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九月一日 4
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映像はそこで止まる。
「ふむ……」
「どうだった?と、言っても王道通りには進まなかったけど……」
でも元からアンチだったし、門の飛び越えを見れただけよかったかなと少ししょんぼりしている。その頭に手を置いてわしゃわしゃと撫ぜてやり
「俺としてはどうでもいい」
「言うと思ったー!絶対に言うと思ったー!期待させるような行動をしておいて落とすと思ったー!」
「なんだ急に」
突然叫び出した馬鹿の頭を撫ぜていた手でそのまま叩く。
こいつの思考回路がよくわからない。ただ気分で撫ぜただけだ。そして思ったことを伝えただけ。それがどうして落とすことになるんだ?だがこいつのことだからどうでもいいことだろう。
「俺として気になるのは、こいつによって今後どう影響がでるかのみだ」
「まー、そーだよねーだって天下の生徒会長様だしー?」
「まあな」
「そこで認めるとか、でも憎めない」
俺が王道学園というものを知っているのもこことそっくりの設定だからだ。だから参考書として読んで知識にしている。腐男子とかそういう括りはあるだろうがここの場合性の差別なんてないようなものだからBLと言うジャンルなんてこちらからすればただのラブストーリーと同じようなものだ。
黄桜が垂れかかってくる。
「ねぇ、今夜空いてる?」
「ん?ああ、まだ誰にも誘われていないからな」
「やった」
胸の前で小さく手を握って喜ぶ。
「それじゃあ、今夜いいかな?」
「別にいいぞ」
「よしよし!約束だからね!これで後から他の人と約束しちゃったから無しって言わないでよ!」
「言わねぇよ」
人を何だと思ってるんだ、と聞くとどうせ俺様と返ってくるだろう。
どうだろうねーと半目になって見てくるがそれを気にせずに頭を撫ぜてやる。こいつの髪はさらさらとしているから触り心地が良い。俺も直毛の髪だが何が悲しくて自分の髪を触らなければいけないんだ。
「さて、これも見れたことだし戻るとする」
「えーもう行っちゃうの?まだイチャイチャしたーい」
「はぁ……ったく」
もうそろそろ昼だからな。金星達がこの新たにやって来た問題児に会いに食堂へ行くんだ。今度は何をやらかすか…問題児同士の化学反応でも起きて爆発しなければいいが……
いやだいやだと駄々をこねるその生意気な口を塞ぎ、しばらく堪能した後耳に寄せて囁く。
「そんなにシたいなら夜に嫌って程シてやるよ」
「あ、うぅぅぅぅー……」
顔……というより耳まで真っ赤にしてテーブルに突っ伏した黄桜を置いてガゼボを出る。腕時計を見ると少々急がなくては生徒会室に着くには昼休憩に間に合わないだろう。
「帰ったぞ」
「お帰りなさい」
帰ったはいいが、宇治と椎倉は普段通りに仕事をしているが金星と渡辺兄弟は昼が楽しみなのか頻りに壁にかけてある時計を見ている。
俺も椅子に座り、明日の分の仕事を分けているとチャイムが鳴り響いた。
ガタガタッ、とその音を聞いて金星と渡辺兄弟が立ち上がる。
「よぉし!行こ行こー!」
「「早く早く!」」
「…………ん、ご……」
そうやって急かす問題児共と腹を空かせて書類を纏めて立ち上がった椎倉。
気が進まないがこいつらを見てやらねぇと尻拭いが出来ないのでため息をついてパソコンをシャットダウンする。
「わかったわかった、そんな焦るんじゃない。別にそんなすぐに行っても転校生が来ているとは限らねぇからな?」
「いいから~!」
「「行く!」」
「……はぁ、しょうがない人たちですね」
言っても聞かないこいつらに宇治と顔を見合わせる。宇治は怒りは表面的に出ていないものの心底行きたくなさそうだ。
「あっ、生徒会の皆様だ……」
「ど、どうしよう!化粧直してこないと!」
「相変わらず美しゅう……」
「みんなに知らせないと……」
