Lara

文字の大きさ
上 下
35 / 280
崩壊の訪れと次への兆し

しおりを挟む
なーんか、静かだな。タイピングの音もしない。動いている音もしない。仮眠室で寝てんのか?と思いつつ目の前をそり立つ書類の山を避けて、机に向かうと

「かいちょ?って…うわーぉ倒れてる~ねえ、会長~寝るなら仮眠室で寝てよ~」

机の上に腕を置いて崩れている会長。勢いよく倒れたからか、処理済みの書類の塔が崩れ去り、そこらへんに散らばっている。普通なら慌てるような状況だが俺はもう慌てない。こんなのが日常茶飯事になったからだ。保健室は遠いし、倒れる原因は睡眠不足と分かっている。

「あー、調節ミスったかな…まあいいや、運ぼ。」

そう言って会長を持ち上げる。もちろん姫抱きで、いやだって背負うのも大変だし、肩に腕持って足引きずらせながら運ぶのも重いし。結果、姫抱きに至るんだよ。断じて面白いからではないよ?

「んー、よいしょっと」

仮眠室のベットに会長を横たえさせてまじまじとその顔を見てみる。
きゅっと締まった厚い唇にスッと通った高い鼻。今は閉じられている長いまつ毛で縁取ったその中はコンタクトに覆われた赤い目。その目は見るものを吸い込んでいきそうで…って何を考えているのだろうか。

すよすよと寝ているさまは整った顔面のせいか、それとも体調不良のせいか血色が悪い肌の色でなのか人形のように見える。
その様子は自分の記憶の奥底に仕舞ったそれに重なり……

「……ッ」

その錯覚を振り払うように頭を振る。今はもうそんなことは考えなくていい。あれはもう終わったことなんだ。

とりあえず息苦しくならないようにその首のネクタイを少し緩める。

「……たい…き、すまな……」

一瞬起きたのかと思ったが違ったようだ。どうやら夢の中で副会長たちに謝っているそうだ。副会長達が来なくなって俺らは寝不足に見舞われているが、会長は仕事の量が多いから、というだけでなく副会長達のことを考える隙をなくそうと仕事にのめりこんでいたように見える。だからあまり寝ようとしないのだろう。余裕ができたら考えてしまうから。逃げている、とも言えるなこれは。

このままやっていたって酷使しすぎている体に限界がきて終わるだけなのに。
まあ、そうなるのを遅らすために毎回俺が無理矢理寝かしつけているのだが。
夜に電気の光が漏れて、まだ仕事をしているのをバレないように閉めているカーテンを開けて部屋に日光を入れ、買ってきた食料で簡単に朝食を作り無理やり食わせ、くっさくなる前に入れと生徒会室の隣に設備されている浴室に蹴り飛ばし、忘れがちな昼飯と夜飯を口にぶち込み、寝ろと仮眠室に引きずっていく日々。
…こうして振り返ってみると俺は会長の世話をやく母的な存在になりつつある……って俺は会長の母じゃねぇっ!!

はぁ…もうやだ……




こんなの……見捨てることなんてできないじゃないか……
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

処理中です...