98 / 280
さまーばけぃしょんが始まりまする
4
しおりを挟む
この手首の傷はつい最近つけたものだった。
生徒会室のソファーでひとり物思いにふける。
世間一般でリストカットと言われる自傷行為をよくしてしまう。ストレスが強く発生した時、精神が不安定の時、まあ死を感じたい時、とか。
いつもは腐男子としてチャラ男会計を演じていたり、萌えを捜索、観察したりして何ともないように見せてはいるが、自分の精神が薄氷の上に乗っかっているようなものなのはよくわかっている。
傷をつけたのは何時だったか、よく覚えていない。前からそうだったが、自傷行為する時の精神状態は正常なものではないからいつも気づいたら傷が出来ていた、という風になる。
現状、まともな精神だったら、多重人格なんてならないはずなので当たり前のことなのだが。
俺の身体は普通のホモサピエンスではないので通常では体に残るような傷といった傷などは長く残らないのだが、それでも治るまでの時間はかかったりする。この傷の具合ならまあまあ深く切っていたが精々一週間ちょっとぐらいだろう。この傷をつけたのは三日前、気づいたら手に包丁を持って切っているところだった。危ない。料理している時だったんだが、火事になりそうで怖い。
その日からバレないようにカーディガンも着込んだが無駄となってしまった。
少なくとも見てしまった彼らは気にするようになるだろう。俺の評価には自傷行為をする人、とつくようになったであろう。ああいやだ。せっかく普通に見えるようにしていたのに。
「あれ?」
やってしまった。
「あー、掃除しなきゃいけねぇな。めんどくせぇ」
血が腕から零れ落ちて、テーブルを汚していた。手には何も持っていないけれど、爪が真っ赤に染まっているから引っ掻かいてしまったのだろう。大体何も持っていないとこうなる。過去に五回はやったはず。
掃除をしなきゃ、とは言ったものの何もする気が起きなかった。このまま消えてなくなりたい。俺がいたという証をすべて消し去って、
消し去って?
どうでもいっか。俺が死ぬことはない、出来ないし、現にこの部屋の窓から飛び降りてもどこかは犠牲にしたって死ぬことは出来ない。いずれにしても最後は綺麗に元通りになる。心臓を突いたって、脳を潰したって、内臓を全部取り外したって、まあ痛いには痛いけど。俺の器が壊れなければ意味がないんだ。
「あはは」
本当に俺はどうしたいのだろうか、なにがしたいのだろうか
どうせ、どうせ―――
「馬鹿みたい」
―――抗うことなんて出来ないのに
「椿?……って、何をやっているんだ!」
あるはずのない、俺以外の声が聞こえた
そこにはもう帰ったはずの会長がいた。俺の手元を見て、血を見て焦って走り寄ってきた。
俺はなにもしない。ただ見るだけ
会長は棚から設備されていた救急箱を持ってきて血を拭い取り消毒をする。そして丁寧に包帯を巻いてった。テーブルに広がった血を拭って、救急箱を片づけた。
「ふう……」
何も言わない。何かを言おうとしてもどうすればいいかなんて、わからない。
「いつも、こんなことをやっているのか?」
「ああ」
これからのことを考えるとその返答は駄目だろうが気がついたら答えていた。
今はどう動けばいいかわからない。でも、問いには答えられる。
答えた瞬間、会長の眉間のしわがさらに深くなった。
「今はリストカットだけだけど、前は首にも傷をつけたり絞めたり、体にもつけたりしてた。まあ首はこのファッションじゃすぐ見えるからやめたけど」
俺はそのまま零れ落ちていく言葉を堰き止めることが出来なかった。
どうせ死なないんだから、手首も首も変わらない。
「もう、やめろ。そんなことやったって」