広い廊下を歩くと俺達に気づいた生徒達によって自然とモーセが海を割ったように中央が空けて道を作られる。生徒達は皆立ち止まり、頬を興奮と陶酔に赤く染めてざわざわと喚きだす。
これもここが王道学園と呼ばれる所以の一つ。美形至上主義なところだ。イケメンは至高、美人は信仰。それ故に校内ランキング・特殊部門A、B……通称、抱かれたいランキング、抱きたいランキングと言うものがある。まあそれは一先ず置いておこう。
だから美形であるだけで市井よりも視線を過剰に集め、祭り上げられる。その反面、美形でないだけで平凡、醜男と揶揄されるのだが……
「着いたぁ!開けるよ~!」
「待ってくださ―――」
「え~い!」
馬鹿かこいつは。
金星が宇治の制止も聞かずに食堂の扉を開ける。
すると開いた扉に反応した生徒達が気づき……
「「「「「キャァアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「「「「「うぅぉおおおおおおおおおお!!!」」」」」
結果として黄土色の嬌声と低音の叫び声が響いた。
起こるのは耳鳴り。ぐっ、と眉を顰める。この馬鹿は人の話を聞かない。
響く騒音と周りの惨状を気にもせずに転校生はいるのかと辺りをきょろきょろと見回す金星の頭を掴んで力を入れる。
「ん?あまちゃ――痛い痛い痛い!いったいからぁ~!!」
「うるせぇ、とやかく言わずに罰を受けろ」
「ひっどぉ~い!僕が何をしたっていうのさぁ!」
「あ゛?」
「ご、ごめんなさぁ~い!」
まったくこいつは……
馬鹿につける薬はない。ここで何やったってこいつはまたやらかすだろう。心労を覚えて手を離すとぷんぷん!と口で言いながら頬を膨らます馬鹿が目に入る。こうやっても似合うんだよな……馬鹿だが。
「光輝、後で説教です」
「ええっ!?なんでぇ!」
「それは自分の胸に手を当てて聞いてみなさい」
にっこりと素晴らしい微笑みでいる宇治が金星の肩に手を乗せて言った。
金星は本当にわからないのか焦るが俺としては宇治と同じ思いだ。とにかく考えて行動しろ。お前は人だろう、その脳は飾りか?
幾ら美形と言ってもこれで生徒会所属で大丈夫なのか?事実、大丈夫だったのだがどうにもやるせない。
「ふむ……」
「どうだった?と、言っても王道通りには進まなかったけど……」
でも元からアンチだったし、門の飛び越えを見れただけよかったかなと少ししょんぼりしている。その頭に手を置いてわしゃわしゃと撫ぜてやり
「俺としてはどうでもいい」
「言うと思ったー!絶対に言うと思ったー!期待させるような行動をしておいて落とすと思ったー!」
「なんだ急に」
突然叫び出した馬鹿の頭を撫ぜていた手でそのまま叩く。
こいつの思考回路がよくわからない。ただ気分で撫ぜただけだ。そして思ったことを伝えただけ。それがどうして落とすことになるんだ?だがこいつのことだからどうでもいいことだろう。
「俺として気になるのは、こいつによって今後どう影響がでるかのみだ」
「まー、そーだよねーだって天下の生徒会長様だしー?」
「まあな」
「そこで認めるとか、でも憎めない」
俺が王道学園というものを知っているのもこことそっくりの設定だからだ。だから参考書として読んで知識にしている。腐男子とかそういう括りはあるだろうがここの場合性の差別なんてないようなものだからBLと言うジャンルなんてこちらからすればただのラブストーリーと同じようなものだ。
黄桜が垂れかかってくる。
「ねぇ、今夜空いてる?」
「ん?ああ、まだ誰にも誘われていないからな」
「やった」
胸の前で小さく手を握って喜ぶ。
「それじゃあ、今夜いいかな?」
「別にいいぞ」
「よしよし!約束だからね!これで後から他の人と約束しちゃったから無しって言わないでよ!」
「言わねぇよ」
人を何だと思ってるんだ、と聞くとどうせ俺様と返ってくるだろう。
どうだろうねーと半目になって見てくるがそれを気にせずに頭を撫ぜてやる。こいつの髪はさらさらとしているから触り心地が良い。俺も直毛の髪だが何が悲しくて自分の髪を触らなければいけないんだ。
「さて、これも見れたことだし戻るとする」
