キラワレモノノ学園

Lara

文字の大きさ
上 下
12 / 28

九月四日 1

しおりを挟む
「………はぁ」

今日もまた、届けられた書類の文面を見てため息を吐く。窓の外では瑠璃色の蝶がひらひらと優雅に舞っていた。
俺がため息を吐いたのは仕事をさばくのが嫌だからではない。書いてある内容に頭が痛くなったからだ。額を抑えて見たくもない文を追っていく。

「日に日に被害が大きくなっていくな……」

今読んでいるのは嘆願書。日頃学園で過ごしていくうちにこれが欲しい、あれは不便だから変えてほしい、等々要望を書いてあるものだ。これを使い、内容を精査しいいだろうと思った要望を叶える為に動くのだが……

「中でも転校生の被害が一番多いみたいだな……」
「ん~?あまちゃんどうしたのぉ?」
「あ?ああ、これだがな……」

手に持っていた書類を見せると金星はすぐに複雑な表情になった。

「あ~……転校してきて数日でここまで被害が出るとねぇ……あれだねぇ……」
「椅子を投げて破壊、クラスメイトを殴って怪我をさせ、さらには周囲に侍らせた生徒によって暴言を……とな、読んでいってもきりがない。これも、これも……今朝届けられた嘆願書の三分の一程は転校生がらみだぞ」

どれを見ても奈佐木リンが奈佐木リンが……といった状態で見るだけでも嫌になる。それに椅子だけではなく廊下の調度品……まあ壺や絵画とかもだな、ここにあるからある程度は高級品なのだが……これがここ数日で何個も壊されているのだ。

これも転校生の家に弁償金を請求してはいるが、中には巨匠が作ったこの世に一つしかない傑作も壊されてしまったそうだ。
それにこれを見ているとこの短期間でここまでの被害を受けているのでまだ無事なものもこのまま置いたままにするかどうかというのもある。しかし退避させたとして置く場所をどうするか、倉庫に仕舞っておくのか自由に観覧できるようにするのか、そして観覧できるようにするのならどこにそのスペースを作るのか。

これ一つでここまで考えなければいけない。時間も有限、これ以外にも仕事は溜まっていくし転校生一人のせいで出来上がっていく案件にため息を抑えることはできない。

「いい加減、どうにかしねぇと更に荒れそうだ」
「う~ん、そうだよねぇ~僕関わりたくないんだけどなぁ~」
「俺もだ」
「だよねぇ~」

腐男子のやつらは王道転校生だと歓喜したが俺らからすれば頭痛の種でしかない。礼儀もない、暴力的、そして訳の分からない矛盾した自論を持ちだして他のやつらを弾劾する。

どうにかしたいが、こればっかりはどうすることもできない。こういうのは大体Fクラス送りになるのだが……

「理事長のコネでSクラス入りだからな」
「ん~?ああ~そういうことぉ」

手を打って納得した声を出す。本来ならば転校してきたときの転入試験や、他の条件によってクラスの配置をしていたのだが……今回、転校生はFクラスに入るはずがSクラスとなった。

クラスの配置条件だが、第一に家柄だ。ここは試験結果だと言いたいところだがそんな常識この学園では通用しない。
第二に試験結果。そして第三に

顔だ。

……どうしてそうなったのかは知らん。ただ選考基準がそう書いてあった。これを作り上げたやつの頭は桃色だったのだろう。それかただの面食いか。ともかくそちらに関しては俺は関与していないのでどうとも言えない。

しかし、Fクラスだけは例外のところもある。
Fクラスには家柄も、顔も、更には試験結果も良好な生徒がいる。

何故そんな人物がFクラスにいるのか、それは誰の手にも付けられない暴れ馬みたいなものだからだ。何時爆発するかわからない危険物とも言う。
暴力に快楽を見出すやつ、人を貶めることだけの為に学園生活を謳歌しているやつ、そして転校生のような妙なところにカリスマを持ちながらも話の通じないやつ……

ここには問題児も集められているが、Fクラスはその中で頭抜けた……というより抜けてはいけないねじが抜けたやつが入れられている。
だが普通に擬態してFクラスに入っていないやつも多いだろうがそれはしょうがないことだろう。多分そんなやつを全員Fクラスに入れたとしたらFクラスが学園の半数以上を占めてしまう。ここはそんなやつらばかりだからな、俺も含めて……

そう考えると転校生がSクラスなのも頷け……ねぇな。家柄は……まあまあ、精々Aクラス。試験結果は惨敗、顔は小説通り・・・・ならSクラスのやつらにも引けを取らねぇだろう。本当に小説通りなら、な。

これを含め、性格というか手の付かなさを度外視しても精々Bクラス、ギリギリAに入るか……ってところだろう。Sには到底無理だ。性格を考えたら断然Fクラスだが。

「その上、今更配置換えもできねぇ……こっちの面では手詰まりだな」
「そうだねぇ~クラスの変更は学年が作り替わる時のみ、だからねぇ~」

そうなのだ、このクラスとなってしまったら一年間変えることはできない。昔は学期ごとに成績によって上下してたらしいが今はそんな手間は不要だとばかりに取っぱられていた。仕事が少なくなったのは嬉しいが逆にこういう面で苦労するとなるとどちらを取るか……って感じだな。

だが、来年にはFクラス落ちをさせる。このまま行けばな。幾ら理事長と言えども、転校生が入る前のことは力押しを許しも中に入ってからは容赦しない。学園内のことは全て生徒会が取り仕切っているからだ。ただ学園を周りの圧力から渋々始めた家だとしても、今学園を切り盛りしてるのは生徒会。全てを放り投げて押し付けたやつらの好きにはさせやしない。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...