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九月四日 8
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「……」
「……」
顔を動かさず横を少し見る。
鶴白と目が合って、また窓の外に戻した。
「……」
心の中でため息を吐く。先程から鶴白の視線がウザったらしくて仕方がない。
一時とはいえ激情に従って黄桜の首を絞めてしまった醜態を晒したが何故その異常者と言える俺を見つめるのか。
視線には熱が籠り、いつもは転校生やBLばかり見て興奮していた鶴白が今だけはそれをそっちのけで俺を見つめている。
普通ならビビッて俺から離れようとするものだと思うが。
と、いうか徐々に近づいてきてないか?もしや痛めつけられるのを好むというマゾなのだろうか……確かに鶴白は恋心に罵倒されても恋心と一緒にいるからな。
「……ふむ、鶴白」
「!?……あ、な、なんですか天川様」
言葉だけでは怯えているようにも見えるが、更に近づいてきている。その声にもどこか熱が入っていて椅子についていた手は俺の太腿の上にやんわりと乗っていた。
「近い」
「あ、す、すみません!つい……」
ついって何なのだろうか。マゾなのだろうな。ついって言いながら俺にしな垂れかかってくる。
こいつは自分の色気をわかっているのだろうか。いや、普段の様子を見ると自覚はしていないと思っていたが、こんな近距離で顔を赤くして密着してくるなどどこぞの娼婦でも裸足で逃げだすようなものだ。
荒い息が首筋に当たる。彼のスイッチはどこにあったのか、外から入学してきた彼はノンケを公言していたのだがそれも心からのものなのかわからない。
こうしている間にもテーブルを挟んだ向こうで恋心が鶴白の突然の豹変に引いている。引きながら顔を赤らめるとは器用なものだ。かわいらしい外見をしている彼も男だからな。
「んぅ……天川様」
「何だ」
「俺……頑張るから」
「そうか」
何を頑張るのだろうか。それだけ言われても意味が分からない。
そんなことは彼も百も承知であろう。それでも彼はふわりと笑ってみせる。ふとその目を窓の外に向ける。
「どうやら終わったみたいですよ、すっかり忘れてた」
「ん?ああ」
それに従って俺も窓から階下を見ると何故か縄でぐるぐる巻きになって動けなくなっている転校生、一匹狼擬きと爽やかな見た目のやつ。そしてぼんやりとだが見覚えのある増援であろう風紀委員、冷ややかな目で転校生を睨んでいる野郎がいた。
先程とは違い生徒の数も少なくなっていた。時間を確認してみると既に昼休憩は終わりに近づいていた。
その時、鶴白が俺の首に腕を回して頬を摺り寄せてくる。
「んふふ~すべすべ~」
「……」
お前には遠慮というものは無いのだろうか。……それとも鶴白もこの学園に染まってきたってことだろうか。
「ねぇ、天川様」
「何だ」
鶴白が俺の首に腕を絡めて頬にすり寄ってくる。
「もっとその魅力的なものを見せてほしいんだ」
「……何を」
「だから俺、もっと積極的にいくことにしたから」
「はぁ……聞く気もない、か」
「もっと、もっと……見つけてしまったんだ。天川様のせいで」
額と額をつけて至近距離から俺と目を合わせてくる。
「だから、責任取ってくださいね?」
自分のその美貌を最大限に発揮して微笑む。その瞳の奥に何か強い感情が沈殿しているのに今更気づく。
それに気づいた瞬間、自分の勘違いに気づく。
鶴白―――彼はこの学園に染まってきたのではない。元からどこか普通ではなかったからこの学園に誘い込まれるようにしてやってきたのだろう。
多分、先程までこいつ自身も気づいていなかった。その異常を。だからここまで大きく豹変できたのだ。これも一つの本性だろう。
「ふん、知らんな。勝手にすればいいだろう」
「そっか!それじゃあ好きに動かさせてもらいますから」
これがこの先どういうものを引き寄せるかわからないが、吹っ切れたのだなとわかる。
その方向が何故俺に来ているのかわからないがこいつも他のやつと同じなのだろうか。いや、今までは普通だったな。顔でもないだろう、何回も顔を合わせているがそんな素振りはなかった。ただ妄想のネタにはされたが。
ということは鶴白にしかわからない何かが俺にあったのか。
「ふふふ……ねぇ天川様」
「だから何だ」
「今夜天川様の部屋に遊びに行っていい?」
珍しいな、鶴白が自分から俺の部屋に来ようとするなんて。
「……いいぞ」
「やったぁ!楽しみだな~早く夜になってほしい」
しかし、いつまで抱き着くつもりなのだろうかこいつは。いつの間にやら俺の脚の上を跨いで向かい合うように抱き着いてきているしその柔らかな吐息が首にかかって擽ったい。
正直、その色気で今いろいろと落ち着かねぇ。ただ無感情に見ているから大丈夫だが、そこらのやつでは直ぐに堕ちるだろうな。
何で鶴白はここまで色気が出てくるのか。チェリーを公言しているからヤりまくって出てきたっていう線は多分ないだろう。そういう色気はふとした時に出てくるものだからな。
そして、今、更にそれが増している。まるで恋した女みたいな……
…………
まあいいだろう。気のせいの可能性の方が大きい。別にその可能性があったとしても応えることはない。
=========
今の鶴白は恋は盲目状態なので興奮しています。自分の現状がわからないぐらいに興奮しています。主人公しか見えてません。なので首筋に顔を近づける、額と額をくっつけてMK3の距離でも気にしていません。ある意味夜のお誘いをしているのにも気づいていません。(夜遊びに行くはそのまんまの意味です。色気と現在の体制で違う意味に捉えられますがw)
