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崩壊の訪れと次への兆し
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なーんか、静かだな。タイピングの音もしない。動いている音もしない。仮眠室で寝てんのか?と思いつつ目の前をそり立つ書類の山を避けて、机に向かうと
「かいちょ?って…うわーぉ倒れてる~ねえ、会長~寝るなら仮眠室で寝てよ~」
机の上に腕を置いて崩れている会長。勢いよく倒れたからか、処理済みの書類の塔が崩れ去り、そこらへんに散らばっている。普通なら慌てるような状況だが俺はもう慌てない。こんなのが日常茶飯事になったからだ。保健室は遠いし、倒れる原因は睡眠不足と分かっている。
「あー、調節ミスったかな…まあいいや、運ぼ。」
そう言って会長を持ち上げる。もちろん姫抱きで、いやだって背負うのも大変だし、肩に腕持って足引きずらせながら運ぶのも重いし。結果、姫抱きに至るんだよ。断じて面白いからではないよ?
「んー、よいしょっと」
仮眠室のベットに会長を横たえさせてまじまじとその顔を見てみる。
きゅっと締まった厚い唇にスッと通った高い鼻。今は閉じられている長いまつ毛で縁取ったその中はコンタクトに覆われた赤い目。その目は見るものを吸い込んでいきそうで…って何を考えているのだろうか。
すよすよと寝ているさまは整った顔面のせいか、それとも体調不良のせいか血色が悪い肌の色でなのか人形のように見える。
その様子は自分の記憶の奥底に仕舞ったそれに重なり……
「……ッ」
その錯覚を振り払うように頭を振る。今はもうそんなことは考えなくていい。あれはもう終わったことなんだ。
とりあえず息苦しくならないようにその首のネクタイを少し緩める。
「……たい…き、すまな……」
一瞬起きたのかと思ったが違ったようだ。どうやら夢の中で副会長たちに謝っているそうだ。副会長達が来なくなって俺らは寝不足に見舞われているが、会長は仕事の量が多いから、というだけでなく副会長達のことを考える隙をなくそうと仕事にのめりこんでいたように見える。だからあまり寝ようとしないのだろう。余裕ができたら考えてしまうから。逃げている、とも言えるなこれは。
このままやっていたって酷使しすぎている体に限界がきて終わるだけなのに。
まあ、そうなるのを遅らすために毎回俺が無理矢理寝かしつけているのだが。
夜に電気の光が漏れて、まだ仕事をしているのをバレないように閉めているカーテンを開けて部屋に日光を入れ、買ってきた食料で簡単に朝食を作り無理やり食わせ、くっさくなる前に入れと生徒会室の隣に設備されている浴室に蹴り飛ばし、忘れがちな昼飯と夜飯を口にぶち込み、寝ろと仮眠室に引きずっていく日々。
…こうして振り返ってみると俺は会長の世話をやく母的な存在になりつつある……って俺は会長の母じゃねぇっ!!
はぁ…もうやだ……
こんなの……見捨てることなんてできないじゃないか……
「かいちょ?って…うわーぉ倒れてる~ねえ、会長~寝るなら仮眠室で寝てよ~」
机の上に腕を置いて崩れている会長。勢いよく倒れたからか、処理済みの書類の塔が崩れ去り、そこらへんに散らばっている。普通なら慌てるような状況だが俺はもう慌てない。こんなのが日常茶飯事になったからだ。保健室は遠いし、倒れる原因は睡眠不足と分かっている。
「あー、調節ミスったかな…まあいいや、運ぼ。」
そう言って会長を持ち上げる。もちろん姫抱きで、いやだって背負うのも大変だし、肩に腕持って足引きずらせながら運ぶのも重いし。結果、姫抱きに至るんだよ。断じて面白いからではないよ?
「んー、よいしょっと」
仮眠室のベットに会長を横たえさせてまじまじとその顔を見てみる。
きゅっと締まった厚い唇にスッと通った高い鼻。今は閉じられている長いまつ毛で縁取ったその中はコンタクトに覆われた赤い目。その目は見るものを吸い込んでいきそうで…って何を考えているのだろうか。
すよすよと寝ているさまは整った顔面のせいか、それとも体調不良のせいか血色が悪い肌の色でなのか人形のように見える。
その様子は自分の記憶の奥底に仕舞ったそれに重なり……
「……ッ」
その錯覚を振り払うように頭を振る。今はもうそんなことは考えなくていい。あれはもう終わったことなんだ。
とりあえず息苦しくならないようにその首のネクタイを少し緩める。
「……たい…き、すまな……」
一瞬起きたのかと思ったが違ったようだ。どうやら夢の中で副会長たちに謝っているそうだ。副会長達が来なくなって俺らは寝不足に見舞われているが、会長は仕事の量が多いから、というだけでなく副会長達のことを考える隙をなくそうと仕事にのめりこんでいたように見える。だからあまり寝ようとしないのだろう。余裕ができたら考えてしまうから。逃げている、とも言えるなこれは。
このままやっていたって酷使しすぎている体に限界がきて終わるだけなのに。
まあ、そうなるのを遅らすために毎回俺が無理矢理寝かしつけているのだが。
夜に電気の光が漏れて、まだ仕事をしているのをバレないように閉めているカーテンを開けて部屋に日光を入れ、買ってきた食料で簡単に朝食を作り無理やり食わせ、くっさくなる前に入れと生徒会室の隣に設備されている浴室に蹴り飛ばし、忘れがちな昼飯と夜飯を口にぶち込み、寝ろと仮眠室に引きずっていく日々。
…こうして振り返ってみると俺は会長の世話をやく母的な存在になりつつある……って俺は会長の母じゃねぇっ!!
はぁ…もうやだ……
こんなの……見捨てることなんてできないじゃないか……
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