「やったってなに?そんなことってなに?何も知りも分かりもしないのに?会長は俺の何を知ってんの?俺の何を理解してんの?なぜこんな行動をとるのか、取らなければいけないのか、なにも…知らないだろ?」
「……ッ、そう、だな」
「俺は好きでやってんの、こうしなければ保てられないからやってんの。」
「……すまな」
「ああ、ごめん、こんな酷いこと言って。今の俺、ちょっとぐしゃぐしゃだから。ああ、もうわからない、わかんないよ」
「……椿?」
上手く考えられない、思考が纏まらない。だめだな、そろそろ人格を分けないと、崩壊する。
「会長」
「なんだ?」
「今あったことはすべて忘れて、全部、全部……忘れて」
「……」
「な?頼むよ」
「…わかった、俺は何も見なかった。」
「それでいい、これは俺個人の問題だからな。」
「……」
「……もう、帰るわ。会長もここでの用事が終わったら、すぐ帰れよ。結構遅い時間だからな」
背中に視線を感じながら俺は部屋を出た。
◇❖◇
「個人の問題、か……」
俺にも大樹たちにもあるようにそれぞれ闇を抱えている。今回、生徒会内で別れたのもそれがあったからだろう。だが椿が繋げてくれた。俺は何もできずに逃げたままだったが、椿はちゃんと向き合って、解消とは言わずも俺含めて救われた。
「今度は俺らの番だろう。……何も知りも分かりもしないのに、とりあえず調べてみるか。」
彼がどう、生きてきたのかを
彼はきっと知られたくないのだろう。彼自身の情報なんて少ししか知らない。こないだまで演技していたことを知らなかったぐらいだ。
自己満足と言われたらそうだと答えよう。知らないなんて言われたからには調べてやる。そして今度は助けてやるんだ。
だから待ってろよ、椿
生徒会室のソファーでひとり物思いにふける。
世間一般でリストカットと言われる自傷行為をよくしてしまう。ストレスが強く発生した時、精神が不安定の時、まあ死を感じたい時、とか。
いつもは腐男子としてチャラ男会計を演じていたり、萌えを捜索、観察したりして何ともないように見せてはいるが、自分の精神が薄氷の上に乗っかっているようなものなのはよくわかっている。
傷をつけたのは何時だったか、よく覚えていない。前からそうだったが、自傷行為する時の精神状態は正常なものではないからいつも気づいたら傷が出来ていた、という風になる。
現状、まともな精神だったら、多重人格なんてならないはずなので当たり前のことなのだが。
俺の身体は普通のホモサピエンスではないので通常では体に残るような傷といった傷などは長く残らないのだが、それでも治るまでの時間はかかったりする。この傷の具合ならまあまあ深く切っていたが精々一週間ちょっとぐらいだろう。この傷をつけたのは三日前、気づいたら手に包丁を持って切っているところだった。危ない。料理している時だったんだが、火事になりそうで怖い。
その日からバレないようにカーディガンも着込んだが無駄となってしまった。
少なくとも見てしまった彼らは気にするようになるだろう。俺の評価には自傷行為をする人、とつくようになったであろう。ああいやだ。せっかく普通に見えるようにしていたのに。
「あれ?」
やってしまった。
「あー、掃除しなきゃいけねぇな。めんどくせぇ」
血が腕から零れ落ちて、テーブルを汚していた。手には何も持っていないけれど、爪が真っ赤に染まっているから引っ掻かいてしまったのだろう。大体何も持っていないとこうなる。過去に五回はやったはず。
掃除をしなきゃ、とは言ったものの何もする気が起きなかった。このまま消えてなくなりたい。俺がいたという証をすべて消し去って、
消し去って?