なのでそれが収まった時、大きく身もだえる様子が…………
「……」
顔を動かさず横を少し見る。
鶴白と目が合って、また窓の外に戻した。
「……」
心の中でため息を吐く。先程から鶴白の視線がウザったらしくて仕方がない。
一時とはいえ激情に従って黄桜の首を絞めてしまった醜態を晒したが何故その異常者と言える俺を見つめるのか。
視線には熱が籠り、いつもは転校生やBLばかり見て興奮していた鶴白が今だけはそれをそっちのけで俺を見つめている。
普通ならビビッて俺から離れようとするものだと思うが。
と、いうか徐々に近づいてきてないか?もしや痛めつけられるのを好むというマゾなのだろうか……確かに鶴白は恋心に罵倒されても恋心と一緒にいるからな。
「……ふむ、鶴白」
「!?……あ、な、なんですか天川様」
言葉だけでは怯えているようにも見えるが、更に近づいてきている。その声にもどこか熱が入っていて椅子についていた手は俺の太腿の上にやんわりと乗っていた。
「近い」
「あ、す、すみません!つい……」
ついって何なのだろうか。マゾなのだろうな。ついって言いながら俺にしな垂れかかってくる。
こいつは自分の色気をわかっているのだろうか。いや、普段の様子を見ると自覚はしていないと思っていたが、こんな近距離で顔を赤くして密着してくるなどどこぞの娼婦でも裸足で逃げだすようなものだ。
荒い息が首筋に当たる。彼のスイッチはどこにあったのか、外から入学してきた彼はノンケを公言していたのだがそれも心からのものなのかわからない。
こうしている間にもテーブルを挟んだ向こうで恋心が鶴白の突然の豹変に引いている。引きながら顔を赤らめるとは器用なものだ。かわいらしい外見をしている彼も男だからな。
「んぅ……天川様」
「何だ」
「俺……頑張るから」
「そうか」
何を頑張るのだろうか。それだけ言われても意味が分からない。
そんなことは彼も百も承知であろう。それでも彼はふわりと笑ってみせる。ふとその目を窓の外に向ける。
「どうやら終わったみたいですよ、すっかり忘れてた」
「ん?ああ」
それに従って俺も窓から階下を見ると何故か縄でぐるぐる巻きになって動けなくなっている転校生、一匹狼擬きと爽やかな見た目のやつ。そしてぼんやりとだが見覚えのある増援であろう風紀委員、冷ややかな目で転校生を睨んでいる野郎がいた。
先程とは違い生徒の数も少なくなっていた。時間を確認してみると既に昼休憩は終わりに近づいていた。
その時、鶴白が俺の首に腕を回して頬を摺り寄せてくる。
「んふふ~すべすべ~」
「……」
お前には遠慮というものは無いのだろうか。……それとも鶴白もこの学園に染まってきたってことだろうか。
「ねぇ、天川様」
「何だ」
鶴白が俺の首に腕を絡めて頬にすり寄ってくる。
「もっとその魅力的なものを見せてほしいんだ」
「……何を」
「だから俺、もっと積極的にいくことにしたから」
「はぁ……聞く気もない、か」
「もっと、もっと……見つけてしまったんだ。天川様のせいで」
額と額をつけて至近距離から俺と目を合わせてくる。
「だから、責任取ってくださいね?」
自分のその美貌を最大限に発揮して微笑む。その瞳の奥に何か強い感情が沈殿しているのに今更気づく。
それに気づいた瞬間、自分の勘違いに気づく。
鶴白―――彼はこの学園に染まってきたのではない。元からどこか普通ではなかったからこの学園に誘い込まれるようにしてやってきたのだろう。
多分、先程までこいつ自身も気づいていなかった。その異常を。だからここまで大きく豹変できたのだ。これも一つの本性だろう。
「ふん、知らんな。勝手にすればいいだろう」
「そっか!それじゃあ好きに動かさせてもらいますから」
これがこの先どういうものを引き寄せるかわからないが、吹っ切れたのだなとわかる。
その方向が何故俺に来ているのかわからないがこいつも他のやつと同じなのだろうか。いや、今までは普通だったな。顔でもないだろう、何回も顔を合わせているがそんな素振りはなかった。ただ妄想のネタにはされたが。
ということは鶴白にしかわからない何かが俺にあったのか。
「ふふふ……ねぇ天川様」
「だから何だ」
「今夜天川様の部屋に遊びに行っていい?」
珍しいな、鶴白が自分から俺の部屋に来ようとするなんて。
「……いいぞ」
「やったぁ!楽しみだな~早く夜になってほしい」
しかし、いつまで抱き着くつもりなのだろうかこいつは。いつの間にやら俺の脚の上を跨いで向かい合うように抱き着いてきているしその柔らかな吐息が首にかかって擽ったい。
正直、その色気で今いろいろと落ち着かねぇ。ただ無感情に見ているから大丈夫だが、そこらのやつでは直ぐに堕ちるだろうな。
何で鶴白はここまで色気が出てくるのか。チェリーを公言しているからヤりまくって出てきたっていう線は多分ないだろう。そういう色気はふとした時に出てくるものだからな。
そして、今、更にそれが増している。まるで恋した女みたいな……
…………
まあいいだろう。気のせいの可能性の方が大きい。別にその可能性があったとしても応えることはない。
=========
今の鶴白は恋は盲目状態なので興奮しています。自分の現状がわからないぐらいに興奮しています。主人公しか見えてません。なので首筋に顔を近づける、額と額をくっつけてMK3の距離でも気にしていません。ある意味夜のお誘いをしているのにも気づいていません。(夜遊びに行くはそのまんまの意味です。色気と現在の体制で違う意味に捉えられますがw)
なのでそれが収まった時、大きく身もだえる様子が…………
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