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過去作品<抜粋版>

(16)「母と息子の危ない新婚旅行…」

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今日は人生で最良の日の一つになりました。

息子が見事、志望校に合格し、晴れて受験勉強から解放された日です。

「えっ、受かった、受かったの?やったぁ!、ゆうちゃん、おめでとう!!」

息子から報告を聞いたとき、年甲斐もなく飛び上がって喜びを表現しました。

しかし、その翌日、残念な知らせも届きました。

『合格おめでとう。こっちも良い知らせだ。関西赴任も3月で終わりで、あとは出張で大丈夫になった。』

主人に、息子の合格を伝えた返事には、あまり嬉しくない事が書かれていました。

(もぅ、せっかくゆうちゃんと気兼ねなく過ごせると思ってたのに…。)

これまでは受験の事もあったので、多少は遠慮もしていました。

特に、外へのお出掛けはなるべく控えるようにしていました。

(デートしている時間もないだろうし、外に出掛けて風邪でももらったら大変だから…。)

それがようやく実現出来ると思った矢先の事でした。

最初に聞いていた話では、最長で2~3年は単身赴任になると言われていました。

ただし、そう言っても、実際はもっと伸びることも多々ある会社と聞いています。

最長ではなく、最短でも2~3年になるものだと思っていました。

(逆に早くなるなんて…。そううまくはいかないものね…。)

もちろん、家族のために働いている主人には感謝しています。

ただ、この時ばかりはもう少し赴任先にいて欲しいと思ってしまいました。

息子に話すと苦笑いをしつつも、やはり私と同じ気持ちだったようです。

(あの人が帰ってくるまでの時間、もっと大事に使わないと…。)

そんな事もあり、母と息子の新婚生活はさらに濃いものになっていきました。

一緒に家にいるときはずっと同じ寝室に籠っていることも珍しくはありませんでした。

もちろん、休日や早めに帰宅したときはデートもしました。

しかし、主人が帰ってくる日は刻一刻と近づいていました。

(毎日幸せだけど、もっと大きな思い出を作りたいな…。)

そんなとき目に留まったのは、とある旅行会社のコマーシャルでした。

ハワイで挙式云々という内容のCMを見たとき、閃きました。

(ゆうちゃんと、旅行だ!!)

自宅での甘い夫婦生活、おしゃれなレストランやカフェでのデート、素敵な夜景、どれもこれも大事な思い出です。

しかし、どうしても現実に直面してしまいます。

都内では、誰が見ているとも限りません。

自宅なら、誰にも見られたりはしませんが、ここはやはり家族としての家です。

親子という事を完全に忘れて過ごすことは出来ませんでした。

(けど、旅行に行けば、知らな人しかいないし、ゆうちゃんと堂々と手を繋いで歩ける!)

そう思った瞬間、もう身体は動いていまいした。

スマートフォンで旅行会社にアクセスし、2人で行くのにちょうど良い場所を探しました。

もちろん、息子にもすぐにプランを伝えました。

「恵子がいいなら、俺はいつでも大丈夫だよ!」

その日から、まるで新婚旅行を探す恋人のようでした。

(あぁ、やっぱり海外がいいけど、今からだとパスポートも間に合わないし…。)

(北海道もいいな。あっ、九州もいいな…。京都…。あ、関西はあの人がいるかもしれないから、パスね。)

行先を探すところから旅の始まりと聞いたことがありますが、もう楽しくて仕方ない日々でした。

(北海道か九州がいいけど…。時間がないから飛行機かぁ…。それでも、あまりゆっくり出来ないし、その割には予算も…。厳しいかな…。)

もちろん、予算は十分にありました。

ただ、あまり慌ただしい日程を組んで、あっという間に時間が過ぎてしまうのも勿体ないと思いました。

(やっぱり、近場でゆっくりした方がいいかな?)

結局、関東一円で選ぶことにしました。

栃木県や群馬県の温泉街は私は行ったことがありました。

しかし、熱海や伊豆といった最も有名な観光地には行ったことがありませんでした。

(あっ、ここ、ここがいいな!)

目に留まったのは海の傍に立地する伊豆のとあるホテルでした。

(お部屋から海も見えて、景色もいいし、お料理も美味しそうだし…。それに、東京からでも近いから…。)

そして何より惹かれたのは、お部屋に備え付けられたある施設です。

(露天風呂がお部屋にあったら、ゆうちゃんと一緒に入れる…。)

温泉に2人でゆっくり入るのも夢でした。

ただ、混浴は気が引けますし、何より、ゆっくり入れる気がしませんでした。

それがお部屋に付いているなら、これ以上の魅力はありませんでした。

すぐに予約サイトにアクセスし、空いている日を探しました。

(あった、空いてる!)

すぐ息子に伝え、日程の確認をしました。

「その日は何も予定ないから大丈夫だよ。」

「じゃあ、予約するね!」

「あっ、ちょっと待って。恵子の仕事は、大丈夫なの?」

「あ、うん、お仕事あるけど、もう休むよ。他には空いてないし…。」

「それと、もう一つ…。こっちの方が、大事、かな…。」

「えっ、何?」

「この日って、あれじゃない?」

そう言いながら、ゆっくりお腹を撫でる息子。

「えっ…。あ!!そうだ、そうだね…。」

旅行の日程は二泊三日で考えていました。

その中日が、最も妊娠確率の高い日、つまり危険日になっていました。

「日程変える?」

「けど、他の日に空きはないし…。他のホテルだって、繁忙期だから、ダメだと思うの…。」

「そうなんだ…。じゃあ、そのままその日程で行こうよ。」

「えっ、けど…。ゴム着けて、大丈夫?」

「それはその時に考えようよ。危険日だって、少しズレるかもしれないしね。」

「うん…。」

「大丈夫だよ。もし変わらなかったら、その時は俺に判断を任せて。」

「うん…。そうだね、わかったよ!」

(あとはもうゆうちゃんにお任せするとして、あとは旅行が楽しくなるようにしないとね。)

予約サイトで申し込み、ついに旅行当日を迎えました。

その日の朝、まだ息子が寝ている間にある確認をしました。

(やっぱり、高くなってる…。)

念のため、おトイレに行き、ある検査キットも使いました。

その検査キットには、クッキリと線が浮かび上がってきました。

(はぁ…。やっぱりそういうものよね…。)

基礎体温の上昇、排卵チェッカーの陽性判定、いずれも今日か明日には排卵が始まる事を示唆していました。

(もう考えても仕方ない。ゆうちゃんに話して、あとはお任せしよう…。)

ただ、旅行を決めた時から、息子がどんな決断するか、薄々わかっていました。

(ゆうちゃんは、きっと、お母さんを…。)

その予感通り、二泊三日の間、2人を遮るものが使われることは、一切ありませんでした。

パスワード③ 【 w 】
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