「えーもう行っちゃうの?まだイチャイチャしたーい」
「はぁ……ったく」
もうそろそろ昼だからな。金星達がこの新たにやって来た問題児に会いに食堂へ行くんだ。今度は何をやらかすか…問題児同士の化学反応でも起きて爆発しなければいいが……
いやだいやだと駄々をこねるその生意気な口を塞ぎ、しばらく堪能した後耳に寄せて囁く。
「そんなにシたいなら夜に嫌って程シてやるよ」
「あ、うぅぅぅぅー……」
顔……というより耳まで真っ赤にしてテーブルに突っ伏した黄桜を置いてガゼボを出る。腕時計を見ると少々急がなくては生徒会室に着くには昼休憩に間に合わないだろう。
「帰ったぞ」
「お帰りなさい」
帰ったはいいが、宇治と椎倉は普段通りに仕事をしているが金星と渡辺兄弟は昼が楽しみなのか頻りに壁にかけてある時計を見ている。
俺も椅子に座り、明日の分の仕事を分けているとチャイムが鳴り響いた。
ガタガタッ、とその音を聞いて金星と渡辺兄弟が立ち上がる。
「よぉし!行こ行こー!」
「「早く早く!」」
「…………ん、ご……」
そうやって急かす問題児共と腹を空かせて書類を纏めて立ち上がった椎倉。
気が進まないがこいつらを見てやらねぇと尻拭いが出来ないのでため息をついてパソコンをシャットダウンする。
「わかったわかった、そんな焦るんじゃない。別にそんなすぐに行っても転校生が来ているとは限らねぇからな?」
「いいから~!」
「「行く!」」
「……はぁ、しょうがない人たちですね」
言っても聞かないこいつらに宇治と顔を見合わせる。宇治は怒りは表面的に出ていないものの心底行きたくなさそうだ。
「あっ、生徒会の皆様だ……」
「ど、どうしよう!化粧直してこないと!」
「相変わらず美しゅう……」
「みんなに知らせないと……」
広い廊下を歩くと俺達に気づいた生徒達によって自然とモーセが海を割ったように中央が空けて道を作られる。生徒達は皆立ち止まり、頬を興奮と陶酔に赤く染めてざわざわと喚きだす。
これもここが王道学園と呼ばれる所以の一つ。美形至上主義なところだ。イケメンは至高、美人は信仰。それ故に校内ランキング・特殊部門A、B……通称、抱かれたいランキング、抱きたいランキングと言うものがある。まあそれは一先ず置いておこう。
だから美形であるだけで市井よりも視線を過剰に集め、祭り上げられる。その反面、美形でないだけで平凡、醜男と揶揄されるのだが……
「着いたぁ!開けるよ~!」
「待ってくださ―――」
「え~い!」
馬鹿かこいつは。
金星が宇治の制止も聞かずに食堂の扉を開ける。
すると開いた扉に反応した生徒達が気づき……
「「「「「キャァアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「「「「「うぅぉおおおおおおおおおお!!!」」」」」
結果として黄土色の嬌声と低音の叫び声が響いた。
起こるのは耳鳴り。ぐっ、と眉を顰める。この馬鹿は人の話を聞かない。
響く騒音と周りの惨状を気にもせずに転校生はいるのかと辺りをきょろきょろと見回す金星の頭を掴んで力を入れる。
「ん?あまちゃ――痛い痛い痛い!いったいからぁ~!!」
「うるせぇ、とやかく言わずに罰を受けろ」
「ひっどぉ~い!僕が何をしたっていうのさぁ!」
「あ゛?」
「ご、ごめんなさぁ~い!」
まったくこいつは……
馬鹿につける薬はない。ここで何やったってこいつはまたやらかすだろう。心労を覚えて手を離すとぷんぷん!と口で言いながら頬を膨らます馬鹿が目に入る。こうやっても似合うんだよな……馬鹿だが。
「光輝、後で説教です」
「ええっ!?なんでぇ!」
「それは自分の胸に手を当てて聞いてみなさい」
にっこりと素晴らしい微笑みでいる宇治が金星の肩に手を乗せて言った。
金星は本当にわからないのか焦るが俺としては宇治と同じ思いだ。とにかく考えて行動しろ。お前は人だろう、その脳は飾りか?
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