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九月五日 3
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しばらく遠目に観戦していたら俺達に気づいたであろう、【白薔薇】の奥の方から飛び出てくるやつがいた。
「【MONOTONE】ですか、祭りに応じて巣から出てきたんですか?」
それは黒にはよく見覚えのある、ありすぎる人物だった。
「ああ、何やら騒がしかったのでな」
「貴方には話しかけていませんので」
丁寧ながらも毒のある言葉。顔に笑顔を貼り付けているそれは明らかに生徒会副会長の宇治であった。
普段とは違い、冷たくあしらわれるそれに黒は新鮮な気持ちになる。
「それは済まなかったな」
「あら、あらあらあら、似非笑顔さん、いかなことをして黒狐様に頭を下げさせているのでしょうか、不敬ですよね?」
そして新たに一人、加わったことによって話が混沌となる。来てしまったか……と黒は内心頭を抱える。
「ふふ、まさかまさか、この人が自発的に頭を下げただけですよ。決して私が強制したわけではございません」
「あらあらあら、なんということでしょうか、そんな態度が駄目だというのにこの人は全く分からない。ほら、そこの白い方、貴方が代わりにこの似非笑顔の頭を直してくれないでしょうか」
やってきたのは副風紀委員をやっている花城である。彼は【黒真珠】に所属していた。
「ふふふ、そんな白の御方を顎で使おうだなんてよくも私の前で出来ますね。潰しましょうか?」
このやり取りからわかるように【白薔薇】と【黒真珠】は敵対。また【白薔薇】は白を讃え、そして黒を敵視。【黒真珠】は黒を讃え、そして白を敵視している。
表で生徒会執行部と風紀委員会として組織しているそれは敵対をしているが、裏と言えるこの場でも対照的な色を付けた名前を代々世襲し、そこででもバチバチといがみ合っている。
そこに現れた【MONOTONE】という三人組。黒狐と灰狐と白狐、それぞれ名前の頭に色が付いているのだ。灰はともかく、黒と白はそれぞれの組織が引き込もうと躍起になっていた。
「しかし……」
皮肉なものだと黒は考えた。【白薔薇】は生徒会執行部……今代は咲弥以外が率いる族で表ではまあまあな仲であるが、この場では敵対視されている。反対に風紀委員会―――こちらもどうしてか、今代は風紀委員長以外であるが―――が率いる【黒真珠】に勧誘されたり、何故か神聖視されていたりする。
やはり名前に付く、色が問題なのだろうか。基本的に【MONOTONE】は三人一組で行動している。だからそこまで差がでるようなことはないはずなのだが……事実、灰はどちらからも敵視されたりしておらずな状態だ。
色だな、そう結論して終わった。ここで長々と考えている間に双方の口論は激化していた。表では咲弥と狐桜が口論して宇治と花城がそれを宥めていたが、今ではその宥める側が口論している。
しかし―――
「「そろそろやめろ」」
もう止めた方が良いだろう。その結論に今まで黙っていた白も辿り着いたのだろうか、黒と声が被る。
その声にパッと口を閉じる二人。
―――この言い合いも、一種のパフォーマンスとしても使っているのだろう。何せ、表でもいがみ合っているのが裏で手を取り合っているなど、気が確かではない。
そこで、二組織に認識されるまで至った【MONOTONE】――しかも黒と白が都合よくいるのだ、使わない手はないのだ。
要するに、俺達はこのパフォーマンスにダシにされた訳だ。
まあ、いがみ合うのもパフォーマンスだけが理由ではない気がするが……まあ、咲弥と狐桜が合わないように、宇治と花城も合わなかったりするのだろう。
「いつまでお喋りに時間を浪費するつもりだ?」
「俺達は祭りを見に来たんだよ」
―――だから、さっさと祭りを始めろよ。
そう、言外に言ったのに気づいたのだろう。二人とも表の時には見せない獰猛な笑みを浮かべ、目をぎらつかせた。
「そうですね、折角の夜ですから」
「少しでも早く、この人に日の目を見れないようにしないとですね」
息がぴったりだ。こいつら、案外仲がいいのではないか?と偶に思う時がある。
先程から二つの組織が黒達を囲っていた。いわば、この口論は前哨戦だ。今か今かと獰猛に笑って相手を潰す準備をしていた。
「おいおい、駄目だろ」
「俺達のことを忘れては、な」
祭りは見るだけだというのはつまらないだろう?自分も楽しむために見にやって来たのだ、俺達も交ぜやがれ。と一歩前に出て言った。
