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二章 不死と永遠の花

サバイバル授業開始

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——ガサッ‥‥ガサガサッ‥‥

何者かが茂みの中を歩き、草木を掻き分ける音が森に響いていく。
凡そ数十人と思わしき人物達はペースを乱さずにも森の奥へと真っ直ぐ進んで行き、ある場所に辿り着いた。

「——ここですか‥‥ようやく見つけました‥‥。では、周囲に魔法を張り巡らせましょう。1人たりとも近寄れぬように‥‥それと魔獣にあの“ワクチンを投与しましょう」

そう言う先頭を歩く“彼女は目標に辿り着くと部下と思わしき人物達を配置につかせる。魔障壁を何重にも張り、そして一匹の小さな魔獣を捕まえては針を刺した。

そして彼女自身は更に深い奥へと歩みを進める。人一人分の細い道が続いていき、辿り着いた先には開けた空間が現れた。

「やはりあの“花の影響‥‥空からでも大地からでも確認できなかったのは正しい道でないと干渉できないということでしたか‥‥」

そう言う彼女が辿り着いた一角は草木の生えない謎の空間が形成されていた。
彼女は恐る恐る草木が生い茂る中から腕をその一帯に近づけた‥‥

——バチッ!

「っ!!」

彼女の腕は見えない障壁に阻まれ、片腕が黒く焦げる。

「‥‥これは魔障壁?いや、封印かしらね。これを解除するのに一週間ってとこかしら。少し計画がずれてしまうけれど、やむを得ない。ふふ、あの中心にある物を手に入れさえすれば次は我らが上に立つ‥‥我ら“バラトロが世界を正す時が——」

両手を掲げる彼女の淡い声は真夜中の森にて空へと消えていくのだった‥‥


◊◊◊


「——それでは一年生の皆さん!魔族帝国までの長旅お疲れ様です。凡そ丸一日掛かりましたが、これでも学園都市から一番近い湖の港なのです。そして今から森に入って頂き一泊二日のサバイバルをこなして貰います。勿論、凶暴な魔獣がうようよいます。我々教師陣も数百名規模で監視、待機いたしますので命の危機が迫った時にはご安心を。また複数人行動は基本禁止、単独でこの森を生き延びて下さい」

と女性教師の説明を聞く凡そ一万人の一年生諸君。この説明を聞き、どう思うか様々な意見や見解があることだろう。俺たちAクラスや特待生のSクラスは単独行動でも生き残れる自信はある。

しかし、BランクやC、Dランクともなれば話は変わってくる。この魔族帝国の広大な森は非常に危険であると、ここへ来る途中の大型船内では予め森に立ち入る事の危険性を十分に警告されたのだ。学生では手に余るAランクの魔獣も生息し、非常に危険気回りなく苦難が強いられるのは間違いない。

そして1万人在籍する一年生の内、実に9割は森でのサバイバルに動揺を隠しきれていない様子。そこら中でこのサバイバルに異議を唱える者が続出し、反発の声が次々と上がる。

しかし、女性教師はそれを見越していたのだろうか。最後に意味深な言葉を学生に向けて語っていた‥‥

「皆さんの不安や恐怖は勿論分かります。ですので“基本単独行動でお願いします。サバイバルですので私たちは非常事態以外”干渉しません。”頭をフルに使う事をお勧めします」

‥‥こう言われてもその場で瞬時に理解できた者は非常に少数だろう。この文の中で語った女性教師の本当の意味を理解できた者こそ、このサバイバルを生き残れる。そして俺と同じ思考を持つ隣の美少女も感づいているようだった。

「‥‥なるほどね。基本は単独で行動。けれど、別に“助け合いを禁止なんて言ってないわね。助け合いがグレーゾーン枠に嵌まっても教師は極力干渉をしない。要するに教師陣にバレなければ何をしても良いってことね」

さすがはファシーノだ。頭の回転が速くて助かる。
ファシーノの言った通りバレなければ何をしても良いと言うことなのだ。自らの魔法で監視の目を欺いたり、隠密魔法で姿を消したり、隠蔽、索敵、阻害魔法等でどうとでもなるからな。C、Dランクにとって単独行動は非常に武が悪い事は教師陣も理解している。

その為に遠回しに協力するよう促したのだろう。一度立ち入れば冒険者や軍人でも生きて帰れるか保証できないと言われているこの危険な森で、それも学生の身分で一泊二日など正気の沙汰ではない事は明らかだ。

さて、女性教師の遠回しの言い方を理解した者達は果たして何人いるのか。これから見物といこうか‥‥

「迷っている暇もないですので、早速皆さんには森に入ってもらいます。それとAランク相当の魔獣は現在でも確認されていないので出てくる魔獣はBランク以下と思って下さい。現在時刻は朝の8時ですので、明日の12時までに戻ってきて下さい。各クラスの教師も待っていますので1人でもかけていましたら全教員で捜索します。それでは5数えたらスタートして下さい‥‥5」

いよいよ始まる一泊二日のサバイバル生活。

‥‥4

Bランク相当の魔獣でも半ば18歳の学生からしてみれば到底勝ち目の無い圧倒的強者。

‥‥3

教師陣は俺たちがBランクの魔獣に勝てるとは思ってもいないはずだ。もし、勝てることができるとしたら、Sランクの特待生だけだと‥‥。

‥‥2

そして特待生達はきっと影ながら支える立場に属すはずだ。俺に教えてくれたカメリアが先に情報を握っていた様に学生に危険が迫れば教師の代わりに手助けをと言われているに違いない

‥‥1

1万人いる学生を教師陣と特待生の数人だけで全体を監視できるのか疑問だが、一応俺も影ながら見守ろう。ファシーノもきっとそうするはずだ。このサバイバルの意図を見透かしているファシーノなら別行動でも構わないだろう

‥‥0!

「「「行くぞ‥‥!」」」 「「「おおぉぉ‥‥!」」」

女性教師の最後の合図とともに森の中へと全力で駆けていく1万人の一年生。大地を走る者、木々の枝から枝へと飛んで先へといく者、最初に魔法を使用する者。
自信に満ちた表情をしているのは1割にも満たず、不安と焦りを抱いている者が大半を占める中、一泊二日のサバイバルが幕を開けた
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