キラワレモノノ学園

Lara

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九月五日 2

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「さて、それなら行こうか」
「えー、もうちょっとのんびりしたい~」
「なら一人でしていろ。俺たち二人だけで行く」
「えっ、ちょ、酷くない!?」

気安く言い合いをする白と灰をぼうっと見ていると、振り返った白が行くぞ、と言ってくる。

黒は、わかったと言って白と共に外へ出た。

「ま、待ってよ!」
「遅い」
「あれ?一瞬だったよね?遅れたの一瞬だったよね?」
「五月蠅い」
「やっぱり僕の扱い酷くない!?」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ灰を無視して廊下の窓を開けると、黒は空を見上げ耳を澄ました。遠くに大きく集まっている気配がある。大きさ的に、これは相対しているなと察する。

「探ってみたところ、第二体育館で【白薔薇】と【黒真珠】が相対しているな」
「え、なに、早速やりあってんの?血の気が多いな~」
「それって、面白そうだって言っていたお前が言えることではないよな?」

なんかムカつくことを言ってくる灰に白がツッコミを入れた。その通りだ。

【白薔薇】と【黒真珠】は二大の集団だ。

「行くぞ」
「おう」
「うん!」

そのまま窓から外に飛び出て木に飛び乗る。

この学園には、国の上級階級の子息が集まりやすい。その分、特殊な力を持っていたりするのだ。

普段は力を抑えるように枷を取り付けられているが、学園では特殊な機能により、五、十、十五…………と五の倍数の日の夜にその枷が取り外しできるようになる。

その時だけ、血の中を廻る本能を呼び起こし、寮から外に出て日頃のストレスを発散するのだ。

それが嫌な生徒だが、寮だけその枷を取り外すものは除外されているため、外に出ないで過ごす、ということになる。
だがまあ、基本的に寮から出ることはないため、支障はないのだが。

特殊な力を持つ者のほとんどは身体能力も強くなる。俺も例外ではなく、日頃少量の飯しか食べていない俺でも人間離れした動きができたりする。

夜闇の中、三つ分の音がした後、金色の光が瞬く。

余談だが、黒だけでなく、白も金色の瞳だったりする。灰だけは赤色だが、それだけが違う。

「………ここだな」
「うっわ、もう殴り合ってるんだ」
「まあ、この日ばかりは中に眠る本能も起きているんだ。仕方のないことだろう」

普段、美形を見てキャーキャー騒いでるチワワみたいなやつが牙に長い爪を生やして血走った目で襲い掛かっていたりするからな。

「う、うーん、確かに。位の低いやつだと本能の方が強くて負けちゃう子もいるぐらいだしね……」

その言葉に集団を見てみると、既に姿を完全に変えてしまっている者もいたりする。
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