「さて」
「さあ」
「「祭りの始まりだ」」
二人は跳びあがり、手始めに宇治と花城を殴った。
「【MONOTONE】ですか、祭りに応じて巣から出てきたんですか?」
それは黒にはよく見覚えのある、ありすぎる人物だった。
「ああ、何やら騒がしかったのでな」
「貴方には話しかけていませんので」
丁寧ながらも毒のある言葉。顔に笑顔を貼り付けているそれは明らかに生徒会副会長の宇治であった。
普段とは違い、冷たくあしらわれるそれに黒は新鮮な気持ちになる。
「それは済まなかったな」
「あら、あらあらあら、似非笑顔さん、いかなことをして黒狐様に頭を下げさせているのでしょうか、不敬ですよね?」
そして新たに一人、加わったことによって話が混沌となる。来てしまったか……と黒は内心頭を抱える。
「ふふ、まさかまさか、この人が自発的に頭を下げただけですよ。決して私が強制したわけではございません」
「あらあらあら、なんということでしょうか、そんな態度が駄目だというのにこの人は全く分からない。ほら、そこの白い方、貴方が代わりにこの似非笑顔の頭を直してくれないでしょうか」
やってきたのは副風紀委員をやっている花城である。彼は【黒真珠】に所属していた。
「ふふふ、そんな白の御方を顎で使おうだなんてよくも私の前で出来ますね。潰しましょうか?」
このやり取りからわかるように【白薔薇】と【黒真珠】は敵対。また【白薔薇】は白を讃え、そして黒を敵視。【黒真珠】は黒を讃え、そして白を敵視している。
表で生徒会執行部と風紀委員会として組織しているそれは敵対をしているが、裏と言えるこの場でも対照的な色を付けた名前を代々世襲し、そこででもバチバチといがみ合っている。
そこに現れた【MONOTONE】という三人組。黒狐と灰狐と白狐、それぞれ名前の頭に色が付いているのだ。灰はともかく、黒と白はそれぞれの組織が引き込もうと躍起になっていた。
「しかし……」
皮肉なものだと黒は考えた。【白薔薇】は生徒会執行部……今代は咲弥以外が率いる族で表ではまあまあな仲であるが、この場では敵対視されている。反対に風紀委員会―――こちらもどうしてか、今代は風紀委員長以外であるが―――が率いる【黒真珠】に勧誘されたり、何故か神聖視されていたりする。
やはり名前に付く、色が問題なのだろうか。基本的に【MONOTONE】は三人一組で行動している。だからそこまで差がでるようなことはないはずなのだが……事実、灰はどちらからも敵視されたりしておらずな状態だ。
色だな、そう結論して終わった。ここで長々と考えている間に双方の口論は激化していた。表では咲弥と狐桜が口論して宇治と花城がそれを宥めていたが、今ではその宥める側が口論している。
しかし―――
「「そろそろやめろ」」
もう止めた方が良いだろう。その結論に今まで黙っていた白も辿り着いたのだろうか、黒と声が被る。
その声にパッと口を閉じる二人。
―――この言い合いも、一種のパフォーマンスとしても使っているのだろう。何せ、表でもいがみ合っているのが裏で手を取り合っているなど、気が確かではない。
そこで、二組織に認識されるまで至った【MONOTONE】――しかも黒と白が都合よくいるのだ、使わない手はないのだ。
要するに、俺達はこのパフォーマンスにダシにされた訳だ。
まあ、いがみ合うのもパフォーマンスだけが理由ではない気がするが……まあ、咲弥と狐桜が合わないように、宇治と花城も合わなかったりするのだろう。
「いつまでお喋りに時間を浪費するつもりだ?」
「俺達は祭りを見に来たんだよ」
―――だから、さっさと祭りを始めろよ。
そう、言外に言ったのに気づいたのだろう。二人とも表の時には見せない獰猛な笑みを浮かべ、目をぎらつかせた。
「そうですね、折角の夜ですから」
「少しでも早く、この人に日の目を見れないようにしないとですね」
息がぴったりだ。こいつら、案外仲がいいのではないか?と偶に思う時がある。
先程から二つの組織が黒達を囲っていた。いわば、この口論は前哨戦だ。今か今かと獰猛に笑って相手を潰す準備をしていた。
「おいおい、駄目だろ」
「俺達のことを忘れては、な」
祭りは見るだけだというのはつまらないだろう?自分も楽しむために見にやって来たのだ、俺達も交ぜやがれ。と一歩前に出て言った。
「さて」
「さあ」
「「祭りの始まりだ」」
二人は跳びあがり、手始めに宇治と花城を殴った。
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