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52.ほんとのこと

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「よくリハビリを頑張ったね。それにしても、君、こんなに身体能力高かったっけ?」
「あはは、なんででしょうね・・・?」
リハビリも終え、普段と変わらぬ生活が送れると判断された奏人は
目を覚ましてからわずか3日で退院することとなった。
その日は親の迎えで家に向かい、自分の感覚としては数週間ぶりの自宅へ帰った。


「・・・自分の部屋だ・・・」
二階にある自分の部屋。扉を開けると、親が部屋に入ったのか、窓があけられ部屋の換気が行われていた。
「勝手に部屋入るなっていつも言ってんのに・・・まぁ、いいか・・・」
ベッドに座る。
それは、座り慣れた硬いベッドだった。

荷物のリュックをおろす。
異世界へ飛ばされた時に持っていたリュックは、こっちに戻ってきたのと一緒に飛ばされてきたらしい。
リュックをあけると、そこにはゴミのようにくしゃくしゃにされた小さな紙が入っていた。
「あ、これ・・・肉の店の名刺じゃん。捨てようと思って忘れてたのかな」
紙を丁寧に伸ばすと、あの世界の文字が書かれていた。
「そういや、文字は読めなかったんだった。言葉は理解できたのになぁ」

なんとなく捨てることはできず、そのまま財布にしまう。
そして、リュックの小さなポケットに手を突っ込むと、ペンダントを取り出した。

「あの世界にいたのは、嘘じゃないんだよなぁ」

奏人はペンダントをじっと見つめる。
こちらの世界に戻ってきて数日経つが、やはり夢だったのではないかと思うことも少なくはない。
だが、このペンダントに店の名刺が本当にその世界にいたことを物語っている。
そしてなにより、シュビルやルリールと過ごしたあの日々をただの夢で終わらせたくはなかった。

「みんな、どうしてるのかなぁ」

ベッドに倒れ込んでペンダントを握りしめる。
奏人は少し泣いて、そのままただただぼーっとその日が終わるのを待った。



それからの日々は、いつも通りだった。
大学へまた通うようになり、もちろんバイトにも復帰した。
相変わらず彼女はいなくて童貞だけど、多分、処女ではない。
だからと言って、オナニーの時に尻の穴を使うわけではなかったが。

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