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九月四日 9
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ついにこいつがおかしくなった。
テーブルを挟んで座っている会長様と会長様にしな垂れかかっている煉をみて思った。
今までも今までだったけど今日のはさらに酷い。自分はノンケだと言っていたというのに目をあいつらのようにハートにして会長様にくっついている。
そして今には会長様の首に腕を回して膝の上に乗っかってるし。こいつの思考回路が完全に理解不能だ。
「はぁ……会長様の中にあの子の何かを刺激するものが在ったのか……」
煉はこの学園の薄暗い所を今まで目に入らないように守られてきた。だからこそ、普通でいられたのだ。だけど今日、煉は会長様の異常を見てしまった。首を絞めるなんて恐ろしい行動に連は怯えると思っていたんだけど……
「ふぉ~っ!俺様会長×お色気親衛隊長!!ktkr!!!」
「うるさい」
「ふげっ」
いつの間にか隣にやって来て興奮しだした腐男子のこいつの頭を叩く。あれ…?この人さっき首絞められてたよね?なんでこんな元気なの?
あと会長様で妄想するのは許さないから。
「それにしても絵になるな~咲弥は」
直ぐに回復してうっとりと会長様を見つめる。その首には、はっきりと絞められた痕が付いていた。
「どうしてあなたは首を絞められたというのに平気でいられるの?」
「へっ?どうしてかだって?」
僕の問いに彼は一瞬きょとんとした顔をして―――その形相を変えた。
「それはね?咲弥に何されてもいいと思ってるからだよ?むしろ彼に殺されるのなら望んで殺されに行くよ?」
その言葉に一瞬理解が遅れ、背筋に寒気が走った。
ああ、彼もこの学園の生徒だったことを忘れていた。煉と同じように彼も何かしらの狂気を内に抱えているのだ。
それにしても会長様は腐男子ホイホイか何かなのだろうか。煉とこいつ以外にも会長様の交友関係に腐男子が二人いるんだけどその人達も会長様に懐いている。
「彼は僕を救ってくれたんだ。だから僕は咲弥が大好き。それこそ本当に殺されてもいいぐらいに。まあ、この好意に彼は応えてくれないけどね」
この人は本気だ。
よくこの人になら殺されてもいいっていう人はいるけれど、本当に殺されてもいいっていう人は案外少ない。皆見せかけなのだから。だけど稀にいるのだ。恐怖も本能も捩じ伏せてむしろ殺されに行く人が。
「あれ?なんでそんな緊張してるの?別に珍しくないでしょ?この人になら殺されても良いって言う人は」
「貴方は本気でしょう?」
「もちろんだよ!むしろなんで嘘を言わなきゃならないのさ」
わかってて言ってるよね。もう何年もこの学園にいるんだから。
「そっちのほうが珍しいから言ってるんだよ……わかってて言ってるでしょ?」
「そりゃあこれだけの年数ここにいるっていうのにわからなかったらただの馬鹿」
ズバズバと言うよねこの人。
黒と言うには少し薄い灰色の瞳をニンマリと弧に描いて会長様を見つめている。その瞳には煉のとは似たようで違う種類の執着が渦巻いていた。
「彼は―――咲弥は僕の全てだ。だから僕は全てを肯定する。彼が悔やみ、嘆き、悲嘆に暮れていたとしても」
ああ恐ろしい。この人もおかしい。けどそれを普通に受け入れている僕も恐ろしく思えて思わず笑ってしまう。
「僕は全てを受け入れる。それが咲弥だとするのなら」
こんなのが傍にいるって会長様も苦労するだろうな。こんな自分の狂気を理解しているやつほど恐ろしいやつはいない。―――何をしでかすかわからないから。
そして煉といいこの人といい腐男子という人種はまともなやつが……いたらここに来てないね。こいつらがおかしいだけだった。その行動力があるだけ更に質が悪い。
会長様には何か惹き付けるようなオーラと言うかカリスマがあるからなー
それがここで発揮されているというのは良いことなのか悪いことなのかわからないけど。少なくとも良いことだけでは終わらないだろう。既に煉とこの人を引っかけちゃってるし。
「仮に咲弥が何人も誑かしたって僕は気にしない。ただ傍にいて全てを受け入れるのみ。僕が望むのはそれだけだ」
ああ恐ろしい。こんなのがいたら一層会長様の守護を引き締めなければいけない。何か、会長様に何かあったらこの得体のしれない何かが暴れ出す。異様にはっきりとした寒気がその事を教えてくれた。
何の目的で今この時この場に現れたのか。いや、きっと会長様に会うためだけに来たんだろう。多分この人にとってはこの会話にも意味はない。
的なことでも考えてるのかな?少し青褪めた顔で僕と言葉を交えている。でもね、気をつけた方が良いんじゃないかなぁ。表情はまあ八十点を送ってあげようか。でもその目の感情は隠さなきゃね?なんか化け物を見るような目で見られるのは幾ら鋼の心臓を持つ第一級腐男子だとしても傷つくんだけど。
ああでもさっき言ったことは本心だよ?咲弥のことなら全てを受け入れよう。
それにどうやら同士である総隊長もこちら側に足を踏み入れてしまったようだからね。僕は歓迎するよ?これでより一層動きやすくなる。
どうやら最近親衛隊内でも不穏な動きが見えるようだからね。ここで見極めさせてもらおう。
一大イベントだ。果たしてこの二人はその動きに気づいているのか。気づいていないのか、それとも敢えて泳がせているのか、見ものだね。
テーブルを挟んで座っている会長様と会長様にしな垂れかかっている煉をみて思った。
今までも今までだったけど今日のはさらに酷い。自分はノンケだと言っていたというのに目をあいつらのようにハートにして会長様にくっついている。
そして今には会長様の首に腕を回して膝の上に乗っかってるし。こいつの思考回路が完全に理解不能だ。
「はぁ……会長様の中にあの子の何かを刺激するものが在ったのか……」
煉はこの学園の薄暗い所を今まで目に入らないように守られてきた。だからこそ、普通でいられたのだ。だけど今日、煉は会長様の異常を見てしまった。首を絞めるなんて恐ろしい行動に連は怯えると思っていたんだけど……
「ふぉ~っ!俺様会長×お色気親衛隊長!!ktkr!!!」
「うるさい」
「ふげっ」
いつの間にか隣にやって来て興奮しだした腐男子のこいつの頭を叩く。あれ…?この人さっき首絞められてたよね?なんでこんな元気なの?
