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断章 彼らの独白
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☆★☆★☆
僕らは二人で一人だったんだー。誕生日、身長、体重、見た目、勉学、運動…
親もどっちが僕で、どっちが睦月かわからないくらいでさ、面白かったよ。見分けがつかなくて焦る親は。小さいときは見分けてほしいからって区別がつくようにしたりしてたけど、それでもたまに間違えるのを見てきて、ほんとーに僕らのことを見てくれないんだなーって思った。
まあ、わかってはいたよ?いつも外面のことばっかり考えて野心でいっぱい、どんだけ企業を大きくするかでしか頭にない親だからねーあはは。
僕は早々に見切りをつけて、親をただの僕らを生んだ女とそれの男としか考えなくなったけど、睦月はつらそうにしてた。
始めはおんなじ性格してたけど、一卵性双生児だからといって違う脳を持つ他人なんだ。見るものも変わるし、そうすると価値観も変わってくる。何処までも同じにはならなくなった。
だからさ、僕は思いついたんだ!どっちが皐月でどっちが睦月かわからなくしちゃおうって。ちょっとムカついたんだよねー僕の弟を悲しませるって、親だっていうんだったらさ、ちゃんと見てどっちかわかれって。
だから本当にわからなくして混乱させちゃえって!思ったんだよ!このままじゃまずいって。外面を気にする奴らだからさー外に出て僕らがどっちかわからなくなって赤っ恥かいちゃえって!いいでしょ?これー
だって、ちゃんと見ないほうが悪いんだもん。
だからやってやったんだ。直前まで見分けがつくようにして、お客さんの前ではわからなくしたんだー
「…睦月」
「父上?僕は皐月ですよ?」
「~~~……っ」
ああ、面白い。これを見た睦月も表には出さなかったけど笑ってた。何で分かるかって?そりゃあ双子で性格が違うと言っても思考回路の根っこは同じだからねーそれにずっと一緒にいたし。わかっちゃうよー
それからも僕たちはさらに口調も動きも合わせて本当にわからないようにした。だって面白いんだもん。みーんなみんなわからない。わかるって見栄張ってるやつ、正直にわからないって言ってくるやつ、初めから双子っていう括りにする奴。みーんな、馬鹿みたい。馬鹿ばっかり。
だからそれを見て笑うために僕らは真似をする。二人はいっしょ、同じ。見て笑って馬鹿にして、楽しむんだー
どうせ僕らを使ってまた外に媚を売ろうとする女と男がいるけど僕らの見分けがつかないうちは従ってやんない。抗って反抗してちゃんと僕らを見るまで、やめてやんない。そして睦月に謝ってもらうんだ。
こんな性格だけど、僕はお兄ちゃんなんだから。
☆★☆★☆
何もかもを皐月を真似して区別がつかないようにしてからは楽しい毎日だった。もとから僕たちは悪戯をするのが大好きで、僕にとってこの遊びは最大級の楽しみだった。
使用人から学園のクラスメイト、町での友達に何より僕らの両親。からかって笑って、楽しかった。皐月と笑い合って気ままに動いて
だけど、それでも虚しかった。
誰も僕と皐月の区別はつかなくて間違えられて、僕という個性を否定されているようだった。双子だからって趣味も好物も変わってくるし、性格だって皐月は正真正銘の悪戯っ子だけど僕はそこまでじゃないし。
なんで僕は双子なんだろう。姿かたちが同じで、髪型を変えたり服装を変えたりしなきゃどっちがどっちなのかわからなくなる。
本当に僕たちを見てくれる人はどっちかわかってくれるけど、僕が気づいてほしいのは父と母。いっつも仕事ばっかりでよく間違える。皐月はすぐに見切りをつけたっぽいけど、僕はそんなにすぐにできなかった。
正直言ってこの見分けをつかなくするのも僕の為ってわかってる。完全にわからなくして間違っていても問題ないって感じにして、僕の気持ちを和らげようとしている。
でもね、それでも父と母が僕たちの見分けがつかないのは変わらなくて、それがわかっているから悲しいままなんだ。
ねえ皐月、僕はどうすればいいんだろう。皐月はこのままわからないままでいいって思っているんだろうけど、僕はわかってほしいんだ。僕は僕だし皐月は皐月。なのにわかってくれない。
苦しい、笑っているのに、馬鹿にして満足してるのに
満たされないんだ。
日がたつたびに、遊びをして揶揄うたびに、わかってくれないという現実が心に積み重なっていくようで、
笑いを、笑顔を楽しさを注いでいるのに底が抜けたカップのようで、どこまでやっても渇きは癒えない。反対にどんどん飢えが大きくなって、分かってくれる人を渇望する声が大きくなっていく。
僕はそれを抑えるのに必死で、必死でどうにかしようとしてもできない。ねえ皐月、気づいてた?律に遊びを仕掛ける時、全部当ててくれてたけどそれって皐月の手についたインクを見て言ってたんだと思う。その時はそれを拭うこともできなくてどうしようもなかったけど、律の目線は皐月の手に行ってたと思う。僕のこと全く見てなかったし。
だからごめんね?こんな皐月から離れて、隅っこで泣いちゃって。昔、悲しいことがあったらちゃんと言って共有しようねっていう約束破っちゃって。