どうでもいっか。俺が死ぬことはない、出来ないし、現にこの部屋の窓から飛び降りてもどこかは犠牲にしたって死ぬことは出来ない。いずれにしても最後は綺麗に元通りになる。心臓を突いたって、脳を潰したって、内臓を全部取り外したって、まあ痛いには痛いけど。俺の器が壊れなければ意味がないんだ。
「あはは」
本当に俺はどうしたいのだろうか、なにがしたいのだろうか
どうせ、どうせ―――
「馬鹿みたい」
―――抗うことなんて出来ないのに
「椿?……って、何をやっているんだ!」
あるはずのない、俺以外の声が聞こえた
そこにはもう帰ったはずの会長がいた。俺の手元を見て、血を見て焦って走り寄ってきた。
俺はなにもしない。ただ見るだけ
会長は棚から設備されていた救急箱を持ってきて血を拭い取り消毒をする。そして丁寧に包帯を巻いてった。テーブルに広がった血を拭って、救急箱を片づけた。
「ふう……」
何も言わない。何かを言おうとしてもどうすればいいかなんて、わからない。
「いつも、こんなことをやっているのか?」
「ああ」
これからのことを考えるとその返答は駄目だろうが気がついたら答えていた。
今はどう動けばいいかわからない。でも、問いには答えられる。
答えた瞬間、会長の眉間のしわがさらに深くなった。
「今はリストカットだけだけど、前は首にも傷をつけたり絞めたり、体にもつけたりしてた。まあ首はこのファッションじゃすぐ見えるからやめたけど」
俺はそのまま零れ落ちていく言葉を堰き止めることが出来なかった。
どうせ死なないんだから、手首も首も変わらない。
「もう、やめろ。そんなことやったって」
「やったってなに?そんなことってなに?何も知りも分かりもしないのに?会長は俺の何を知ってんの?俺の何を理解してんの?なぜこんな行動をとるのか、取らなければいけないのか、なにも…知らないだろ?」
「……ッ、そう、だな」
「俺は好きでやってんの、こうしなければ保てられないからやってんの。」
「……すまな」
「ああ、ごめん、こんな酷いこと言って。今の俺、ちょっとぐしゃぐしゃだから。ああ、もうわからない、わかんないよ」
「……椿?」
上手く考えられない、思考が纏まらない。だめだな、そろそろ人格を分けないと、崩壊する。
「会長」
「なんだ?」
「今あったことはすべて忘れて、全部、全部……忘れて」
「……」
「な?頼むよ」
「…わかった、俺は何も見なかった。」
「それでいい、これは俺個人の問題だからな。」
「……」
「……もう、帰るわ。会長もここでの用事が終わったら、すぐ帰れよ。結構遅い時間だからな」
背中に視線を感じながら俺は部屋を出た。
◇❖◇
「個人の問題、か……」
俺にも大樹たちにもあるようにそれぞれ闇を抱えている。今回、生徒会内で別れたのもそれがあったからだろう。だが椿が繋げてくれた。俺は何もできずに逃げたままだったが、椿はちゃんと向き合って、解消とは言わずも俺含めて救われた。
「今度は俺らの番だろう。……何も知りも分かりもしないのに、とりあえず調べてみるか。」
彼がどう、生きてきたのかを
彼はきっと知られたくないのだろう。彼自身の情報なんて少ししか知らない。こないだまで演技していたことを知らなかったぐらいだ。
自己満足と言われたらそうだと答えよう。知らないなんて言われたからには調べてやる。そして今度は助けてやるんだ。
だから待ってろよ、椿
20
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
もういいや
senri
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
父が腐男子で困ってます!
あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。
趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。
いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。
しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。
どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。
宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。
友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。
そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。
宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。
腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。
俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜
ゆきぶた
BL
時をやり直したアイドルが、嫌われていた筈の弟やメンバーに溺愛される話。R15のエロなしアイドル×マネージャーのハーレム物。
※タイトル変更中
ー ー ー ー ー
あらすじ
子役時代に一世を風靡した風間直(かざまなお)は現在、人気アイドルグループに所属していた。
しかし身に覚えのないスキャンダルで落ちぶれていた直は、ある日事故でマンションの11階から落ちてしまう。
そして何故かアイドルグループに所属する直前まで時間が戻った直は、あんな人生はもう嫌だと芸能界をやめる事にしたのだった。
月日が経ち大学生になった直は突然弟に拉致られ、弟の所属するアイドルグループ(直が元いたグループ)のマネージャーにされてしまう。
そしてやり直す前の世界で嫌われていた直は、弟だけでなくメンバーにも何故か溺愛されるのだった。
しかしマネージャーとして芸能界に戻って来てしまった直は、スキャンダル地獄に再び陥らないかという不安があった。
そんな中、直を嵌めた人間がメンバーの中にいるかもしれない事を知ってしまい───。
ー ー ー ー ー
直のお相手になるアイドルグループには
クール、オレ様、ワンコ、根暗がいます。
ハーレムでイチャイチャ、チュッチュとほんのりとした謎を楽しんでもらえば良いと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる