キラワレモノノ学園

Lara

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九月四日 5

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「さーて、何を食べよっかな~」

鶴白が椅子に座り背を伸ばして反対側に置いてあるタブレットを手に取った。

「俺は……フレンチサラダでいい」
「あいあ~い、って、それだけでいいんですか?」
「ああ」

別に腹は減ってないしな。そもそも昼はそこまで食べようとも思わない。しっかりと食べるのは夕食ぐらいだ。朝はヨーグルトで済ませている。

「りょ、奏人は?」
「僕はネギトロ丼」
「オッケー俺は焼肉定食にしよっと」
「煉っていつも肉ばっかりだよね」
「そういう奏人こそ魚ばっかりじゃん」

ある意味似た者同士だな。

「いいでしょ!DHAとかEPAとかいっぱい入ってるもん!」
「こっちだってタンパク質が多いから!」
「魚にだってタンパク質いっぱいあるし」
「何をぅ?」

食物に含まれている栄養で競っている。俺としては好きな食べ物があるだけでも羨ましいものだがな。

「戯れるのはそれぐらいにしたらどうだ、もう来たぞ」
「あっ!天川様ごめんなさい……」
「あっ、いい匂い!美味しそうだね!」
「あんたも謝りなさいよっ!この馬鹿ッ!」

別に気にしてないんだが、まあ気を使われて悪い気はしない。流石に度を越されたりすると反対に苛つきも覚えるものだがな。

フォークで野菜を刺して口に運ぶ。程よい冷たさとシャキシャキとした食感が心地よい。食事は温度と食感があることだけが救いだ。だからこうして少しだけでも食べようという気が起こる。

「ああ、それにしても王道だよね。王道転校生であるリンは同じクラスになった一匹狼と爽やかくんを虜にしたし、さらにAクラスの茶道部の美人さんも周りに侍らせてるし。ただ、担任のホストが恋とか愛とかではなくて手のかかる弟を相手するような感じなのが不満なんだよね。それだけが不満なんだよ。伯父である理事長はデレッデレの甘々なのにさホストだけなんかしょうがねぇなって言って見てるんだよ。そこはもっとほら何をやってるんだ?そんなやつら親衛隊は気にしないで俺だけを見てろよ。とか、何寝てんだこれを解け、さもなくばキスすんぞ……ディープのなとか言いながらにやりと笑って転校生が赤面でうひゃー!ってやつを見たいんだよ!なのに現実はおい何やってんださっさとこれを解け。手のかかるやつだな……って感じなんだよ!おかしいだろここ王道学園だろ!?生徒会も俺様に笑顔擬きにチャラ男でしょ?そんでわんこに一卵性双生児。山奥の寮制の男子校だしお坊ちゃんが通ってるし実際にBのLがそこらかしこに存在して親衛隊制度もある。なんで?なんでそこだけ違うの!?」
「うっさいよ!それに何!?生徒会の皆様をそんな風に見てたの?ありえない!一回屋上から飛び降りて生まれてきたことを悔い改めなさいな!」

『―――――、――――』

一瞬、目の前が暗転して気が付いたら元の明るい室内を映した。

皿を見下ろすとサラダは既に無く、どうやら食べきっていたらしい。

「とりあえず煉、息大丈夫か?」
「あ、だいじょうぶでひぐぇ……っー舌噛んだ……」
「あーあ、って舌出さないでよこの色悪魔っ!」
「色悪魔ってナニッ!?」

痛ーいとか言いながら赤い舌をぺろりと出す。ただの男がやっていたら何とも思わんがこいつがやると尋常ではない色気が出てくる。こいつは平凡とまでは思ってはいないが少し顔が良い程度としか思っていないためよくこういうことが起こる。無自覚とは恐ろしいものだな。何時被害が出てくるかわかったものではない。

階下では安心して食べられたものではないので役員専用の階を使用したが今思えば英断だったとわかる。よくやった恋心。わざわざ上に来るのは面倒だと思ったが説得しにかかった彼はきっとこの事態を見越していたのだろう。こいつなら何かしらをやらかすと。

そもそもあんな長文息継ぎ無しで早口で言ったというのにそこで噛むというのもどうなんだって話だが。

「いいからもう飯を食え。昼休憩終るぞ」
「あっ、食べます食べます!それに下の子達のBL成分を補給しないと!」
「ん、僕ももう少しだから早く食べよ」
「会長様はもう食べたんですね」
「ん?ああ、これだけだしな」
「前から思ってましたけどそんな少量で足りるんですか?俺達男子高校生ですよ?お腹すきません?」
「……あまり、食うのは楽しみとは思えないからな」

