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九月五 4
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吹っ飛んでいく宇治と花城。それと同時期に【白薔薇】と【黒真珠】の面々が空白を埋めるように走り寄ってきてお互いを殴り合う混戦となった。
やって来た一人に足払いをかけ後ろから殴りかかってきたやつの腹を振り向きざまに殴り倒れたそこに二人纏めて踵落としを食らわせる。すぐさま下に伏せて倒立の要領で後ろの人物の顎を蹴り上げ、体を捻って周囲の者共に蹴りを食らわしていく。
そのまま前に倒れ体を跳ね上げると半回転し、誰かの頭を足場として踏みつけて夜闇に高く跳び上がる。
そのまま誰もいない所に足を振り下ろすと豪音が鳴り、地面が陥没した。
そのままゆらりと立ち上がり指をくいっと内側に曲げ挑発した。
「どうした、お前らのそれは狩りという名のお遊戯か?」
その言葉に場は静まり、白と灰が笑った気配がした。
「どうしたのぉ~!僕らはもっとやれるよねぇ~!」
「「狙いはあのむっかつく黒だ!狐狩りだよ!」」
「理性を捨てろ!本能を呼び覚ませ!未だに野蛮になりきれないやつは【黒真珠】ではないぞっ!」
「あのお高くとまった白のやつらに屈辱というものを教えてやるぞ!」
それぞれの幹部が声を上げ、周囲は野太い叫びをあげ色違いのやつらを罵り殴る、牙を剥き、爪を掲げた。
「フッ―――」
「!?―――ギャアアアアアアアッ!!!」
背後から音もなく忍び寄ってきた猫目の少年の面にまっすぐ拳を叩きこんだ。
「黒っち、順調だね!」
「ふん、生温い」
「………いや、これだけやっておいてそれはないでしょ」
灰が周囲を見渡す。そこは既に黒に潰された者達が死屍累々と地に伏していた。
「今日は力を出すまでもないか」
少々失望の色がついた目で睥睨する。その金の光に見られた者共は緊張で一瞬硬直した。圧がかかったのだ、平伏せと。
「お前らは何をやってるんだ」
そこに呆れた声音を発する人物が一人、二人に近づいてきた。
「別に――」
「黒っちがやりごたえがないって言ってるんだよ!こんなにやってるのに!」
黒の言葉を遮って灰が白に言った。
「そんなにつまらないのなら、幹部のやつらを殴りに行けばいいだろう」
そう、白は黒を見た。金と金の眼光がぶつかる。一瞬、その場の磁場が歪む。その力の大きさに、周囲の勘のいい者共は地に平伏せた。
先に目を逸らしたのは黒だった。少し拗ねたように言う。
「そこまで行くのが面倒だ」
それを聞いた白は肩を竦める。
「まあ、うちの姫様だったらそう言うだろうな」
「姫っていうなよ……どこに姫要素があるんだ」
黒は自分の姿を見下ろした。187もある長身だ。確かに小食だから細身ではあるが、この身長では姫とは言えないだろう。男でも殆ど見下ろすぐらいだ。身近でも見上げる人物と言ったら椎倉ぐらいしかいない。
「ほら、こんな華奢だ、というか筋肉あるのか?がりっがりだぞ」
腕を取られる。確かに白の大きな手は腕を握っていても細い棒を握っているようにしか見えない。
「触るな、華奢なのが姫と言える要素とはならないだろう」
腕を振り払う。その下には見られたくないものが在る。容易に触れられて何時袖を捲られるかわかったものではない。
============
それは、王たる証である。
やって来た一人に足払いをかけ後ろから殴りかかってきたやつの腹を振り向きざまに殴り倒れたそこに二人纏めて踵落としを食らわせる。すぐさま下に伏せて倒立の要領で後ろの人物の顎を蹴り上げ、体を捻って周囲の者共に蹴りを食らわしていく。
そのまま前に倒れ体を跳ね上げると半回転し、誰かの頭を足場として踏みつけて夜闇に高く跳び上がる。
そのまま誰もいない所に足を振り下ろすと豪音が鳴り、地面が陥没した。
そのままゆらりと立ち上がり指をくいっと内側に曲げ挑発した。
「どうした、お前らのそれは狩りという名のお遊戯か?」
その言葉に場は静まり、白と灰が笑った気配がした。
「どうしたのぉ~!僕らはもっとやれるよねぇ~!」
「「狙いはあのむっかつく黒だ!狐狩りだよ!」」
「理性を捨てろ!本能を呼び覚ませ!未だに野蛮になりきれないやつは【黒真珠】ではないぞっ!」
「あのお高くとまった白のやつらに屈辱というものを教えてやるぞ!」
それぞれの幹部が声を上げ、周囲は野太い叫びをあげ色違いのやつらを罵り殴る、牙を剥き、爪を掲げた。
「フッ―――」
「!?―――ギャアアアアアアアッ!!!」
背後から音もなく忍び寄ってきた猫目の少年の面にまっすぐ拳を叩きこんだ。
「黒っち、順調だね!」
「ふん、生温い」
「………いや、これだけやっておいてそれはないでしょ」
灰が周囲を見渡す。そこは既に黒に潰された者達が死屍累々と地に伏していた。
「今日は力を出すまでもないか」
少々失望の色がついた目で睥睨する。その金の光に見られた者共は緊張で一瞬硬直した。圧がかかったのだ、平伏せと。
「お前らは何をやってるんだ」
そこに呆れた声音を発する人物が一人、二人に近づいてきた。
「別に――」
「黒っちがやりごたえがないって言ってるんだよ!こんなにやってるのに!」
黒の言葉を遮って灰が白に言った。
「そんなにつまらないのなら、幹部のやつらを殴りに行けばいいだろう」
そう、白は黒を見た。金と金の眼光がぶつかる。一瞬、その場の磁場が歪む。その力の大きさに、周囲の勘のいい者共は地に平伏せた。
先に目を逸らしたのは黒だった。少し拗ねたように言う。
「そこまで行くのが面倒だ」
それを聞いた白は肩を竦める。
「まあ、うちの姫様だったらそう言うだろうな」
「姫っていうなよ……どこに姫要素があるんだ」
黒は自分の姿を見下ろした。187もある長身だ。確かに小食だから細身ではあるが、この身長では姫とは言えないだろう。男でも殆ど見下ろすぐらいだ。身近でも見上げる人物と言ったら椎倉ぐらいしかいない。
「ほら、こんな華奢だ、というか筋肉あるのか?がりっがりだぞ」
腕を取られる。確かに白の大きな手は腕を握っていても細い棒を握っているようにしか見えない。
「触るな、華奢なのが姫と言える要素とはならないだろう」
腕を振り払う。その下には見られたくないものが在る。容易に触れられて何時袖を捲られるかわかったものではない。
============
それは、王たる証である。
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