグロビンは何処に行ったんだって感じだろう?」

何で俺はこんな口を動かしてるんだ?言い訳みたいに。話しかけるなって言ったのは俺なのに。

カッターを抜くと新たに血があふれ出てきた。会長が眉を顰めたような気がした。

腕に包帯を巻きつけてバンドを着ける。下に敷いていたタオルを乱暴にバッグの中に押し込んで立ち上がった。

「それじゃあ俺はもう行くから。じゃあな」

俺は目も合わせずに俯いて会長の横を通る。

「っ、椿ッ!」
「―――!!?」

が、それも叶わずに腕を強く掴まれた。

「なんだよ」

なんだよ

みっともなく目の前が滲む。それを認めたくなくて、会長から顔だけ背ける。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

もういいや

senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが…… まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん! しかも男子校かよ……… ーーーーーーーー 亀更新です☆期待しないでください☆

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

父が腐男子で困ってます!

あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。 趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。 いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。 しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。 どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。 宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。 友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。 そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。 宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。 腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた
BL
時をやり直したアイドルが、嫌われていた筈の弟やメンバーに溺愛される話。R15のエロなしアイドル×マネージャーのハーレム物。 ※タイトル変更中 ー  ー  ー  ー  ー  あらすじ 子役時代に一世を風靡した風間直(かざまなお)は現在、人気アイドルグループに所属していた。 しかし身に覚えのないスキャンダルで落ちぶれていた直は、ある日事故でマンションの11階から落ちてしまう。 そして何故かアイドルグループに所属する直前まで時間が戻った直は、あんな人生はもう嫌だと芸能界をやめる事にしたのだった。 月日が経ち大学生になった直は突然弟に拉致られ、弟の所属するアイドルグループ(直が元いたグループ)のマネージャーにされてしまう。 そしてやり直す前の世界で嫌われていた直は、弟だけでなくメンバーにも何故か溺愛されるのだった。 しかしマネージャーとして芸能界に戻って来てしまった直は、スキャンダル地獄に再び陥らないかという不安があった。 そんな中、直を嵌めた人間がメンバーの中にいるかもしれない事を知ってしまい───。 ー  ー  ー  ー  ー  直のお相手になるアイドルグループには クール、オレ様、ワンコ、根暗がいます。 ハーレムでイチャイチャ、チュッチュとほんのりとした謎を楽しんでもらえば良いと思ってます。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

処理中です...