あと会長様で妄想するのは許さないから。
「それにしても絵になるな~咲弥は」
直ぐに回復してうっとりと会長様を見つめる。その首には、はっきりと絞められた痕が付いていた。
「どうしてあなたは首を絞められたというのに平気でいられるの?」
「へっ?どうしてかだって?」
僕の問いに彼は一瞬きょとんとした顔をして―――その形相を変えた。
「それはね?咲弥に何されてもいいと思ってるからだよ?むしろ彼に殺されるのなら望んで殺されに行くよ?」
その言葉に一瞬理解が遅れ、背筋に寒気が走った。
ああ、彼もこの学園の生徒だったことを忘れていた。煉と同じように彼も何かしらの狂気を内に抱えているのだ。
それにしても会長様は腐男子ホイホイか何かなのだろうか。煉とこいつ以外にも会長様の交友関係に腐男子が二人いるんだけどその人達も会長様に懐いている。
「彼は僕を救ってくれたんだ。だから僕は咲弥が大好き。それこそ本当に殺されてもいいぐらいに。まあ、この好意に彼は応えてくれないけどね」
この人は本気だ。
よくこの人になら殺されてもいいっていう人はいるけれど、本当に殺されてもいいっていう人は案外少ない。皆見せかけなのだから。だけど稀にいるのだ。恐怖も本能も捩じ伏せてむしろ殺されに行く人が。
「あれ?なんでそんな緊張してるの?別に珍しくないでしょ?この人になら殺されても良いって言う人は」
「貴方は本気でしょう?」
「もちろんだよ!むしろなんで嘘を言わなきゃならないのさ」
わかってて言ってるよね。もう何年もこの学園にいるんだから。
「そっちのほうが珍しいから言ってるんだよ……わかってて言ってるでしょ?」
「そりゃあこれだけの年数ここにいるっていうのにわからなかったらただの馬鹿」
ズバズバと言うよねこの人。
黒と言うには少し薄い灰色の瞳をニンマリと弧に描いて会長様を見つめている。その瞳には煉のとは似たようで違う種類の執着が渦巻いていた。
「彼は―――咲弥は僕の全てだ。だから僕は全てを肯定する。彼が悔やみ、嘆き、悲嘆に暮れていたとしても」
ああ恐ろしい。この人もおかしい。けどそれを普通に受け入れている僕も恐ろしく思えて思わず笑ってしまう。
「僕は全てを受け入れる。それが咲弥だとするのなら」
こんなのが傍にいるって会長様も苦労するだろうな。こんな自分の狂気を理解しているやつほど恐ろしいやつはいない。―――何をしでかすかわからないから。
そして煉といいこの人といい腐男子という人種はまともなやつが……いたらここに来てないね。こいつらがおかしいだけだった。その行動力があるだけ更に質が悪い。
会長様には何か惹き付けるようなオーラと言うかカリスマがあるからなー
それがここで発揮されているというのは良いことなのか悪いことなのかわからないけど。少なくとも良いことだけでは終わらないだろう。既に煉とこの人を引っかけちゃってるし。
「仮に咲弥が何人も誑かしたって僕は気にしない。ただ傍にいて全てを受け入れるのみ。僕が望むのはそれだけだ」
ああ恐ろしい。こんなのがいたら一層会長様の守護を引き締めなければいけない。何か、会長様に何かあったらこの得体のしれない何かが暴れ出す。異様にはっきりとした寒気がその事を教えてくれた。
何の目的で今この時この場に現れたのか。いや、きっと会長様に会うためだけに来たんだろう。多分この人にとってはこの会話にも意味はない。
的なことでも考えてるのかな?少し青褪めた顔で僕と言葉を交えている。でもね、気をつけた方が良いんじゃないかなぁ。表情はまあ八十点を送ってあげようか。でもその目の感情は隠さなきゃね?なんか化け物を見るような目で見られるのは幾ら鋼の心臓を持つ第一級腐男子だとしても傷つくんだけど。
ああでもさっき言ったことは本心だよ?咲弥のことなら全てを受け入れよう。
それにどうやら同士である総隊長もこちら側に足を踏み入れてしまったようだからね。僕は歓迎するよ?これでより一層動きやすくなる。
どうやら最近親衛隊内でも不穏な動きが見えるようだからね。ここで見極めさせてもらおう。
一大イベントだ。果たしてこの二人はその動きに気づいているのか。気づいていないのか、それとも敢えて泳がせているのか、見ものだね。
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