俺にとって食べるというのは一番大切な部分が欠けている。幼い頃はまだ大丈夫だったがいつしかそれは無くなってしまった。もうそれがどんなものだったかでさえ覚えていない。

「それに……食べる、という行為に苦手意識を抱いているのもある」
「あ……言いづらいことを聞いちゃってごめんなさい……」
「別に気にしていない。ここではこんなこともありふれた、とまではいかないが他にもいるだろう」
「そうですよね……ここが学園だという意味を忘れてました」
「そんな気にするな。ここでは誰が、どんな事が、タブーであるかは未知数だ。全てを回避しようとしたら動けなくなってしまう」

全部気にして迂回しようとしたら一クラス分の人数だとしても気にしたら全く動くことも喋ることもできなくなるぞ。

「それに、人生の中で起こる悲劇が年齢にしては多いだけのこと。煉、これだけは言っておこう。同じ高等部からの入学した者であり、また彼らと同じ人に言えないような過去を持つ者として」

それでも、この学園の中では普通に生きたい。そう思っている人だって沢山いるだろう。中にはそんな過去を乗り切って前を向き始めた生徒だって一学年だとしてもいるはずだ。

「決して同情するな。それはこちらからすれば琴線に触れる行為であり、侮辱そのものだ」

確かに被害者である自分によって同情にいい気になる人物もいるだろう。

しかし

「何も知らないやつが大変だったね、と言ってきたとしてもお前に何がわかるとしか思わない。神経を逆撫でするようなことだ」

同情とは、他人の苦しみや悩みなどに対して、自分のことのように親身になって、一緒に感じて悩むことだ。細かく言えば、だが。そしてもう一つの意味で不幸な人を可哀想だとか言って憐れんだりする・・・・・・・

自分のことのように?何も体験していないお前がどうやって自分のことのように感じることができる?イメージだと?そもそもその行為自体しないだろう。辛く感じたつもりになるだけだ。
そして憐みだ。可哀想とはそもそも見下しているということだ。上の者が下の者に対して、幸せな自分が不幸な他人を下に見て、そんな人生で残念だったねって、幸せでいられなくて大変だねって見ていることだ。

ふざけるな、何も知らずにのうのうと光を浴びて笑っていられるお前が、可哀想にだと?ただの他人が粋がってんじゃねぇよ。

「実際にその同情で刃傷沙汰が二件起こった。どちらも夏季休暇中だからそこまで話は広がってなかったそうだが。知っているやつは知っているだろうし、これは毎年起こっている」
「そんなに……」
「ありえない、そう思ったか?だったら認識が甘かったとしか言いようがない。それ程のものだ、高々同情程度でと思うやつも多いだろうが中にはその程度で殺意を募らせる者もいたりする」

愕然としている鶴白に対して恋心は感情の揺らぎもなくただ俺を見て話を聞いていた。彼は……確か初等部での編入だったか。親衛隊の上位部くらいはその経歴、性格ぐらいは把握している。流石に親衛隊全員を覚えるという作業はまだ・・できない。そもそも、時間が足りない。仕事の合間や暇つぶしとかで確認したりしているが、それでも生徒会の親衛隊は学園全体で二割程度。それでも学園生徒が千四百強、それで二割と言うと二百八十以上だ。まだまだ把握するには至らないし、そもそもの問題そこまでやるつもりはない。


=====================
同情は相手とTPOを守って使おうね☆実際普通にムカつくもんはムカつくから。

まぁ、本編での咲弥の考え方はかなり尖らせてます^^
彼、いろいろと擦れてるし、ズレてるんで。でも俺も突き詰めれば結局はそこに行きつくかな~って感じでしょうか?知らないけど(笑)それに他の人でどう思うかは人それぞれですしね。

でも、かなり精神が不安定だと刃傷沙汰もあり得るかなって思う。だから人付き合いは気を付けましょうね☆(←言い方かなりキモいというか何様)

さて、そろそろ学園の事情もまあまあ見えてきた頃かな?俺ってある程度状況を公開してから話を繰り広げていくタイプらしいんだよね。だから小説書くの下手なんかねwww

因みに学園の事情と言ってもそれが下地である、というかそのことが根幹に関わっていると見れるからこんな早くに公開してます。そしてこれはまだ触りにすぎません。

華やかなる学園

しかし光り輝いている分、闇も深まる

それは大人達の勝手なる見栄みえと意図により作り上げられた学園泥沼

ただただ、生徒達はその底で抗うこともせずに見えない光を目を細めて見ているのです。
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