45 / 280
崩壊の訪れと次への兆し
15
しおりを挟む
◇❖◇
彼は不思議だ。
たった今去っていた彼のことを想う。
いつもおちゃらけた態度である割にはしっかりとしている人物であるのがわかる。彼は学園ではチャラ男だとか言われている。確かにそうではあるが、どこか違うと自分の勘が言っていた。実際に彼はそうだ。ただのチャラい男であるならばそう簡単にこの学園の風習であるランキングの上位にはなれない。それならば数多くのチャラ男がランキング上位にのるだろう。
ならば、どうしてランキング上位にしかも一か月という短い期間でなれたのか。
彼は顔だけの男ではない。しっかりと周りを観察し、細やかな気配りができるのだ。軽薄そうに見えるその見た目と言動があるが、その頼もしさから多くの生徒から相談を受けているのだ。それを知ったときそのコミュニケーション力を分けてほしいとも思った。
それだけではない、実力もある。この学園は国内有数の難関校でもあり、さらに高等部からの外部入学ともなると受験のテストの内容も難しい。
これは、生徒の中では学園を運営する生徒会だけが知る事実なのだが、彼の試験のテストは満点であった。一つたりともミスは無く。裏口入学かとも怪しみ、実際に彼のテストの解答も見てみたのだがそんなことはなく、すべて完璧な解答であり、その時の生徒会は震撼した。そして彼は特待生として堂々と入学した。
それでは、運動の面ではどうなるのかというと、これもまた文句がないほど素晴らしかった。その細腕からどうやったらあの怪力が出るのかという力強さ。反射神経も良く、足の速さも速い。
気配りができ、勉強もでき、運動もでき、彼は完璧超人なのではないかと思うほどだ。短時間でランキングの上位を飾るのも納得だろう。
手に持った彼のハンカチを見下ろす。
彼は本当にすごいんだ。
さっきも言ったが、彼は気配りができる。
この学園にやって来た転校生が来る前、生徒会の空気はとても心地よかった。
穏やかに言葉を交わし、仕事をして、休憩には大樹の淹れてくれた紅茶を飲んで一息をつく日々だった。そんな和やかな日常でもちょっとした諍いはある。
今の生徒会のみんなは会計である彼を除き、幼馴染である。だが、知り合ったのも家の様々な思惑が絡みつき、共にいただけではあるが。
自分も含め、生徒会のみんなは暗い事情を持っている。だけど、長く一緒にいてお互い気を抜いてしまうからか、たまにうっかりと誰かの地雷を踏みかけてしまい、お互いの空気が強張ってしまうときがある。だが、そんな時に彼は話を自然にすり替えたりして場を取り直してくれる。他の人たちでは、そんなことはできなかった。
だから、彼が来る前より生徒会の空気はとてもよかったのだ。まあ、現状、律のおかげで最悪の状況に陥っているが。
そして今日も彼は泣いているだけの俺を見つけて、話に来てくれた。仕事をしていないと責められるような状況だったにもかかわらず、ちゃんと仕事をしているのを知ってくれて、俺がなぜ居たくもない律の傍に居るのかも気づいてくれて、さらには俺のことも励ましてくれた。彼もつらい状況に立っているのに。
彼は不思議だ。
たった今去っていた彼のことを想う。
いつもおちゃらけた態度である割にはしっかりとしている人物であるのがわかる。彼は学園ではチャラ男だとか言われている。確かにそうではあるが、どこか違うと自分の勘が言っていた。実際に彼はそうだ。ただのチャラい男であるならばそう簡単にこの学園の風習であるランキングの上位にはなれない。それならば数多くのチャラ男がランキング上位にのるだろう。
ならば、どうしてランキング上位にしかも一か月という短い期間でなれたのか。
彼は顔だけの男ではない。しっかりと周りを観察し、細やかな気配りができるのだ。軽薄そうに見えるその見た目と言動があるが、その頼もしさから多くの生徒から相談を受けているのだ。それを知ったときそのコミュニケーション力を分けてほしいとも思った。
それだけではない、実力もある。この学園は国内有数の難関校でもあり、さらに高等部からの外部入学ともなると受験のテストの内容も難しい。
これは、生徒の中では学園を運営する生徒会だけが知る事実なのだが、彼の試験のテストは満点であった。一つたりともミスは無く。裏口入学かとも怪しみ、実際に彼のテストの解答も見てみたのだがそんなことはなく、すべて完璧な解答であり、その時の生徒会は震撼した。そして彼は特待生として堂々と入学した。
それでは、運動の面ではどうなるのかというと、これもまた文句がないほど素晴らしかった。その細腕からどうやったらあの怪力が出るのかという力強さ。反射神経も良く、足の速さも速い。
気配りができ、勉強もでき、運動もでき、彼は完璧超人なのではないかと思うほどだ。短時間でランキングの上位を飾るのも納得だろう。
手に持った彼のハンカチを見下ろす。
彼は本当にすごいんだ。
さっきも言ったが、彼は気配りができる。
この学園にやって来た転校生が来る前、生徒会の空気はとても心地よかった。
穏やかに言葉を交わし、仕事をして、休憩には大樹の淹れてくれた紅茶を飲んで一息をつく日々だった。そんな和やかな日常でもちょっとした諍いはある。
今の生徒会のみんなは会計である彼を除き、幼馴染である。だが、知り合ったのも家の様々な思惑が絡みつき、共にいただけではあるが。
自分も含め、生徒会のみんなは暗い事情を持っている。だけど、長く一緒にいてお互い気を抜いてしまうからか、たまにうっかりと誰かの地雷を踏みかけてしまい、お互いの空気が強張ってしまうときがある。だが、そんな時に彼は話を自然にすり替えたりして場を取り直してくれる。他の人たちでは、そんなことはできなかった。
だから、彼が来る前より生徒会の空気はとてもよかったのだ。まあ、現状、律のおかげで最悪の状況に陥っているが。
そして今日も彼は泣いているだけの俺を見つけて、話に来てくれた。仕事をしていないと責められるような状況だったにもかかわらず、ちゃんと仕事をしているのを知ってくれて、俺がなぜ居たくもない律の傍に居るのかも気づいてくれて、さらには俺のことも励ましてくれた。彼もつらい状況に立っているのに。
10
お気に入りに追加
309
あなたにおすすめの小説

秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー
Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。
家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。
2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。
──もう逃がさないから。
誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。
事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。
少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。
生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。
*****
青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。
※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。
表紙は友人のkouma.作です♪


もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる