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九月四日 4
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双子と別れた後、喉が渇いたので近くの自販機から水を買って一口飲んだ。口内に冷たさが走り、喉に滑り落ちて飲み込むとその冷気で頭が少しすっきりした。
渡辺兄弟にも聞かれたがこのセーターは暑い。下には長袖のワイシャツも着ているためなおさらだ。
暑い、暑いがしかし脱ぐことはできない。アレが無かったら俺だって涼しい格好でいたんだが……な。流石にアレを見せることはできない。幾らかの生徒の深い部分を刺激してしまうかもしれない、いやするだろう。それ程のものだ。
だからこそ、俺だって金星のようにセフレとか作ってはいるが服を脱いで致すことは一切無いため肌を見せることはない。それにセフレと言っても頼まれて相手をしているだけでそれなら、と性欲の解消をするために作っているから肌を見せる必要はさらさら無い。
それに相手している奴らも着衣プレイが好きなんだと勘違いしているようだしな。別に否定するまでもないしそのまま放置している。
「ふぅ……」
ペットボトルの中の水が太陽の光を反射する。ゆらゆらと揺れるそれを目を細めて見ていたが、その時チャイムが鳴った。
「……今のは、昼休憩のものか」
教室から出てきたのか遠くでざわざわと声が聞こえる。俺も飯を食うか?
…いや、腹はあんまり減ってねぇな。普通に生徒会室に戻るか。流石に暑い、着ているものもそうだし熱中症になる前に中に入るか。
校舎の中は冷房がよく効いているので外の暑さの名残は一切なく、肌の表面を冷気が撫ぜた。
昇降口や窓と言った外と繋がる場所はしっかりと閉めて冷気が外に逃げないようにしている。ただでさえ校舎は大きく冷やすのにも時間がいるというのに窓まで開けてたらどうしようもない。
因みにだが開けたまま放っておいた馬鹿者は周りから冷たい目で見られる。
「あっ、会長様だ!会長様も今からご飯ですか?」
「ちょっと!煉走らないでっ!他の人とぶつかったらどうするのっ!」
呼ばれたので声の主を見るとこちらに走り寄ってきた。
「お久しぶりですね!相変わらず攻めっ気がっぉぃ…」
「もうっ!何言ってるの失礼でしょ!いい加減天川様を穢すのを止めなさいっ!」
「……相変わらずだな鶴白、恋心」
「毎度このお馬鹿が申し訳ございませんっ!」
「痛っ!?もう、何で叩くんだよ!」
「それは自分の胸に手を当てて聞いてみなさいよっ!本っ当に!毎回っ!」
彼らは俺たち生徒会の親衛隊だ。鶴白は生徒会を纏める総隊長であり、俺の親衛隊長。恋心はそんな彼を支える副総隊長であり、宇治の親衛隊長だ。それぞれ兼任している。
この会話でわかる通り、鶴白も腐男子だ。最近よくあるらしい王道通りのキャラだと黄桜は興奮していた。俺も学園での参考にするために読んではいるが確かにその通りだと思う。
王道学園と名高い(?)この学園に入学し、親衛隊はあまりよく思われていないとの評判をどこかしらから聞いてきたので襲われないために入隊。そしてあれよあれよと言ううちに何故か総隊長へ。
当初は王道通りにならないように生徒会ではないが人知れず人気であった俺の親衛隊に入ったがどうしてか生徒会に就任したため結局は王道通りになってしまったらしい。俺は親衛隊関係はほぼ放置しているため誰が隊長かすら知らなかったが。初めて会った時は思わず空を仰いだ。
『うっは、無表情俺様会長…やっぱこれは攻め……いやしかし美人系でもあるから受けもあり……?』
小声だったため聞こえていないと思ったのだろう。がっつりと聞こえていたが。
彼は自分では平凡だのとほざいてはいるが事実は色気が溢れ出てくる美男子だ。目じりに沿って下がっていく垂れ目、線の通った鼻筋にぽってりとした赤い唇、唇の斜め下にある黒子。
暗い茶色の少し癖っ気のある髪は片耳に掛けられ、その下の白い首筋が男共の目を釘付けにする。
まあ黄桜同様オープン腐男子……というかその唇から出てくる妄想が台無しにしていたが。
しかし、その色気にやられて抱かれたいという生徒も居るにはいるし、反対の者ならここでは当然。
「うっ、会長様ゴメンナサイ……」
「ちゃんと目を見て謝りなさい!常識でしょ!」
「奏人は俺の母ちゃんかぁっ!?」
「やめてよっ!煉の母親なんて気苦労が絶えない!」
「その返しは流石に胸に来る……」
「当たり前でしょ!今までの仕打ちを思い出しなさいっ!」
目の前で鶴白とコントを繰り広げている恋心はチワワのような愛らしさを持つ。しかし……こうしてみるとよくわかるが彼は学園内では鶴白の保護者のような存在である。暴走する鶴白を叱っている姿は今や生徒会親衛隊の風物詩の一つである。
ああもう胃が痛い……と胃の付近を抑えている彼には同情を禁じざるを得ない。
「あっ!そうだった!会長様はもうご飯食べました?」
「いや?食べていないが……」
「そうですか!なら一緒に食べに行きませんか?今から奏人と食堂にご飯食べに行くんですよ」
腹は減っていないが……まあ、いつものことか。
頷いて承諾すると頬を赤く染めて喜んだ。こんな道中で色気を振りまくんじゃない。ああ、周りのやつらが前かがみになってトイレに入っていった……
「もう、なんでこの子はこうやって被害を拡大していくんだろう……」
「え?」
「もういい……いくよ煉!天川様もお待たせしてしまい申し訳ございません」
「別にそこまで待ってるわけではないからいい。ただこいつのこれは抑えられるようにした方が良いと思うがな」
「本当に申し訳ございません」
お前だよ鶴白。なに自分じゃありませんと他人事でいるんだ。これ以上被害を出さねぇために自覚してさっさとその色気を抑える術を学びやがれ。
渡辺兄弟にも聞かれたがこのセーターは暑い。下には長袖のワイシャツも着ているためなおさらだ。
暑い、暑いがしかし脱ぐことはできない。アレが無かったら俺だって涼しい格好でいたんだが……な。流石にアレを見せることはできない。幾らかの生徒の深い部分を刺激してしまうかもしれない、いやするだろう。それ程のものだ。
だからこそ、俺だって金星のようにセフレとか作ってはいるが服を脱いで致すことは一切無いため肌を見せることはない。それにセフレと言っても頼まれて相手をしているだけでそれなら、と性欲の解消をするために作っているから肌を見せる必要はさらさら無い。
それに相手している奴らも着衣プレイが好きなんだと勘違いしているようだしな。別に否定するまでもないしそのまま放置している。
「ふぅ……」
ペットボトルの中の水が太陽の光を反射する。ゆらゆらと揺れるそれを目を細めて見ていたが、その時チャイムが鳴った。
「……今のは、昼休憩のものか」
教室から出てきたのか遠くでざわざわと声が聞こえる。俺も飯を食うか?
…いや、腹はあんまり減ってねぇな。普通に生徒会室に戻るか。流石に暑い、着ているものもそうだし熱中症になる前に中に入るか。
校舎の中は冷房がよく効いているので外の暑さの名残は一切なく、肌の表面を冷気が撫ぜた。
昇降口や窓と言った外と繋がる場所はしっかりと閉めて冷気が外に逃げないようにしている。ただでさえ校舎は大きく冷やすのにも時間がいるというのに窓まで開けてたらどうしようもない。
因みにだが開けたまま放っておいた馬鹿者は周りから冷たい目で見られる。
「あっ、会長様だ!会長様も今からご飯ですか?」
「ちょっと!煉走らないでっ!他の人とぶつかったらどうするのっ!」
呼ばれたので声の主を見るとこちらに走り寄ってきた。
「お久しぶりですね!相変わらず攻めっ気がっぉぃ…」
「もうっ!何言ってるの失礼でしょ!いい加減天川様を穢すのを止めなさいっ!」
「……相変わらずだな鶴白、恋心」
「毎度このお馬鹿が申し訳ございませんっ!」
「痛っ!?もう、何で叩くんだよ!」
「それは自分の胸に手を当てて聞いてみなさいよっ!本っ当に!毎回っ!」
彼らは俺たち生徒会の親衛隊だ。鶴白は生徒会を纏める総隊長であり、俺の親衛隊長。恋心はそんな彼を支える副総隊長であり、宇治の親衛隊長だ。それぞれ兼任している。
この会話でわかる通り、鶴白も腐男子だ。最近よくあるらしい王道通りのキャラだと黄桜は興奮していた。俺も学園での参考にするために読んではいるが確かにその通りだと思う。
王道学園と名高い(?)この学園に入学し、親衛隊はあまりよく思われていないとの評判をどこかしらから聞いてきたので襲われないために入隊。そしてあれよあれよと言ううちに何故か総隊長へ。
当初は王道通りにならないように生徒会ではないが人知れず人気であった俺の親衛隊に入ったがどうしてか生徒会に就任したため結局は王道通りになってしまったらしい。俺は親衛隊関係はほぼ放置しているため誰が隊長かすら知らなかったが。初めて会った時は思わず空を仰いだ。
『うっは、無表情俺様会長…やっぱこれは攻め……いやしかし美人系でもあるから受けもあり……?』
小声だったため聞こえていないと思ったのだろう。がっつりと聞こえていたが。
彼は自分では平凡だのとほざいてはいるが事実は色気が溢れ出てくる美男子だ。目じりに沿って下がっていく垂れ目、線の通った鼻筋にぽってりとした赤い唇、唇の斜め下にある黒子。
暗い茶色の少し癖っ気のある髪は片耳に掛けられ、その下の白い首筋が男共の目を釘付けにする。
まあ黄桜同様オープン腐男子……というかその唇から出てくる妄想が台無しにしていたが。
しかし、その色気にやられて抱かれたいという生徒も居るにはいるし、反対の者ならここでは当然。
「うっ、会長様ゴメンナサイ……」
「ちゃんと目を見て謝りなさい!常識でしょ!」
「奏人は俺の母ちゃんかぁっ!?」
「やめてよっ!煉の母親なんて気苦労が絶えない!」
「その返しは流石に胸に来る……」
「当たり前でしょ!今までの仕打ちを思い出しなさいっ!」
目の前で鶴白とコントを繰り広げている恋心はチワワのような愛らしさを持つ。しかし……こうしてみるとよくわかるが彼は学園内では鶴白の保護者のような存在である。暴走する鶴白を叱っている姿は今や生徒会親衛隊の風物詩の一つである。
ああもう胃が痛い……と胃の付近を抑えている彼には同情を禁じざるを得ない。
「あっ!そうだった!会長様はもうご飯食べました?」
「いや?食べていないが……」
「そうですか!なら一緒に食べに行きませんか?今から奏人と食堂にご飯食べに行くんですよ」
腹は減っていないが……まあ、いつものことか。
頷いて承諾すると頬を赤く染めて喜んだ。こんな道中で色気を振りまくんじゃない。ああ、周りのやつらが前かがみになってトイレに入っていった……
「もう、なんでこの子はこうやって被害を拡大していくんだろう……」
「え?」
「もういい……いくよ煉!天川様もお待たせしてしまい申し訳ございません」
「別にそこまで待ってるわけではないからいい。ただこいつのこれは抑えられるようにした方が良いと思うがな」
「本当に申し訳ございません」
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