でも、お互い様だよね。離れた僕にも気づかず過ごしてたんだから。
僕らは二人で一人だったんだー。誕生日、身長、体重、見た目、勉学、運動…
親もどっちが僕で、どっちが睦月かわからないくらいでさ、面白かったよ。見分けがつかなくて焦る親は。小さいときは見分けてほしいからって区別がつくようにしたりしてたけど、それでもたまに間違えるのを見てきて、ほんとーに僕らのことを見てくれないんだなーって思った。
まあ、わかってはいたよ?いつも外面のことばっかり考えて野心でいっぱい、どんだけ企業を大きくするかでしか頭にない親だからねーあはは。
僕は早々に見切りをつけて、親をただの僕らを生んだ女とそれの男としか考えなくなったけど、睦月はつらそうにしてた。
始めはおんなじ性格してたけど、一卵性双生児だからといって違う脳を持つ他人なんだ。見るものも変わるし、そうすると価値観も変わってくる。何処までも同じにはならなくなった。
だからさ、僕は思いついたんだ!どっちが皐月でどっちが睦月かわからなくしちゃおうって。ちょっとムカついたんだよねー僕の弟を悲しませるって、親だっていうんだったらさ、ちゃんと見てどっちかわかれって。
だから本当にわからなくして混乱させちゃえって!思ったんだよ!このままじゃまずいって。外面を気にする奴らだからさー外に出て僕らがどっちかわからなくなって赤っ恥かいちゃえって!いいでしょ?これー
だって、ちゃんと見ないほうが悪いんだもん。
だからやってやったんだ。直前まで見分けがつくようにして、お客さんの前ではわからなくしたんだー
「…睦月」
「父上?僕は皐月ですよ?」
「~~~……っ」
ああ、面白い。これを見た睦月も表には出さなかったけど笑ってた。何で分かるかって?そりゃあ双子で性格が違うと言っても思考回路の根っこは同じだからねーそれにずっと一緒にいたし。わかっちゃうよー
それからも僕たちはさらに口調も動きも合わせて本当にわからないようにした。だって面白いんだもん。みーんなみんなわからない。わかるって見栄張ってるやつ、正直にわからないって言ってくるやつ、初めから双子っていう括りにする奴。みーんな、馬鹿みたい。馬鹿ばっかり。
だからそれを見て笑うために僕らは真似をする。二人はいっしょ、同じ。見て笑って馬鹿にして、楽しむんだー
どうせ僕らを使ってまた外に媚を売ろうとする女と男がいるけど僕らの見分けがつかないうちは従ってやんない。抗って反抗してちゃんと僕らを見るまで、やめてやんない。そして睦月に謝ってもらうんだ。
こんな性格だけど、僕はお兄ちゃんなんだから。
☆★☆★☆
何もかもを皐月を真似して区別がつかないようにしてからは楽しい毎日だった。もとから僕たちは悪戯をするのが大好きで、僕にとってこの遊びは最大級の楽しみだった。
使用人から学園のクラスメイト、町での友達に何より僕らの両親。からかって笑って、楽しかった。皐月と笑い合って気ままに動いて
だけど、それでも虚しかった。
誰も僕と皐月の区別はつかなくて間違えられて、僕という個性を否定されているようだった。双子だからって趣味も好物も変わってくるし、性格だって皐月は正真正銘の悪戯っ子だけど僕はそこまでじゃないし。
なんで僕は双子なんだろう。姿かたちが同じで、髪型を変えたり服装を変えたりしなきゃどっちがどっちなのかわからなくなる。
本当に僕たちを見てくれる人はどっちかわかってくれるけど、僕が気づいてほしいのは父と母。いっつも仕事ばっかりでよく間違える。皐月はすぐに見切りをつけたっぽいけど、僕はそんなにすぐにできなかった。
正直言ってこの見分けをつかなくするのも僕の為ってわかってる。完全にわからなくして間違っていても問題ないって感じにして、僕の気持ちを和らげようとしている。
でもね、それでも父と母が僕たちの見分けがつかないのは変わらなくて、それがわかっているから悲しいままなんだ。
ねえ皐月、僕はどうすればいいんだろう。皐月はこのままわからないままでいいって思っているんだろうけど、僕はわかってほしいんだ。僕は僕だし皐月は皐月。なのにわかってくれない。
苦しい、笑っているのに、馬鹿にして満足してるのに
満たされないんだ。
日がたつたびに、遊びをして揶揄うたびに、わかってくれないという現実が心に積み重なっていくようで、
笑いを、笑顔を楽しさを注いでいるのに底が抜けたカップのようで、どこまでやっても渇きは癒えない。反対にどんどん飢えが大きくなって、分かってくれる人を渇望する声が大きくなっていく。
僕はそれを抑えるのに必死で、必死でどうにかしようとしてもできない。ねえ皐月、気づいてた?律に遊びを仕掛ける時、全部当ててくれてたけどそれって皐月の手についたインクを見て言ってたんだと思う。その時はそれを拭うこともできなくてどうしようもなかったけど、律の目線は皐月の手に行ってたと思う。僕のこと全く見てなかったし。
だからごめんね?こんな皐月から離れて、隅っこで泣いちゃって。昔、悲しいことがあったらちゃんと言って共有しようねっていう約束破っちゃって。
でも、お互い様だよね。離れた僕にも気づかず過ごしてたんだから。
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