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39.朝の街

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シャワーから戻ると、ルリールはまだ寝ていて
シュビルはすでに着替えを済ませ、窓から外を眺めていた。

「何見てるの?」
奏人が近寄ると、シュビルは窓の外を指さす。
指さした方向を見ると、そこには黒い鳥のモンスターが集団になり
犬型のモンスターへ襲い掛かっているところだった。
「散れ」
そういうと、シュビルの掌からはいつものような紋章が浮かぶ。
小さく光ったあと、鋭い棘のような形となって鳥へと飛んだ。
驚いた鳥たちはその場をバッと飛び去り、犬は周りを見渡すとどこかへ走り去った。

「今の、魔法?」
「そ、俺の魔法。初めて見たっしょ」
「うん、すごいね」
「お前に言われると煽られてるようにしか聞こえないな」

「街にはモンスターが出ないのかと思ってた」
奏人は着替えながらシュビルに言うと、シュビルは少し弱った顔をして答えた。
「普段なら出ないんだよ。でも、あの黒い鳥が出るとその街に不幸が訪れる、みたいな噂はあるんだよなぁ」
「えー・・・不幸の象徴みたいな?」
「そんな感じ。昨日あんな話したばっかだから、なんか、ちょっと嫌な予感しちゃうよな」
シュビルの表情は暗い。
そんなシュビルを見て、奏人はポン、と背中を叩き笑顔で言った。
「二人が守ってくれるんでしょ?そんな顔しないでよ」
「・・・だな」



「ルリール、起きないね。二人で朝ごはん買いに行っちゃおうか」
ルリールは熟睡中(に見せかけて寝ているフリだが)。
二人は朝食を調達しに、街へと繰り出した。


「朝は人が少なくて歩きやすいんだね」
「あんまり離れるなよ。いつ誰が襲ってくるかわかんねぇんだから」
「シュビルはお母さんみたい」

冒険者の少ないこの朝の時間帯は、どちらかというと子どもや青年の姿が目立つ。
同じように朝ごはんを買いに来たのか、みんな果物や野菜を持って歩いていた。

「リンゴだ!」
奏人が指さす先には、リンゴのような形をした果物。
「リンゴ?」
「うん、リンゴじゃないの?」
「あれの事いってんのか?あれはググの実だぞ」
「へぇ、そんな名前なんだ・・・」
不思議そうに見つめていると、シュビルが屋台の前まで歩いていく。
店主にあれこれ話し、あっという間にシュビルの両手は果物と野菜でいっぱいになった。
「たまにはヘルシーな朝食もありだろ」


「僕、果物の中ではリンゴって食べ物が一番好きなんだ」
宿へと戻る道中二人は休憩と言いながらベンチに座り、
先ほど買ったググの実を頬張っていた。

「へぇ、これはそのリンゴってやつと同じ味なのか?」
「んー、ちょっと違うかも・・・。リンゴと、ミカンっていう果物の味が混じったような味」
「よくわかんねぇけど、美味いのか?」
「うん、結構おいしいね」

食べすすめると、小さな種が残る。
どうやらこのググの実にはリンゴのように大きな芯のようなものはないらしい。
「種って、植えたら生えてくるかなぁ」
「どうなんだろうな。宿の裏の土にでも植えてみるか」
「勝手に植えていいの?」
「バレなきゃいいだろ」


もし木が生えたら嫌でもバレるけど、と奏人は思ったが、
どことなくワクワクした表情のシュビルにわざわざ告げる必要もないか、と思い
奏人はそうだね、と答えて再び宿へと戻った。


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